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「権力を行使する際には、あらかじめ定められた公正なルールと手続きに従わなければならない」。
これは民主主義と法治国家の根幹をなす「適正手続の保障(デュープロセス)」の原則である。
私たち行政書士は、市民の権利や財産を守り、行政との架け橋となる存在であり、東京都行政書士会はそのホームページ上で「頼れる街の法律家」を標榜している。そして、新規に開業しようとする行政書士は、日本行政書士会連合会が備える行政書士名簿への登録を受けなければならない。
行政書士名簿への登録を受けるためには、行政書士事務所を設けようとする都道府県の行政書士会を通じて手続きを行い、当該行政書士会に入会することとなる。行政書士としての登録が完了した者は所定の会費を納め、会のルールに従う義務を負うことになるが、その組織運営は極めて高度な透明性と適正な手続きによって担保されなければならない。
しかし今、行政手続の専門家集団のトップである東京都行政書士会において、デュープロセスを根底から破壊する前代未聞の事態が起きている。
事の発端は、令和5年(2023年)に行われた同会の会長選挙である。立候補の届け出期限の終了直前になって、会側が一方の候補者の推薦人名簿の一部について「電話番号が会員名簿と異なっている」という理由で、届け出の受理を頑なに拒否した。その結果、もう一人の候補者(現職)が無投票で当選を果たした。
しかし、本年(令和8年)1月28日、東京高等裁判所において、司法はこの対応を明確に「違法」と断じた。「推薦人の電話番号が会員名簿と同一であることは、立候補届け出の要件とはされていない」と指摘し、令和5年の選挙を『無効』とする判決を下したのである。
本来の要件(選挙規程)にないルールを後出しで適用し、候補者を排除する。これは権力側が適正な手続きを無視した「デュープロセスの破壊」に他ならない。
さらに驚くべきことに、同判決では「令和7年(2025年)5月27日に行われた会長選挙」についても連鎖的に『無効』であると明確に言い渡された。令和5年の選挙で当選した「本来は無効であるはずの会長」が招集した総会で行われた選挙である以上、令和7年の選挙も当然に瑕疵があり無効である、と司法が断じたのである。
2度にもわたる会長選挙が司法によって無効とされるという、組織の存亡に関わる重大な判決が下された。しかし、同会はこの事実を会員に向けて一切通知せず、沈黙を貫いている。現在4年近くにわたって行われている会務や決定の多くが根本から覆りかねない大問題であるにもかかわらずだ。
この異常事態を受け、同会は本年4月27日に臨時総会を開き、改めて会長選挙のやり直しを行う見通しだという。しかし、ここでもさらなる組織の闇が露呈した。臨時総会で議決権を行使する「代議員」の任期の始期について、東京都行政書士会の会則上、明確に定まっていないのである。論点を明確化するため、同会の会則で代議員に関わる条文を次のように整理した。
第一に、代議員の任期は「1年」である(第36条)。
第二に、代議員は「各支部の総会において選出」される(第34条)。なお、支部とは都道府県単位会の傘下にある地域密着の組織であり、事務所所在地に基づき所属する(当職は東京都行政書士会千代田支部に所属)。
第三に、各支部は代議員の選出結果を「4月25日までに」会長に報告しなければならない(第34条3項)。
これらを論理的に組み合わせるとどうなるか。各支部は遅くとも4月25日までに代議員を選出し、その結果を会長に報告する義務がある。代議員の任期に関する明文規定が存在しないため、会則を素直に読めば、任期の起算点はその選出日の翌日(民法の初日不算入の原則に則る)から開始すると解釈せざるを得ない。
一部の同業者からは「必ずしも選出日が任期の起算点になるとは限らない」という指摘を受けたが、その指摘は当たらないと考えている。例えば、会社法332条1項では、株式会社の取締役の任期は「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と規定されている。会則で任期の起算点が定められていない以上、こうした会社法の条文(選任を起点とする考え方)を類推する余地が十分にあるからだ。
いずれにせよ、前年に選出された代議員の「1年間の任期」は、翌年の4月25日以前には必ず満了することになると考えるのが自然である。したがって、4月27日に開催される臨時総会に出席する代議員たちは、会則を素直に読めば、すでに任期が切れており議決権を持たない「無権限」の状態である可能性が高い。もし任期切れの代議員で総会を強行すれば、再び決議無効の訴訟リスクを抱えることになる。
私は一会員として、代議員の任期の起算点について同会に直接問い合わせを行った。すると、東京都行政書士会総務部法規部から「代議員の任期の始期について、会則に明文の定めはありませんが、『運用』として本会(東京都行政書士会)の定時総会の日からとしています」という回答があった。
代議員の任期の始期が「運用」で定められていたという事実は、公益性や公共性の観点から、致命的な問題を孕んでいる。組織の最高意思決定機関を構成するメンバーの任期という「根幹に関わる重要事項」が、明文化されたルール(会則)に一切書かれていないという事実に加え、明文規定がない「運用」への依存は、執行部による恣意的なルール変更の温床となるからだ。これは「法の支配」ではなく「人の支配」への堕落である。
また、これはこれまでの司法の判断を全く理解していないという証左でもある。今回の選挙が無効とされた最大の理由は「明文にない要件で候補者を排除したから」である。先の無効判決で「明文化されていない独自のルールを作り運用することは違法だ」と指摘されたにもかかわらず、またしても組織の重要事項を「運用(明文なし)」で処理しようとしている。組織の自浄作用が完全に麻痺していると言わざるを得ない。
明文化されたルールが存在しない「隙間」を密室の「運用」や「なれ合い」で埋めていく。都合の悪い事実には蓋をし、異論を排除する。こうした古き悪しき組織体質は、現在の日本社会や様々な組織に蔓延する病理そのものではないだろうか。
都合の悪い事実や体制の不備について発信も説明も行わず、目を背け隠蔽する組織の体質は、社会の批判を免れない。その理由は、繰り返しになるが、東京都行政書士会は極めて高い公益性・公共性を帯びているからである。
結びに、組織のあり方に少しでも違和感を覚える人間が、勇気を持って発信し、行動を起こさなければ、その体質は決して変わらない。社会的信用と矜持を取り戻すため、私は実務家の端くれとして、この閉鎖的な組織病理に強く警鐘を鳴らし続けていく。
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照井 遼
東京都行政書士会・東京都行政書士会千代田支部所属。千葉県松戸市で活動する行政書士。7年間の国会議員秘書経験を経て、市内の防犯強化や医療的ケア児支援などを訴える。「絆が原点。声が原動力。」を掲げ、松戸市の課題に挑む。一児の父。







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