海外イランのメディア「インターナショナル・イラン」で18日、国際安全保障問題のアナリスト、シャフラム・ホルディ氏は「現在のイラン・イスラム共和国は、統一国家というよりも、イスラエルと米国からの継続的な圧力にさらされる分散したシステムとして機能している。権力はますます地方の聖職者ネットワーク、革命防衛隊司令官、そしてバシジ民兵組織を通じて行使されている。資源は地方レベルで動員され、弾圧は地方レベルで実施され、生存は地方レベルで管理されている。最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長(67)は、こうした断片的な組織を中央司令部と結びつけることができる、数少ない少数派の一員だった。彼の殺害は、既に体制が制御に苦慮している混乱をさらに加速させる恐れがある」と述べている。

イラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長 Tasnim通信 2026年3月18日
イスラエル軍は17日、ハメネイ師の死後、実質的最高指導者であったイラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長を殺害したほか、イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」の傘下にある補助的な民兵組織バシジの司令官を殺し、18日にはハティブ情報相を殺害している。同情法相はイラン国内の民衆弾圧などで中心的役割を果たしてきた人物だ。
ホルディ氏はラリジャニ氏殺害について、「イスラエル軍によるアリ・ラリジャニ氏殺害は、イラン・イスラム共和国の調整能力に対する新たな打撃であり、既に分裂状態にある体制をさらに弱体化させ、それによって誤算のリスクを高める」と分析している。
ラリジャニ氏は欧米諸国の一部ではポスト・ハメネイ師の潜在的な候補者と見なされていたが、2026年に入り、国内弾圧を推進し、米国とイスラエルに対してより対立的な姿勢を取り、IRGCの軍事作戦の形成において中心的な役割を担うようになってから、イスラエルの標的となった、といわれている。
彼のキャリアはイラン・イラク戦争中に始まり、そこで彼はイスラム革命防衛隊内で准将にまで昇進した。その後、彼は戦場から官僚機構へと移り、政権の強制力とイデオロギーの基盤強化に貢献した。イラン・イスラム共和国放送局(1994年~2004年)の局長として、ラリジャニ氏は単なるメディア組織を統括する以上の役割を果たした。国営放送局は情報機関や革命防衛隊と緊密に連携し、忠誠心を強化し、異論の余地を狭めるような言説を作り上げていた。
同氏がイスラエル軍の空爆で殺害されたというニュースが流れると、イラン国内で歓声を上げる場面がSNSに流れた。同氏が1月8、9日の治安部隊の抗議デモ参加者への銃撃を指図した張本人だということが国民の間では知られていたからだ。数千人の抗議デモ参加者が銃撃された出来事で、これはイラン革命後、最悪の国民虐殺といわれている。
ラリジャニ氏は政治エリート内部の緊張にもかかわらず、政権内で中核指導部にしっかりと留まり続けた。忠誠心と規律に富んだ彼は、組織全体における継続性を体現していた。最高指導者アリー・ハメネイ師が2月28日、死亡した後、ラリジャニ氏の経験と人脈は、彼を潜在的な安定化要因として位置づけた。イラン安全保障責任者への再任は、彼の役割をさらに強化した。
ラリジャニ氏は16日、米国、イスラエルとの戦争中にイスラム諸国がイランを見捨てたと非難し、「どのイスラム政府もイラン国民に寄り添わなかった」と遺憾の意を表明し、「一部のイスラム諸国政府の立場は、イスラム教の預言者が『イスラム教徒の助けを求める声を聞きながら応えない者は、イスラム教徒ではない』と述べた言葉と矛盾しているのではないか」と不満を爆発させている。
ラリジャニ氏はイスラム諸国に対し、立場を再考するよう促し、「この戦いで、あなた方はどちらの側に立つのか」と問いかけ、「地域の未来はイスラム諸国間のより一層の団結にかかっている。イランはあなた方の繁栄を願っており、あなた方を支配しようとは考えていない。」と述べている。
ラリジャニ氏は最後に、「イスラム共同体の団結が実現されれば、すべてのイスラム諸国の安全、発展、そして独立を保障できる。イランは『大悪魔』と『小悪魔』、すなわち米国とイスラエルに対する抵抗の道を歩み続ける」と述べていた。その彼は17日、イスラエル軍の攻撃で殺害された。
ところで、イランで年末から年始にかけ全土で起きた大規模な抗議デモに関連して、初めて複数の死刑が執行された。国営ラジオは19日、3人の男性が処刑されたと報じた。彼らは首都テヘランで治安当局者2人を殺害した責任があるとされていた。
37年間余り君臨してきた最高指導者ハメネイ師が亡くなり、その後、実質的な指導者だったラリジャニ氏が殺害され、IRGCやバシジの司令官、国軍参謀総長、情報相も既に殺されたイランで、誰が今回、米・イスラエル軍との戦時下で、3人の抗議デモ参加者の処刑を執行させたのだろうか。テヘランの司法当局者だろうか、それとも生死すらまだ不明な、ハメネイ師の後継者に選出されたモジタバ・ハメネイ師だろうか。ガリバフ国会議長や残存する強硬派が主導権を争う中で、誰が「国家」として意志決定を下しているのか益々不透明な状況となってきた。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年3月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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