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予定がぎっしり詰まっていないと不安になる。あの感覚、覚えがある人は多いだろう。
スケジュール帳が真っ黒なほど「充実している」。隙間があると「サボっている気がする」。これ、一種の病だと思う。少なくとも、生産性とはまったく関係がない。

『限界OLから年商1億円を突破した社長が教える 「お金のある人生」を叶える習慣』(三浦さやか著)KADOKAWA
ある女性起業家も、かつては典型的な「予定パンパン症候群」だった。無意識のうちに自分で自分を追い立て、空白を埋めることに安心を感じていたという。
ところが今の彼女は、週2日は「予定を入れない」と決めている。何があったのか。
きっかけは偶然だった。ある日、たまたまスケジュールが空いていて、急遽ビジネス交流会に参加した。本来は行く予定ではなかった場所だ。そこで出版につながる人脈に出会い、憧れのベストセラー作家とも直接話す機会を得た。
これが予定でパンパンの日だったら? 当然、行けていない。あの出会いは存在しなかった。
そういえば、と彼女は振り返る。海外在住の友人との再会も、著名な経営者との出会いも、すべて「予定の余白」がきっかけだったと。偶然の出会いというのは、余白がないと入り込む隙間がないのだ。当たり前の話だが、忙しい渦中にいると気づけない。
「個人の感想でしょ」と思われるかもしれない。が、これには科学的な裏付けがある。
かつてGoogleには社員の勤務時間の20%を自由な探求に充てる「20%ルール」があった。ここからGmailやAdSenseが生まれている。世界有数の企業が「余白」から最大のイノベーションを生み出した事実は、なかなか無視できない。
もっと面白いのは脳の話だ。セントルイス・ワシントン大学のマーカス・レイクルらの研究によれば、ボーッとしているとき脳は通常時の15~20倍のエネルギーを消費しているという。集中しているときは一部の脳領域しか使われないが、ぼんやりしていると脳全体に血流が行き渡り、普段つながらない回路が活性化する。
シャワー中にいいアイデアが浮かぶ経験、あるでしょう。あれだ。「思考の脱線」がひらめきを生む。これを支えているのが「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる神経ネットワークで、何もしていないときにこそ活発に動く。記憶の整理、未来の想像、創造的発想。全部、ぼんやりしている間に脳が勝手にやってくれている。
つまり”ぼんやり”は怠けではない。アイデアの土台を耕している時間だ。
話を戻すと、彼女は今、週末の予定もなるべく入れないようにしている。「予定が空いてるから誘いやすい」とよく言われるらしい。夜は子どもと食事できるように空けておく。余白が人間関係まで豊かにしている。
我々は忙しさを美徳だと思い込んでいる。予定が埋まっていることと、成果を出していることは、実はまったく別の話なのに。
余白は偶然では生まれない。自分で「空ける」と決めなければ、スケジュールは勝手に埋まっていく。その勇気が、たぶん一番難しい。でも、その先にあるものは――まあ、試してみればわかる。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
■ 採点結果
【基礎点】 38点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】 20点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】 19点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア 【77点/100点】
■ 評価ランク ★★★ 標準的な良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】
編集・構成の完成度:読み物としての完成度が高く、エピソードの配置や章の流れに編集者の手腕が感じられる。笑いヨガの赤字エピソードからSNSでの成功へと至る構成は、読者を自然に引き込む力がある。
具体的な数字の説得力:参加費500円に対し会場費700円、年商3000万円から約3倍といった具体的数字が随所に盛り込まれており、抽象論に終わらない実感を伴った記述になっている。また、「余白」の効用をデフォルト・モード・ネットワークやレイクルらの研究で裏付けており、自己啓発書にありがちな精神論だけに頼らない構成は好感が持てる。
【課題・改善点】
既視感のあるテーマ設定:「好きなことで起業」「余白が大事」「タスクの見える化」といった論点は、同ジャンルの書籍で繰り返し扱われてきたテーマであり、本書ならではの切り口が弱い。類書との差別化が不十分である。
ライブのノウハウ不足:著者の年商を3倍に押し上げた最大の転機であるライブ配信について、具体的な手法や運営ノウハウがほとんど語られていない。読者が最も知りたい核心部分が空洞化している。著者個人の成功体験の共有にとどまっている点が残念である。
■ 総評
編集の力が効いた読みやすい一冊であり、著者の試行錯誤のプロセスを追体験する読み物としての完成度は高い。赤字の笑いヨガ講師から年商約1億円の起業家へという軌跡には素直に引き込まれるし、脳科学の知見を交えた「余白論」も説得力がある。
しかしテーマ自体に既視感が否めず、類書を複数読んできた読者には新鮮味に欠ける。最大の惜しさは、著者の飛躍の核心であるライブ配信の具体的ノウハウが書かれていない点で、ここが詳述されていれば評価は大きく変わっただろう。働き方や時間の使い方を見直すきっかけとしては良著として十分に読む価値がある。







コメント
「待って来た物を受け取る」というなら
余白をつくるのはいいと思います。
これができれば引き寄せたいと思った時は
スケジュール帳をふせんとインスピックで視覚化&可動式にしてます。