共同親権時代へ:家事ADR・ODR調停人育成機構が発足

今年4月に施行される共同親権にあわせ、父母が対立を乗り越えて協力できる社会基盤を整えることを目的として、弁護士・大学教授・民間団体が集結した「一般社団法人 家事ADR・ODR調停人育成機構」がこのほど設立され、同機構は3月30日に厚生労働省で記者会見を行った。

会見を行った一般社団法人 家事ADR・ODR調停人育成機構の理事ら。
左から、小泉氏、入江氏、小林氏、竹内氏

同機構は、穏便で効率的な離婚を可能にする家事ADR・ODR(裁判外紛争解決手続)の普及や、その担い手となる専門調停人の育成・登録制度の構築に関する政策提言を行うことを目的としている。

現在、離婚する夫婦の1割が家庭裁判所での調停を利用しているというが、夫婦の話を別々の部屋で聞く「別室調停」では、お互いの攻撃が激化し、離婚後まで夫婦間に禍根を残し、離婚後の協力ができなくなってしまう。

家事ADR・ODRは、新しい夫婦関係の形の形成に向けた対話を支援するもので、オンラインでの調停も成立させることが可能であり、裁判所の人手不足も叫ばれる中、今後需要が高まると予想される。

会見には、同機構理事で九州大学大学院法学研究院教授で仲裁ADR法学会理事の入江秀晃氏、弁護士で日本弁護士連合会家事法制委員会事務局次長の竹内裕美氏、家族のためのADRセンター代表の小泉道子氏、同機構事務局長でオンライン民間調停サービス「リコ活」を運営する株式会社リライフテクノロジー代表・小林弘典氏の4名が、それぞれADRや機構の役割などについて説明した。

小林氏は、「オンライン調停は、時間や場所の壁をなくすことができるのが最大のメリットで、調停の門戸を広げる。ただ、家庭の問題は単なるデジタル化だけでは解決できない。当事者が納得して合意に至るのは、人間の力、すなわち調停人の力だと思う。激しい対立を前向きな対話へ変えていくこと。そのためには、調停人の倫理観や対話を促す技術を高めていくことが重要で、本機構の設立がその大きな第一歩となる」とあいさつした。

また、入江氏は「日本の調停は100年の歴史を持ちながら、調停人の養成はいまだに体系化されていない。その点を変えていきたい。これまでは、家事事件の専門性や難しさが十分に位置づけられてこなかった。本来、家事事件は民事事件以上に高度な対応が求められる分野で、それは国際的にも共通する認識のはずであり、認識の転換が不可欠」と指摘。ADRの担い手である調停人の養成を体系化し、専門的かつ現代的な育成の必要性を訴えた。

竹内氏は「離婚事件では、裁判に勝つことが目的になってしまって、相手を強く非難する書面が提出されるなど、対立が深刻化するケースもある。裁判が終わっても当事者は幸せになったのかと思うこともあった」と、これまでの弁護士としての自身の経験を踏まえ、「裁判で高葛藤化する前に、当事者が自分自身で考えて解決する紛争解決のあり方に意義を感じる」とADRの意義を語った。

また、「当事者が安心して相手と向かい合える場が必要」として、専門的な知識を備えた調停人の必要性を訴え、「当事者が対話によって解決する方法を整えるべく本機構を設立した」と機構設立の意義を説明した。

小泉氏は「家庭裁判所調査官だった経験から、お子さんが紛争に巻き込まれてしまうことを見てきた。家庭裁判所の前段階で何かできることはないかと思ってきた」と、自身が運営するADR機関を立ち上げた理由について語った。小泉氏のセンターは現在9年目で、年間100〜150件の案件を扱っているという。

ADRと家庭裁判所で扱う案件は「当事者だけで話し合いができないという面では共通している」が、「最初から家庭裁判所や弁護士の利用を念頭に置いていない夫婦もいる」とのことで、ADRを利用せず、養育費や親子交流について取り決めをしないまま離婚した夫婦もいることが考えられるという。

「お子さんの離婚後の生活を支える養育費や親子交流の取り決めが重要と考えている」と、子どものためにも、当事者が納得しながら合意形成を行う場としてのADRの重要性を訴えた。

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