生活保護者にも家賃アップを要求すべきなのか?

内藤 忍

東京都心部の賃貸物件の家賃上昇の流れは続いており、私が保有する物件も退去だけではなく契約更新時にも家賃の引上げを賃借人にお願いしています。普通賃貸借ですが引上げを拒否する入居者は少なく、金額の引き上げを了承してくれる方がほとんどです。

そんな中、豊島区にある物件の入居者の契約更新の際に2万円の家賃引き上げを申し入れました。相場に比べて極端に安い家賃だったので大幅な見直しをお願いしたのですが、入居者からは生活が厳しく5,000円が限界ですとの回答がありました。

こちらの希望家賃との金額の乖離が大きいので管理会社に調停や訴訟も含めた対応をお願いしようと話を進めていました。そんな中、管理会社からの連絡で入居者が生活保護を受けていることを知りました。家賃の引き上げについても福祉事務所に相談しているとのことでした。

生活保護受給者の場合、自治体が定める「住宅扶助費」という上限額が存在するようです。家賃の値上げによってこの枠を超えれば、入居者は差額を捻出できず、事実上の退去宣告になってしまうようです。

1000円でも高く家賃を引き上げることに懸命になっていたところに、いきなり冷や水を浴びせられたような気分になりました。

今まで投資家としてリターンを少しでも高めることが正義だと思っていたのが、逆に何だか悪いことをしているような気分です。

不動産投資もビジネスである以上、収益性維持のために適正な家賃改定を検討するのは当然だと思います。しかし、国内で続くインフレの影響もあって経済的に困窮している人に追い打ちをかけるような行為は、間違っているような気もしてきました。

私が所有する他の物件の賃借人の中には30万円以上の家賃を支払って入居してもらっている経済的に余裕のある人もいます。

生活保護の人に1000円でも高く貸そうとするよりも、余裕のある人に負担してもらうのが先ではないかと感じてしまいます。

むしろ生活に困っている人には格安に住居を提供したいとさえ思います。実際、コロナ禍の際には入居者の家賃をこちらから一定期間引き下げたりしたこともありました。

住居は入居者にとっては食と並ぶ生活の根本になる大切なものです。投資家として経済合理性だけから利益を追求するだけではなく、入居者の方に納得し満足してもらえる賃貸物件のあり方を考える必要があると強く感じる出来事でした。

Yusuke Ide/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年4月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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