トランプ米大統領が1日、国民向けに演説し、イランに対し圧倒的な勝利を収めたと主張しました。嘘をついてもよいとされるエイプリルフールだから「またほら吹いたのか」と、トランプ氏の「イラン戦争の勝利」を真に受ける人はごく少数でしょう。
戦争の当初の目的は「体制転換」といっていました。狂気の爆撃でハメネイ師ら最高幹部を殺害したのに、イランの国家統治機能は存続しています。私は「体制転換」を迫られているのはトランプ氏自身だと思います。
「イラン戦争からの撤退→秋の中間選挙での敗北→米議会での形勢逆転→トランプ氏の戦争責任を問う弾劾裁判→トランプ氏の退陣」という予想も聞こえてきます。トランプ氏に体制崩壊の「逆王手」がかかったのです。
高市政権は政府のインテリジェンス(情報収集・分析能力)を高める「国家情報局」の設置を行います。国際情勢が激変・流動化し、虚偽情報の氾濫や外国勢力の情報工作が頻発しているだけに、これは必要なことです。
せっかく精緻な情報を集めても、政権トップの思い込み、認識不足で誤った方向に走る外交を展開するようでは、何の意味もありません。
世界中から「無謀な戦争」「世界経済を混乱に陥れた無責任なリーダー」を批判されるトランプ氏に、訪米時に高市氏は小躍りし、流し目をしてご機嫌を取ろうとしてきました。「日米同盟は黄金時代」などという場違いなセリフを吐いたりしました。外交はミュージカルや踊りではない。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより_12
高市首相は目覚めるべき時
高市氏はもう目覚めるべきです。トランプ氏は自己都合、独断でイラン戦争に突入し、ホルムズ海峡封鎖を招きながら、「石油を輸入している国が輸送路の安全確保をすべきだ」という無責任さです。その言動は衝動的、思い付き、挑発的、事実関係の否定や捏造、自己願望の物語に満ちています。
「国家情報局」が活躍しても、首相がなすべき外交と真逆な方向に走っているようではいけません。「国家情報局」には、政権の外交の分析、評価を含めるべきだと私は考えます。
トランプ氏に深刻な懸念を抱く西側諸国には、過剰な対米依存度を下げようとする国が目立ちます。5月の米中首脳会談では「米中G2体制の確認、構築」が主題になるとみられています。「イラン戦争の失敗で、米国は世界覇権を失い、同盟国も失っている」との指摘も聞こえています。日米同盟も変質していかざるを得ず、日本の首脳にはそうした認識を持つ必要がある。
先日、米国のサイトで「トランプ外交の不確実性が増していく」との指摘に対し、著名な大学教授が「いや、トランプ氏の虚言癖の確実性が増している」と反論していました。高市氏はそのことを自覚してほしい。
20年前から戦争準備の入ったイラン
イランは「2003年3月、西側がイラク戦争(大量破壊兵器の保有という虚構に基づいたイラク体制の破壊)から次はイランが狙われる」と読み、本格的な戦争準備を始めたとの解説を聞きます。
20年以上の準備をしてきたイランに「地上部隊も送らず、空中からの攻撃だけでイラン体制を打倒することは不可能だ」との指摘も溢れています。「民族の存亡をかけたイラン」に「トランプ個人の存亡をかけた米国」が「圧倒的な勝利を得た」などあり得ないことです。
現実味のない建前論を書く社説
3日の新聞社説をみると、「トランプ氏は本気の停戦交渉へ決断の時だ」(読売)、「米国は対話に本腰を入れるべきで、イスラエルを含む当事国は直ちに攻撃を停止すべきだ」(朝日)などと主張しています。
イランは自ら交渉に応じることはしない。戦局が長期化すれば、米国に不利、イランに有利と考えている。トランプ氏はすでに「交渉はしない。勝利したのだから、自ら去る」と宣言しています。虚言癖の部類かもしれないにせよ、米国が先に一方的に停戦するしかない。
読売の「停戦交渉へ決断の時」は現実味のない建前論に過ぎず、まだ朝日の「直ちに攻撃を停止」のほうが筋が通っています。
トランプ演説を読売は一面トップに大きく掲載しました。虚言癖に満ちたトランプ氏を大きく扱うのはどうかと思います。日経は4段の準トップ、朝日は準トップでわずか3段と小さい。メディアも現実味の程度に応じて扱いの大きさを考えるべきです。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年4月3日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。







コメント