アメリカとイスラエルによるイランへの大規模攻撃で始まった戦争は、現在も終結の兆しはない。戦火は広がる一方だ
ここで改めて、「そもそも」状況を整理してみよう。

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紛争が継続する構造的な理由
外務省の資料によれば、中東紛争の根は第二次世界大戦後にさかのぼる。
戦後、英国がパレスチナの委任統治を終えるにあたり、国連は1947年にパレスチナ分割決議を採択した。ユダヤ人国家・アラブ人国家・国際管理地区への分割を定めた。翌1948年、イスラエルが独立を宣言すると、これを認めない近隣アラブ諸国が宣戦布告し、第一次中東戦争が勃発した。
以来、数次の戦争が繰り返されてきた。特に1973年の第四次中東戦争の際に生じた石油危機は、世界経済に甚大な影響を与えた。中東和平問題は、イスラエルが占領した土地(ヨルダン川西岸・ガザ地区・ゴラン高原)を返還しつつ安全を確保し、いかに和平を実現するかが課題となっている。安全を確保しつつ、いかに和平を実現するかが課題となっている
難民・入植地・エルサレムの帰属・国境画定などの問題を解決し、パレスチナ国家を建設する「二国家解決」が国際社会の目標とされてきたが、未だ実現していない。
イスラエルとパレスチナ。上記地図のベージュ色がイスラエル。緑がパレスチナ自治区(外務省サイトより、キャプチャー)
なぜ日本は関わるのか
中東は冷戦後も不安定で、イスラエル・アラブ間の戦争に加え、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争などの大規模紛争が繰り返されてきた。石油埋蔵量は世界の約6割、原油年間生産量は約3割を占める(2009年BP統計)。中東依存の高い日本にとって、この地域の不安定化は経済と国民生活に直結する。
日本は国際社会の平和・安定への責任から、中東和平問題に関与し、「二国家解決」に基づく公正・永続・包括的和平の実現を基本方針としてきた。
なぜ紛争は終わらないのか
複雑な問題の連動性:領土・難民・入植地・エルサレム・国境画定の各問題は互いに連動する。カルテット(米・EU・ロシア・国連)の2003年ロードマップでさえ第一段階は達成できず、国際的働きかけが繰り返されても進展は限られる。
信頼関係の欠如:パレスチナ側は占領に強い反発を抱えつつ、経済的にはイスラエルに依存。非対称な関係が交渉における信頼醸成を妨げている。
代理戦争の拡散:ハマスやヒズボラなどイラン支援組織の存在で、二者間問題が地域全体の対立に拡大。紛争が鎮静化しても次の火種が残る。
戦争が次の戦争を生む歴史的連鎖:湾岸戦争(1991年)は、後にテロ組織アルカイダを率いるオサマ・ビン・ラディンを生み出した。また、2003年のイラク戦争はイランの地域大国化を促し、その権力の空白から、過激派組織『イスラム国(IS)』が台頭した。
黄色部分が、首都テヘランを含むイラン(外務省サイトより、キャプチャー)
「イランの核開発」は本当に危機的状態だったのか
アメリカが攻撃を開始する直前、スイス・ジュネーヴでオマーン仲介による間接協議が進行していた。イランは核兵器を保有せず、民生用原発に必要な水準を超える、濃縮度60%までウランを濃縮していたものの、核兵器製造に必要な90%には達しておらず、外交交渉の余地が残されていた。
なぜ国際社会は戦争を止められないのか
これだけ多くの人が戦争の拡大を恐れ、怒りを感じているにもかかわらず、なぜ国際社会はこの戦争を止められないのか。その理由は複合的だ。
国連安保理の機能不全
国連安全保障理事会は、常任理事国(米・英・仏・露・中)のいずれか一国が拒否権を行使すれば決議を阻止できる構造になっている。今回の戦争ではアメリカ自身が当事者であるため、停戦を求める決議はアメリカの拒否権によって機能しない。1991年の湾岸戦争には国連安保理の法的裏付けがあったが、今回の攻撃にはそれがない。
欧州・同盟国の制約
英国や欧州は戦争に反対しつつ、アメリカとの同盟を維持しなければならず、行動は制限される。
湾岸諸国の孤立
サウジアラビア・アラブ首長国連邦(UAE)・カタールは攻撃を非支持するも、イランのミサイル・ドローン攻撃に直面。中国が舞台裏で影響力を拡大しており、仲裁者不在の状態が続く。
政治戦略の不透明さ
トランプ政権の戦争目的は不明確で、核開発縮小か屈服か体制崩壊か定まらず、戦争の止め時も見えない。
蜂起の呼びかけ
イラン国民への蜂起呼びかけは、1991年イラクの失敗を踏まえると危険性が高く、戦後の統治構想がなければ深刻な混乱を招く。
現在のイラン戦争と従来の中東和平問題
ハマスはイラン支援組織で、ガザは事実上イラン・イスラエル対立の最前線だ。世界の関心がイランに集中する今、イスラエルはヨルダン川西岸の併合をさらに進めている。未解決の中東和平問題が今回の大規模紛争につながった。
エネルギー面でも原油価格は急騰、ホルムズ海峡封鎖リスクが高まる。中東依存の日本に深刻な影響が及ぶ。
私たちにできること
戦争を止める力は個人には限られるが、状況を知り、伝えることが第一歩だ。外交交渉の余地が残されていた段階で攻撃が開始された事実を理解することは、世論形成に影響する。
政治家への意思表示も有効だろう。日本政府は「二国家解決」を外交方針としており、停戦への働きかけを要請できる。
人道支援も行動の一つ。レバノンでは100万人以上が避難、ガザでも困難な生活が続く。信頼できる国際機関を通じた支援が可能だ。
歴史の教訓を忘れないことも重要となる。湾岸戦争やイラク戦争の教訓から、最大の代償を払うのは市民である。記憶し続けることが次の戦争を防ぐ鍵となるのではないか。
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外務省資料
BBCの記事
【解説】 トランプ氏はイラン国民に蜂起を呼びかける、しかし1991年のイラクの教訓は重い……BBC国際編集長
【解説】米・イスラエルとイランの戦争、誰が何を望んでいるのか
編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2026年3月31日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。







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