【前編】Claude Codeで補助金申請「半日で一発OK」は本当か

「半日で補助金が通った」という話は、だいたい誤解でできている。

最近のClaude Codeブームに相まって、「Claude Codeで補助金申請」「AIで助成金を一発採択」といった記事やSNS投稿が急増している。日本初のClaude商業出版書籍の著者として、この風潮には警鐘を鳴らさざるを得ない。

先日もXで話題になった投稿がある。「Claude Codeを使って小規模事業者持続化補助金の申請書を半日で作成し、商工会議所から質問も修正依頼もゼロで一発OKだった」という内容だ。多くの反応を集めている。

冷静に中身を見ていくと、この成功談にはいくつかの重大な誤解が含まれている。

Claude Codeである必要がどこにもない

投稿者が示した工程は以下の7つだ。①事業資料をフォルダに入れる、②使える補助金を探してもらう、③必要項目を洗い出してもらう、④実数字で壁打ちする、⑤申請ポータルにコピペする、⑥商工会議所への依頼メールを生成する、⑦提出して一発OK。

一つずつ見ていこう。②補助金の検索、③項目の洗い出し、④数字の壁打ち、⑥メール文の生成。これらはすべてテキスト生成と対話による推敲であり、claude.ai(ブラウザ版)のチャット画面でまったく同じことができる。①のファイル読み込みもclaude.aiのアップロード機能で対応可能だし、⑤と⑦はどのツールを使おうが人間がやる作業だ。

Claude Codeはターミナル上で動作するCLI型の開発ツールである。コードの生成・実行、Gitによるバージョン管理、ファイルシステムの自動操作など、ソフトウェア開発に特化した機能を持つ。補助金の申請書はテキスト文書であり、Claude Codeの強みである自律的なファイル操作やコード実行が活きる場面は一つもない。

にもかかわらず「Claude Codeを使えば」と語られるのはなぜか。おそらくターミナルの黒い画面が醸し出す「高度なことをやっている感」と、「Claude Code」という新しい名前が持つ魔法のような響きが、SNS上での拡散力を増幅しているのだろう。だが、実態はブラウザでチャットしているのと変わらない。

小規模事業者持続化補助金の採択率を知っているか

この補助金の実態も確認しておきたい。小規模事業者持続化補助金は、中小企業庁が所管する補助金の中でも最も間口が広い制度の一つだ。通常枠の第17回公募(中小企業庁発表)では、応募23,365件に対して採択11,928件、採択率は51.0%である。過去17回の平均採択率は約57%で、過半数が採択されている。

もちろん第16回の37.2%のように厳しい回もあり、全員が通る試験ではない。だが、ものづくり補助金や事業再構築補助金と比較すれば、相対的にハードルが低い補助金であることは間違いない。

「半日で一発OK」のインパクトは、Claude Codeの力というよりも、この補助金の制度設計に支えられている部分が大きい。

商工会議所の様式4は「採択」ではない

もう一つ重要な点がある。投稿者が「一発OK」と言っているのは、商工会議所が発行する「事業支援計画書(様式4)」のことだ。これは商工会議所が申請内容を確認し、支援の意思を示す書類であり、補助金の採択そのものではない。様式4の発行は申請の前提条件に過ぎず、採択は別途、第三者の有識者による審査委員会が行う。

つまり「一発OK」はまだ書類の入口を通過した段階であり、補助金が降りたわけではない。投稿者自身も「まだ実際に補助金が降りたわけじゃない」と書いているが、この但し書きがどれほどの読者に届いているだろうか。

後編では、なぜこうした「AI一発採択」の物語が信じられやすいのか、そして補助金申請にAIを活用するなら本当はどう使うべきかを論じる。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

23冊目の本を出版しました(4月20日発売)。

3時間で身につくClaude活用術』(WAVE出版)

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