トランプ大統領「私はレオ14世が好きでない」異例の教皇批判

トランプ米大統領は12日、ローマ・カトリック教会初の米国人教皇のレオ14世を「犯罪対策に弱腰でその外交政策はひどい」、「彼はあまり良い仕事をしていないと思う」と、ソーシャルメディア「Truth Social」に長文の教皇批判を投稿した。

キリスト教会関係者と祈るトランプ氏、ホワイトハウス公式サイトから

トランプ氏は「イランが核兵器を保有することを容認するような教皇は望まない。都市における犯罪を容認するような教皇も望ましくない。私はそれが気に入らない。レオ14世はあまり好きではない」と付け加えた。それに先立ち、レオ14世はトランプ大統領に対しイラン戦争の終結を促し、先週のイースターメッセージでは、「世界が暴力に対して無関心になりつつある」と、名指しこそ避けたが、トランプ氏を批判している。

AP通信のウィル・ワイサート、ジョシュ・ボーク両記者は「トランプ大統領は12日夜、レオ14世に対し異例の激しい非難を浴びせた。レオ14世を『あまり良い仕事をしていない』、『非常にリベラルな人物だ』と指摘、『過激左派に迎合するのをやめるべきだ』と示唆し,『私はレオ14世のファンではない』と述べた」と報じた。

AP通信は「ローマ教皇と米大統領の意見が食い違うことは珍しくないが、教皇がアメリカの指導者を直接批判することは極めて稀であり、トランプ大統領の痛烈な反論は、それ以上に異例と言えるだろう」と総括している。

ちなみに、トランプ氏は「教皇レオ14世は感謝すべきだ。周知の通り、彼の選出はサプライズだった。教皇候補リストには載っていなかった。米国人だったからこそ教会が選んだのだ。ドナルド・J・トランプ大統領に対処する最善の方法だとコンクラーベに参加した枢機卿たちが考えたからだ。私がホワイトハウスにいなかったら、レオはバチカンにいなかっただろう」とTruth Socialで語っている。

米国人教皇レオ14世、トランスヒューマニズムを批判、バチカンニュース、2025年12月10日

典型的なトランプ氏の人物評だ。日本で高市早苗首相が選挙で3分の2を超える議席を獲得して圧勝した時、トランプ氏は「私が高市首相に支持表明したからだ」と述べ、高市首相の勝利は自分の支持表明があったからだと示唆したことを思い出す。多くの日本人は当時、驚いた。

トランプ氏はレオ14世に対し常に批判的だったわけではない。トランプ氏は昨年5月の教皇選出の時、「我が国にとって名誉なことだ。米国人の教皇が誕生したことは、我が国にとってこの上ない名誉だ。これ以上の名誉があるだろうか?少し驚いたが、大変嬉しく思っている。本当に、この上ない名誉だ」と語っていたのだ。

レオ14世は今月11日、サン・ピエトロ大聖堂で夕方の祈祷会を執り行った。この日は、米国とイランがパキスタンで直接会談を開始した日でもあった。教皇は米国やトランプ大統領の名前を直接挙げることはなかったが、米国がその軍事的優位性を誇示し、宗教的な観点から戦争を正当化することはできないとはっきりと主張している。

レオ14世は、「神は戦争を仕掛ける者の祈りを聞き入れず、拒絶する」と述べている。また、旧約聖書イザヤ書の一節を引用し、「あなたがたが多くの祈りを捧げても、わたしは聞かない。あなたがたの手は血で満ちている」とも語っているのだ。かなり厳しい審判だ。

停戦合意前、トランプ大統領がイランの発電所やその他のインフラに対する大規模攻撃を警告し、「今夜、一つの文明が滅びるだろう」と述べた際、レオ14世は「そのような発言は到底容認できない」と非難している。

トランプ大統領は「アメリカがベネズエラを攻撃したことをひどいことだと考える教皇などいらない。ベネズエラは大量の麻薬をアメリカに送り込んでいた国だ」と書き込んだ。そして「私が圧倒的な勝利で選出された目的をまさに果たしているからといって、アメリカ大統領を批判する教皇などいらない」と付け加えている。

米国カトリック司教協議会会長のポール・S・コークリー大司教は、トランプ氏の一連の発言に「落胆した」との声明を発表した。同大司教は「レオ14世はトランプ氏のライバルではない。また、教皇は政治家でもない。教皇はキリストの代理者であり、福音の真理に基づき、人々の魂の救済のために語る方だ」と必死に諭している。

ちなみに、1月22日、ワシントンD.C.の国防総省本部で行われたコルビー米国家安全保障担当補佐官と当時の駐米教皇大使クリストフ・ピエール枢機卿との会談は、国際社会に大きな波紋を広げた。一部のメディアは、米国政府が会談ではバチカンに圧力をかけ、トランプ大統領の政策を支持するように脅迫したというのだ。バチカン報道官のマッテオ・ブルーニ氏は後日、「一部メディアが報じた会談に関する内容は全く事実無根だ」と述べ、報道内容を一蹴した。

ところで、ワシントンとバチカンの関係が今日、以前ほど円滑でないのは、トランプ大統領とその強引な政治スタイルだけが原因ではない。オバマ大統領時代にも緊張関係は存在していた。ベネディクト16世(2005年~2013年)の在位中には、その緊張はさらに高まった。彼の反リベラルな政策は、当時ワシントンで勢力を誇っていた「ウォーク」派の間で公然とした不満を引き起こし、CIA内部では政権交代の可能性まで検討される事態となった。フランシスコ教皇の就任後も、例えばオバマ大統領によるシリア内戦への介入の脅迫などをめぐって、緊張が高まった、といった具合だ。

しかし、世界最大の軍事大国と世界最大の宗教共同体との間の緊張が、今ほど明白になったことはかつてない。レオ14世は、トランプ大統領の政策の問題点ついてかなり積極的に発言している。最初は移民税関捜査局(ICE)の行動について、次にベネズエラへの介入について、そして最近では異例の率直さでイランとの戦争について発言している。レオ14世の発言はワシントンではトランプ大統領批判と受け取られてきたのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年4月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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