トランプ氏は4月1日、国民向けテレビ演説でイランに対して初めて「石器時代」という表現を使用した。そしてイースターの当日(4月5日)、その内容をさらに過激化してSNSで投稿し、「火曜日は発電所の日であり、橋の日だ――それがイランで一つにまとまる。これまでにないものになるだろう!!!あのクソみたいな海峡を開けろ、このイカれた野郎どもめ。さもないと地獄で生きることになるぞ――よく見ていろ!アッラーが讃えられんことを」と述べた。

トランプ米大統領、自身をイエス・キリストになぞらえて描いたとみられる画像をSNSに投稿、2026年4月12日
米大統領の「石器時代」発言はイランだけではなく、世界からも批判の声が出た。ローマ教皇レオ14世は7日、名指しこそ避けたが、「イラン国民への恫喝は絶対に受け入れられない」と、トランプ氏を暗に批判した。
米国人のレオ14世の一連の批判に怒りが収まらないのか、トランプ大統領は12日、レオ14世を「犯罪対策に弱腰でその外交政策はひどい」、「彼はあまり良い仕事をしていないと思う」と、ソーシャルメディア「Truth Social」に長文の教皇批判を投稿した。そして「イランが核兵器を保有することを容認するような教皇は望まない」と述べている。
それだけではない。トランプ氏は14日夜(現地時間)、「誰かレオ教皇に、イランが過去2ヶ月間で少なくとも4万2000人の罪のない、完全に非武装のデモ参加者を殺害したことを伝えてくれないか?」と、自身のプラットフォームに書き込んだ。そして「イランが核爆弾を保有することは絶対に容認できない」と付け加えた。
トランプ氏がレオ14世に思い出してほしい事実とは、イランのムッラー政権が昨年末から今年初めに反体制派抗議デモに対して発砲し、西側人権団体によると、数千人の抗議デモ参加者、多くは若者が殺害された、ということだ。トランプ氏はその数を「4万2000人」と見ているが、犠牲者の数は信じられないほど多かったのは間違いない。ムッラー政権が自国民を大量殺害したのだ。
イラン当局は今月2日、今年1月の抗議デモで拘束され、有罪判決を受けた10代の少年を処刑した。ノルウェーに拠点を置くイラン人権NGOによると、アミル・ホセイン・ハタミさん(18)は、2月にほかの6人とともに首都テヘランの革命裁判所で死刑判決を受け、同郊外のゲゼル・ヘサル刑務所で絞首刑に処された。処刑の理由は「米国とイスラエルのために国家安全保障に反する行為をした」というものだった。
トランプ氏が「イラン当局が国民をどのように大量殺害してきたかを誰かレオ14世に教えてほしい」と述べたのは正しい指摘だ。イランがインターネットの接続を切断したため、イランでの抗議デモに関する確実な情報が乏しかったこともあって、バチカンを含む西側メディアのイラン批判は終始慎重だったが、米イスラエル軍のイランへの軍事攻勢については厳しく批判している。
ガザ紛争時でも同じだった。イスラム過激派テロ組織「ハマス」がイスラエルに侵攻、1200人以上のイスラエル国民が射殺され、250人以上が人質になったことを受け、イスラエル軍がガザでのハマスへの報復攻撃を開始した。しかし、時間の経過と共に、国際社会の批判はハマスに向けられず、圧倒的な軍事力で攻勢をかけるイスラエル軍への批判に移っていったことはまだ記憶に新しい。あたかも、イスラエル軍が最初にガザに侵攻して、戦闘を開始した、というようにだ。
米イスラエル軍がイラン攻撃を開始し、ハメネイ師を始めとするイランの指導者を殺害した直後、イラン国民はムッラー政権の体制崩壊を期待した。米国とイスラエル両国は国際社会に向かってはイランの核開発計画の壊滅が急務であると述べ、その軍事攻撃を正当化した。
ただし、時間の経過と共に、ここでも軍事力で圧倒的に優位性を誇示する米国とイスラエルへの批判が高まり、イランの不法な核開発計画、人権弾圧、そしてイスラムのテロ組織への軍事支援といった事実は脇に置かれた。もちろん、トランプ大統領の不注意な暴言はその傾向を助長させた面は否定できない。
最高指導者ハメネイ師の死後、現在のイランの支配体制は、ハマスやヒズボラなどテロ組織を支援しているイスラム革命防衛隊(IRGC)がほぼ全権を掌握している。後継者に選出されたモジタバ師はイスラム革命防衛隊のマリオネットに過ぎない。
イランの企業は80%が国有企業だ。経済の大部分は、政府、宗教団体、軍事コングロマリット(複合企業)によって支配されており、純粋な民間企業はほとんど存在しない。そしてハメネイ師は数十億ドル規模のコングロマリットを率いる中心的人物だった。ハメネイ師の経済帝国は石油産業から電気通信、金融、医療に至るまで、経済の多くの分野をその管理下に置いている。また、イラン革命防衛隊も石油とガス産業、建設と銀行だけでなく、農業と重工業にも組み込んでいるコングロマリットを所有している。要するに、ハメネイ師を筆頭としたイランの聖職者体制は同時に、同国の経済を完全に掌握しているわけだ。ちなみに、後継者に選出されたモジタバ師はドイツに2件の高級ホテルを所有していることは良く知られている。
宗教指導者が「戦闘は良くない」という観点から米国の軍事活動を批判するが、イランのムッラー政権は47年間、独裁国家として君臨し、その支配下で多くの国民が苦しんできた。レオ14世のトランプ大統領批判はムッラー政権を間接的に擁護することにもなる。一方、トランプ氏の今回の指摘は重要であり、正論だ。
カトリック信者のバンス米副大統領は13日、フォックスニュースとのインタビューの中で、「レオ14世は道徳と教会問題に専心すべきだ。政治の議論には干渉しないほうがいい」と助言している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年4月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







コメント