敗因は小池都知事? 練馬区長選を考える

稗島 進

bizoo_n/iStock

4月12日、練馬区長選の投開票が行われた。吉田健一氏(59)と尾島紘平氏(37)の事実上の一騎打ちとなり、吉田氏が123,164票を獲得し、尾島氏の90,135票に大差をつけて勝利した。

吉田氏が「完全無所属」を標榜する一方で、尾島氏は自民、国民、維新、都民ファーストの各政党が推薦する典型的な組織戦を展開した。幼稚園理事長の吉田氏は、前回区長選で現職の前川氏に僅差まで迫ったものの落選したが、今回は雪辱を果たした。

尾島氏は小池都知事の秘書を経て、区議、都議と政治家としてのキャリアを積んだが、社会人経験のなさから、行政トップとしての不安を指摘する向きもネット上には結構あった。

今年は中野区、杉並区など23区で首長選が立て続けに行われるので、その始めとなる練馬区長選は、個人的に注目していた。

4月2日の清瀬市長選挙で現職が落選し、東京の政治に何か変化の兆しがあるかも、という薄っすらとした予感もあった。尾島氏の敗北は政治業界ではかなりの衝撃を持って受け止められたが、XなどSNS上での尾島批判はかなり強いものがあり、それだけ見ていれば「落選して当然」という雰囲気だった。

尾島氏が気に入らないポストをブロックしていることへの反発と、小池百合子都知事との親密さのアピールを揶揄するものが目に付いた。

政治業界に住む人々で、SNSでの批判が落選に結び付いたと言う人はほとんど見かけないが、この点はよく検証してみる必要がある。政治家や政党は日常からSNS戦略にカネと時間を割いており、その影響力を無視するならば、やっていることに矛盾が生じることになる。

さらに、今回の選挙は小池都知事がもはや“既得権益のドン”のように見えたことが災いしたとも言えるのではないか。

そもそも、2016年に「東京大改革」を掲げて初当選して以来、その看板はすでに錆びついているが、そのことがイメージとして、有権者にはっきりと可視化された選挙だったのでは、ということである。

尾島氏出身の都民ファーストの会の応援は当たり前だが、最大の敵だったはずの都議会自民党が今では小池与党であり、片山財務相など大物議員を投入し、尾島氏を全面支援した。小池都政に批判的だったはずの維新は、党のアイデンティティである「身を切る改革」を捨てて抱きつき、労組を母体とする国民民主党も推薦を出した。

最近、小池都知事は、都庁でのプロジェクションマッピングやお台場の噴水事業など莫大な税金の無駄遣いが批判されてもいる。その側近中の側近である尾島氏が、当選を果たすのはもともとかなり困難だったはずだ。

対する吉田氏は、共産党などが自主支援したものの、「完全無党派・完全無所属」との訴えが際立ち、地域固有の課題についても具体的な政策を示すなど、多くの練馬区民から見れば、どちらを選ぶかは自明だった。

小池都知事がこれまで、無党派層の支持を得て当選してきたことは、各種データが物語っている。その小池氏がもはや無党派層が期待する首長ではなくなり、その小池氏の秘蔵っ子である尾島氏に支持が集まらなかったという説明は、説得力があるのではないか。

不断の改革を忘れ、既得権益化する政治は、とくに東京においては必ず否定されるということが、改めて示されたと感じる。

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