
株式会社財界研究所より『運を掴み、機を活かす』という本を上梓しました。来月1日から発売が開始されます。本書は2007年4月より続く当ブログ「北尾吉孝日記」を再構成したもので、翌年秋出版の第1巻から数えて18巻目に当たります。
今、世界は益々混迷を極め、我々は恐るべき変化と不安の時代に突入している観があります。長引くロシア・ウクライナ戦争に加えて、イランと米国・イスラエルの戦争も始まり、災禍はアブダビ、カタールといった近隣諸国にも及んでいます。どちらの戦争も一向に終息の気配はありません。アラブ諸国は世界最大規模の産油地域である上、イランがホルムズ海峡を封鎖したことで、世界のエネルギー市場や株式市場はもちろん世界経済全体にも甚大な影響が生じています。
また、多くの子供達を犠牲にした残酷極まりないエプスタイン事件の詳細も次第に明らかになってきました。世界各国の政・財・学界の著名人や英国・ノルウェーの王室までもその関与が公表され、大きな波紋を呼んでいます。
こうした情景を前にして、私が書棚に向かって手にした数冊の本は全て易(周易)に関するものでした。筮占(ぜいせん:筮竹を用いた占い)などをやるつもりは全く無く、単に易の哲理即ち変化の原理原則を改めて読み直そうと思ったからです。
多くの人を率いるリーダーとしては、こういう時に読み、思索するには『易経』が最も適当な古典ではないでしょうか。
周易の解説書である繋辞伝(けいじでん)では、幾・機・期の三つの漢字について、それらをバラバラに捉えるのではなく、一つの変化の循環プロセスとして読み解けば、諸問題に対する最善の行動を取るための智慧が得られるとして高く評価されています。
これら三つの「キ」の漢字について簡単に説明しておきましょう。
先ず「幾」です。繋辞伝に「幾を知るは、それ神(しん)か」とありますが、物事の「幾」を知るということは、神妙の技と言えます。だから「幾」を知ることが聖人の条件となっています。
「幾」とは物事が変化する兆しであり、兆しとは物事が動く前の機微です。物事が動き、変化する前には必ずと言っていいほど機微が現れます。こうした段階で変化を察知できれば最小の努力で大きな災いを避けられます。我々凡人にはこうした研ぎ澄まされた洞察力と直観力を身に付けることは至難の業ですが、そうした力を得るべく努力精進することが大切です。
次に「機」です。本来、「機」は「織機の仕掛け」を意味し、転じて「物事が動く要(かなめ)」を指します。要になっている一点を抑えると、それが全体の運行に微妙にひびく、そういういわゆるつぼ、勘所のことです。ですから、何によらずこの「機」を捉え、「機」を用いることが非常に重要なのです。いくら「幾」を知っていても、「機」を逃せば結果にはつながりません。
最後の「期」は物事が熟して、満ちること、言わばそのタイミングや期間を表しています。一つの「変化の因果律」の終着点を指していると言っても良いでしょう。
現今のようなある意味、人間が正常さを喪失してしまっている異様な時であるからこそ、易を学ぶ良い契機になるかもしれません。易学は、我々の知得していない能力の開発を促し、多様な事業を完成・成就させる方向に導いてくれると私は確信しています。正に『易経』にある「開物成務(かいぶつせいむ)」です。
序章でさらに易と関連が深い「運」や「命」について述べておきます。是非この「はじめに」と併せて玩味して頂ければ『易経』を学ぶ一人として幸甚です。私のブログ本を通じ、もし得るところがあれば血肉化し、皆様方の実際の日常生活の中で、それが行動に移されるようなれば、望外の喜びであります。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2026年4月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。








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