イラン情勢は不透明さと不確かさを増してきた。米国とイラン両国間の紛争解決のための外交交渉の見通しがたたないのだ。米国はイランの濃縮ラン関連活動の完全停止、高濃縮ウランの管理問題、ホルムズ海峡の完全開放を強く要求する一方、イラン側は核関連活動の継続、対イラン制裁の解除、ホルムズ海峡通過に関連した自国管理権を主張するなど、双方の立場は依然対立している。

サンクトペテルブルクを訪問し、ロシア当局関係者と会見するイランのアラグチ外相(左)、2026年4月27日、Tasnim通信
両国間の第2回目の交渉は依然実現していない。トランプ米大統領は「イランが交渉を願うならば、電話でも可能だ。ワシントンに来ればいい」と述べるなど、両国間の立場が大きく離れている時点でのイランとの交渉に余り乗り気ではなくなってきている。一方、イランのアラグチ外相は27日、サンクトぺテルブルクを訪問し、ロシア政府関係者との軍事・外交協力について会合している、といった具合だ。
メディアの関心が米イラン交渉の動きに注がれているが、イランの国民経済が戦争の影響もあって破綻する危険性すら囁かれ出したのだ。海外イラン・メディアの「イラン・インターナショナル」(4月24日)によると、「イラン経済は3月の戦争後、急激な悪化期に突入しており、インフレ、通貨安、主要産業への打撃による圧力の高まりが、より広範な危機のリスクを高めている。今後2~4ヶ月間、イランの経済状況は急激に悪化し続けると予想され、高インフレ、失業率の上昇、実質所得の低下、主要産業、対外部門、金融システム全体にわたる深刻なストレスにより、深刻なスタグフレーションに陥る可能性がある」と予測している。
イランの国民経済は2025年、インフレ率は50%を超え、イラン・リアルは大幅に下落し、銀行システムはアヤンデ銀行の破綻をはじめとする深刻な危機に瀕した。こうした圧力は既に家計の購買力を低下させ、企業活動を著しく弱体化させた。経済状況の悪化は、国内各地で広範な社会不安を引き起こし、昨年末から今年初めの大規模な抗議デモを誘発させた。
「戦争はイランの主要な輸出収入源に直接的な影響を与えた。産業インフラ、特に石油化学および金属分野への被害は、2024年に約250億~300億ドルの輸出額を計上していたセクターに深刻な打撃を与えている」(イラン・インターナショナル)という。
ちなみに、イラン当局は国内の治安維持のためにインターネットを制限してきた。広範囲にわたるインターネット遮断は、経済活動、特にデジタルプラットフォームに依存する中小企業に深刻な影響を与えている。NetBlocksによると、イランにおけるインターネット遮断による経済的損失は、最近の遮断期間中、1日あたり少なくとも3,700万ドルと推定されている。
ところで、ここにきてアラブ首長国連邦(UAE)とイランの関係が急速に悪化してきている。直接の原因は、イランが米軍の攻撃への報復としてUAE内の米軍基地や関連施設を空爆したことだ。イランは民間施設、石油施設、そしてオラクル社関連のデータセンターを含む重要インフラを攻撃した。テヘランは、米国とイスラエルによるイランへの攻撃において、自国の領空と基地の使用を許可したことに対する賠償を、アラブ首長国連邦(UAE)を含む複数の地域諸国に正式に要求した。それに対し、UAEは駐テヘラン大使を召還するなど、外交的緊張の急速な高まりを示した。
イラン・インターナショナルのマリアム・シナイ記者は「イランとUAEは過去数十年にわたり、広範かつ強固な経済関係を築いてきた。地理的な近さ、高度な港湾インフラ、そして自由貿易規制により、イラン・イラク戦争終結以来、UAEはイランの商業拠点へと変貌を遂げた。数千ものイラン企業がUAEに拠点を構え、イランの輸入の大部分はドバイを拠点とする再輸出ルートを経由している。UAEは単なる貿易相手国ではなく、厳しい制裁を受けているイランにとって、世界市場への重要な玄関口となった」という。
過去20年間、UAEはイランの貿易相手国の中で常に第1位か第2位の地位を占めている。UAEは現在もイランにとって最大の商品供給国の一つであり、イランの輸入のかなりの部分を占めているという。その貴重な経済貿易パートナーのUAEに対し、米軍への報復攻撃を理由にUAEに空爆を実施したことで、イラン・UAE関係は急速に険悪化してきたわけだ。
シナイ記者は「米国と欧州によるイランへの制裁強化、特に2018年の米国による2015年核合意(JCPOA)からの離脱後、UAEの重要性は劇的に高まった。直接貿易ルートが狭まるにつれ、UAEはイランへの物資、資本、資金の流れの主要な経路となった。UAEからイランへの輸出額は、2018年の約52億ドルから近年では200億ドル以上に増加した。また、ドバイはイランの両替所の金融ハブにもなり、その多くが通貨送金の円滑化や制裁回避において重要な役割を果たした。しかし、このシステムは現在、圧力にさらされている。UAE当局は、イランの両替所やいわゆる信託会社を標的にし、口座凍結、事務所閉鎖、一部関係者の拘束などの措置を講じているという。これらの措置は、イランの国際金融ルートへのアクセスを著しく制限する可能性がある」と解説している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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