私は原油価格は他の資源価格に比べて安すぎると申し上げました。では将来、原油価格の水準が訂正され、今より全く違う水準になる可能性はあるのでしょうか?
まず、例を掲げましょう。
2000年の主要資源の価格と現在の価格を比べてみましょう。
金 270㌦ → 4700㌦ (17.4倍)
銀 5.0㌦ → 76㌦ (15.2倍)
銅 0.8㌦ → 6.1㌦ (7.6倍)
原油 25㌦ → 96㌦ (3.8倍)
原油は1970年代に約10倍になりました。原油は安いエネルギー源として重宝していたのですが、産油国による原油相場の政治的利用により2度にわたる石油ショックが起き、価格が暴騰しました。また当時はローマクラブなどが発した原油採掘限界説などが高騰する原油価格を更に後押ししたこともあります。
しかし、原油価格がその後、他の資源と比べて価格上昇率が低めに抑えられている理由は多岐にわたります。
ます、70年代に比べて採掘技術が大きく改善し、当時は計算外だった資源が採掘可能になりました。その典型がシェールオイルです。これでアメリカは一躍世界最大級の産油国にのし上がるのです。次いでこの20年ぐらい進んだ化石燃料から持続可能なエネルギーへの転換が進んできていることがあります。
例えば日本は70年代の原油輸入量は2.9億リットルでしたが、人口減も伴い、2025年は1.3億リットルと半分以下で毎年その輸入量は減っています。
とすれば原油が80年代から他の資源に比べて上昇率が上がらないのは政治的ないしOPEC+のような人為的価格調整によるいびつな価格形成をしたことが長い目で見て市場からの信認を得られなかったことはあるのでしょう。つまり恣意的に決まる原油価格はリスクがあるから燃費効率を改善したいという需要側の願望であります。そのために世界は代替エネルギーを模索し、中東の産油国でさえ、このままでは国家が維持できないと他の産業誘致を進めているほどであります。
もう1つはサウジやロシアが産油の収入に頼る国家財政であるために市場の価格自動調整機能ではなく、OPEC+を通じた統制価格にしたことが逆に誤りで、価格を抑制する結果になった可能性はあります。金銀銅は価格抑制がなく、あくまでも市場相対相場であることを考えると現在の原油価格はOPEC+サマサマと言える可能性はあるのです。
一方、原油の世界市場を見ると中東産が約31%、ロシア産が11%、アメリカ産が22%などとなっており、非OPEC+の市場が過半を占める現状としてはOPEC+の役割とその影響力は薄まってくる可能性はあります。そうなると市場の需給が原油価格を決定しやすくなるので価格動向は非常に読みにくくなると言えます。
特に原油からは灯油、軽油、ジェット燃料、ガソリン、重油…と用途に応じて様々なタイプが生まれます。そしてそれぞれの部門の燃料に過不足があっても原油精製を通じた一定の制御下に置かれることを考えると市場の動きは想定しにくいのです。例えば飛行機の燃料需要が増える一方、自動車のEV化が進みガソリン需要が減っても原油からジェット燃料だけ抽出し、ガソリンはいらないということはできません。もちろん、現代の精製技術は触媒などをうまく使い、多少の調整は出来ますが灯油が重油に代替することはできないため、余ったものは輸出するなどして対応しているのです。
よって一時期大ブームだったSDG’sがこのところあまり聞こえなくなってきたのは現代社会において原油を無視することはできないというジレンマがあり、これが今後、更に強まる可能性があるのです。
では最後に原油価格の上方修正はあるのでしょうか?いわゆる物価水準を考れば2000年比で6倍の150㌦程度はあっておかしくなかったと思うのです。ただ、その後もロシアを含め、原油の政治的利用があったためにその機会を逃したと思います。また今回のホルムズ海峡問題は世界全体に中東産原油のリスクを改めて投げかけ、以前つぶやいたようにEV車復権の芽も欧州を中心に出てきています。また小型原発SMRは世界で猛烈な勢いで潜在需要が出てきており、東南アジア諸国も含め、30年代初頭の最大の産業になるとみています。(日本だけはSMRのフィージビリティスタディすら進んでおらず、5年後に遅れた日本と指摘されるのが目に見えています。)

日米首脳会談2026年3月20日 トランプ大統領と高市首相 同首相Xより
これらを勘案するとコモディティ相場の中で原油市場だけは特殊で私が以前から言っているように原油価格はやっぱり70ドル台が居心地よいという水準にいつかは戻ってしまう公算が現実的なのかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年4月28日の記事より転載させていただきました。







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