私は10年以上前から日本の自動車産業は安泰ではないと考えており、現在の主要7社体制が何時までも続くとは考えていないと述べてきました。その考え方は元をたどれば1980年代から既に学術界ではあったわけで私は大学のゼミでもこの点についての議論をしたのもよく覚えています。ただ、自動車産業の話をこのブログで振ると日本びいきの声も強く、テスラの話などは全くもって受入れの余地はなかったのであります。もっと昔話をすると中国で電気自動車が発売されたころ、日本の自動車関係者が彼らの車を鼻で笑っていたのです。多分発想の違いなのだと思いますが、外から見ていると奢っている感じもしました。
そうしている中で7社体制は時代の中では紆余曲折しています。マツダやダイハツ、三菱自動車は厳しい時期を経験しています。話題の大きさとしては初めに日産が苦境に陥り、最近はホンダの苦戦が報じられています。両社の現在に至る道のりは全く違う理由でありますが、理由が何であれ、企業の栄枯盛衰の罠に引っかかってしまったのであります。

三部敏宏社長 ホンダHPより
日産という会社はエリート主義兼権威主義の会社であり、企業のトップが誰であれ、実力本位であると言えます。イヴァン エスピノーサ社長が就任してから日産を叩くメディアも減り、氏もリストラを敢行し、少しだけど底打ちして回復の兆しが見えつつあるところです。
エリート主義の特徴は適役がトップに立てば割と回復力がある点でしょうか?日産の経営陣で歴史的に著名だったのは同社の基礎を築いた川又克二、評価は割れますが石原俊、組合のゴタゴタから車屋としての回復をさせた久米豊、大苦境からのリバイバルをさせたカルロスゴーンがいます。あとの社長はつなぎでしかない点を考えると経営に波があるのが同社の特徴とも言えます。
一方のホンダは独立独歩主義。同業他社が提携や連携を深める中、「俺はそんなことしない」と自信に満ちた経営を基本としてきました。もちろん、部分部分では提携や連携はありましたが、ホンダイズムはソニーと並び、日本製造業のこだわりとも言えるでしょう。
ではソニーはそのこだわりをどうしたか、と言えば製造業からソフトに時間をかけてシフトしたのです。我々はソニーといえばテレビというイメージが強かったのですが、それすら今年、中国のTCL社との合弁に切り替え、テレビ、ホームエンタテイメントはソニー色ではなくなります。パソコンのバイオも2014年に切り離しており、ソニーはある意味、完全に変わったと言えます。私が知る限りでは非製造部門出身の平井一夫氏が社長時代に大きな構造変化を起こしたと考えています。
ホンダは創業の本田 宗一郎氏以降、社長が特段目立ったという感じがしない会社です。異形の組織を経営的に会社としての体をなすことに尽力してきた社長が多かったと思います。ただ、個人的にはホンダ車との縁が人生で一度もなく、周りでもなぜかホンダに乗っている人がほぼ皆無であったことからホンダのクルマにほとんど乗った記憶がないのであります。少なくともモーターショーなどで見る限り、なかなか改革的で独創性がある点は認識しています。多分、車のデザインが目立たないのかもしれません。外面が地味すぎる気がします。
では三部社長が招いた今回の惨劇。経営者として失格だったかと言えば以前もコメントしたようにチャレンジしたのだから失格ではないと考えています。むしろ、EVが思ったより伸びず、世界の主要自動車メーカーが引き気味の今こそ、EVへの段階的シフト化に社運を賭けてもよかったのではないかと思うのです。ホンダイズムならできたはずです。ただ、もしも私が社長なら経営的にあれ程の過激なEVシフトはしなかったと思います。トヨタがジワリとEVを推進し、満を持して空隙の中を攻めていますが、あのようなやり方にすべきだったと思います。そこはヘタを打ったと思います。
経営戦略的にはEV化と自動運転化は抱き合わせです。自動車の30年後の未来を考えると、コモディティ化し生活必需のスマホと同じようになると予想しています。都市部では個人所有はせず、回遊する自動運転のEVをスマホで家の前まで呼び出し、目的地に向かう感じ。自動運転になれば運転する技術を競うことも所有欲もなくなるのです。今のスマホだってiPhoneを持っている人が個性を出したいとしてもほぼ限界があるのと同じです。でもそれに誰も文句を言わないのは既にコモディティだからであります。
ホンダはどうすればよいのか、この切り口は面白いオプションがあると思います。ずばり私なら儲かる二輪をEV化を含めもっと攻めて、四輪は単独で経営への固執を見直すのもありかと。ホンダジェットは売り上げも知れており、ようやく黒字化するかどうかですが、これは成長期待があるので育てたらよいでしょう。
四輪は競合が多すぎる上に上述のように30年後には差別化ができなくなるのです。もちろん、インド市場などを攻めてもよいですが、頭で考えるほどあの市場は簡単ではなく、トヨタですら往生しているのです。ただ、四輪を見直すとなれば売り上げが激減してしまい、企業価値を維持できなくなるのですが、株主に売却に伴う特別配当を大盤振る舞いすることでリストラすることも可能だし、私もカナダでそういう事業整理のケースは何度も見てきています。
またソニーが上手にソフト産業にシフトしたように自動車のソフトに生き残りの道を求めるのもありでしょう。
さらにはGEがやったような会社分割。そして四輪部門をどこかとの合併事業にするというアイディアもあります。四輪なら相手はソニーではないでしょう。既存の会社が良く、中国系なら引く手あまたですがそこは日本政府が許さないでしょう。大穴的にテスラあたりと組んだら面白いと思います。(相手がNOと言うとは思いますが。)
いずれにせよ、ホンダの再建はたやすくなく、ある意味日産よりたちが悪い気もしています。ドラスティックなリストラに踏み込むべく資金的余力があるうちに手を打つべきだと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年4月30日の記事より転載させていただきました。







コメント