トランプ大統領は典型的なカウボーイ気質だ:ドイツ駐留米軍の削減発言

トランプ米大統領は自分への批判や中傷に対して静観するとか、忍耐して甘受するといったことはなく、必ず叩き返す。ドイツのボン大学の安全問題専門家ヨアヒム・ウェ―バー氏は独ニュース専門局NTVとのインタビューの中で「トランプ大統領は典型的なカウボーイ気質だ」と述べている。

ホワイトハウスでトランプ大統領と会談するメルツ首相、2025年6月5日、ホワイトハウスから

ドイツのメルツ首相が先月27日、民間の学校イベントで米イスラエル軍のイラン攻撃を批判し、「イラン指導部によって米国は国家全体が屈辱を受けている」と述べ、「トランプ大統領にははっきりとした出口戦略がない」と批判した。

そのことがワシントンに伝わると、トランプ大統領は28日、自身のプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に投稿し、「ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、イランが核兵器を保有しても構わないと考えている。彼は自分が何を言っているのか全く分かっていない!」とやり返したけだけではなく、「米国がドイツ駐留米軍の削減を検討している」と述べ、間もなく決定される見込みだと書き込んだ。その直前、トランプ大統領はメルツ首相を激しく非難し、「ドイツが経済的にもその他の面でも、これほどひどい状況にあるのは当然だ!」と書き込んでいる。

トランプ大統領は、最初の任期(2017年~2021年)中にも、ドイツ駐留米軍の削減を示唆したことがあるが、実行されなかった。米国防総省のデータによると、2025年12月時点で、約6万8000人の米兵が欧州の基地に常駐していた。その半数以上にあたる約3万6400人がドイツに駐留している。

トランプ大統領の独駐留米軍の削減発言についてのドイツ側の反応を紹介する。

ヴァーデフール外相はトランプ大統領の米軍撤退の脅威に冷静な反応を示している。同外相はRTLの番組「ナハトジャーナル・スペツィアル」で、「米国はバラク・オバマ政権下で既に太平洋地域への注力を明確にしていた。今、それが実現するかもしれない。我々は冷静に検討していく」と述べた。そして「ドイツ連邦軍は起こりうる変化に備えている。我々はより多くの責任を担い、より強固な体制を構築しなければならない」と語った。

メルツ首相の発言については、ヴァーデフール外相は「首相はイランに対し、真剣に交渉するよう明確な警告を発したのは全く正当だ。私はその発言を支持する」と述べ、ドイツ連邦政府はこの問題に関しては「完全に一致している」と付け加えた。

一方、独連邦議会で最大野党の極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の外交政策専門家マルクス・フローンマイヤー氏は、「メルツ首相は当然、国内で同盟国を批判することはできるが、公の場で非難したり侮辱的な発言はドイツの外交的地位を損なうだけだ」と指摘、「首相がトランプ大統領の反応を誘発したのだ」と非難し、「ドイツは軍事的に自衛する能力がないにもかかわらず、長年米国の安全保障を当然のことと考えてきた者は、ワシントンからの圧力の高まりに驚くべきではない。ドイツは現在、安全保障政策において米国の抑止力に依存しており、中期的にこれらの能力を自力で代替することはできない」と強調した。

また、「緑の党」議会会派副代表のアグニエシュカ・ブルッガー氏は、「メルツ首相がトランプ米大統領のイランとの戦争を公然と批判していることは基本的に正しい」と認め、「真実をはっきりと述べ、トランプ氏のような人物の前でひるむべきではない」と述べた。しかし、現在のような深刻な状況下においては、「連邦政府による明確で、賢明かつ戦略的なコミュニケーションが必要だ。それにもかかわらず、メルツ首相は、軽率で、衝動的で、矛盾した発言を繰り返している。これは彼の最大の弱点の一つであり、国内外で繰り返し大きな問題を引き起こしている」と付け加えた。

米軍の一部撤退問題の再燃について、メルツ首相はニーダーザクセン州ミュンスターの軍事訓練場を訪問した際、「NATOの枠組みの中で、ドイツ連邦軍はドイツ国内の戦略的に重要な拠点において、米国、そしてNATO加盟国全体と肩を並べて任務を遂行している」と述べた。

ところで、トランプ大統領は、新たな関税措置をちらつかせる代わりに、政府との関係が悪化すると、米軍撤退をちらつかせるようになった。標的はドイツだけではない。トランプ大統領は30日、イタリアとスペインに対しても同様の措置を講じる可能性について、「おそらくそうするだろう。イタリアは米国にとって何の役にも立っていない」と切り捨て、スペインに対しては「ひどい、本当にひどい」と述べている。米国は、イラン戦争では軍事基地の使用をめぐり、スペインとイタリアの両国から拒否されるなどの抵抗に遭ってきた。

明確な点は、欧州の米軍基地はドイツにとってだけでなく、米国にとっても非常に重要だということだ。中でも軍事的に最も重要なのは、ドイツ・ラインラント=プファルツ州のラムシュタイン空軍基地で、ここは米国の欧州および中東における空軍拠点だ。米国最大の海外軍事病院はラインラント=プファルツ州のラントシュトゥールにあり、米国最大の海外軍事訓練場はバイエルン州グラーフェンヴェーア近郊にある、といった具合だ。

なお、国防専門家のニコ・ランゲ氏は、「部隊の再配置には多額の費用がかかるため、トランプ大統領が実際に実行に移す可能性は低い」と考えている。「2020年には、トランプはすでにドイツから1万1900人の米兵を撤退させる計画を発表していた。これは実現しなかった。その理由の一つは、議会が必要な資金を提供しなかったことと、撤退には他の分野への莫大な投資が必要だったからだ」という。

独週刊誌シュピーゲルは30日電子版で、「ワシントンからの新たなシグナルにもかかわらず、ドイツ政府は米軍の大幅な撤退はあり得ないと考えている。ドイツ側は米軍の駐留の重要性を強調し、欧州の責任強化を訴えた」と報じている。オーストリア代表紙プレッセは「ドイツからの米軍撤退はどれほど現実的なのか?」と問いかけ、米軍の撤退は自らの首を絞める行為になると受け取っている。いずれにしても、トランプ大統領の独駐留米軍削減発言に対し、ドイツ側は冷静な対応の姿勢を崩していないが、それなりの理由はあるわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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