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この記事では、財産所得のうちその他の投資所得について国際比較をご紹介します。
1. その他の投資所得とは?
国民経済計算(SNA)では、付加価値(GDP)の生産から、財産所得を加えた総所得、再分配、消費、投資と私たちの経済活動が網羅的に整理され、統計値として集計されています。

家計が受け取ったGDPの分配に、財産所得の受払いを足し引きしたのが、家計の総所得と言える第1次所得バランスです。

図1 第1次所得の配分勘定 家計 日本
国民経済計算より
日本は財産所得の純受取が30兆円前後あり、総所得が嵩上げされている状況です。
このうち、家計の財産所得に着目すると、次のような推移となっています。

図2 財産所得 日本 家計
国民経済計算より
日本の財産所得は大きく、利子、配当(企業の分配所得)、その他の投資所得、賃貸料に分けられます。
このうち、利子、配当については以前の記事でご紹介しましたので、今回はその他の投資所得に着目してみます。

図3 財産所得 その他の投資所得 家計
国民経済計算より
その他の投資所得は、保険契約者に帰属する投資所得、年金受給権に係る投資所得、投資信託投資者に帰属する投資所得の3つに分けられます。
保険契約者に帰属する投資所得も年金受給権に係る投資所得もかつての水準よりは目減りしていて、その他の投資所得全体としても減少している事が確認できます。
それぞれの項目の意味は、次の通りです。
(内閣府の資料:2008SNA に対応した我が国 国民経済計算についてより抜粋)
生命保険(及び年金保険)や非生命保険(及び定型保証)の保険契約者から受託された資産である保険技術準備金からの投資により得られる所得及び保険契約者配当が含まれる
雇用関係をベースとする退職後所得保障(企業年金等)について、制度を運営する年金基金(金融機関)に対して、受給者たる雇用者(家計)が保有する年金受給権に関する投資所得
投資信託の留保利益分を指す。現実には投資者に配分されないものの、投資者に帰属する所得
これらはいずれも制度を運営する組織に留保される分で、家計に実際には支払われたわけではないのですが、一旦支払われ再投資したという扱い(迂回処理)となります。
雇用者報酬における雇主の社会負担と同様に、再分配の際に家計から支払うと見做すためにいったん留保される分と考えれば良いようです。
この分が再分配の際の家計の支払や受取に影響してくることになると思いますので、再分配の国際比較の際に注目していきましょう。
2. 1人あたりの推移
ここからは、家計の受け取る財産所得のうち、その他の投資所得について国際比較していきましょう。
まずは、人口1人あたりのドル換算値からです。

図4 財産所得 その他の投資所得 家計 1人あたり
OECD Data Explorerより
図4が家計のその他の投資所得について、人口1人あたりのドル換算値です。
イギリスが非常に高い水準で、逆にアメリカが極端に少ないのが特徴的ですね。
日本はフランスやドイツと共にその中間的な水準となっています。
金額水準としては、主要先進国の中で中程度で推移していると言えそうです。
3. 1人あたりの国際比較
つづいて、より広い範囲で最新値を国際比較してみましょう。

図5 財産所得 その他の投資所得 家計 1人あたり 2023年
OECD Data Explorerより
図5が2023年の国際比較です。
日本は661ドルで、OECD31か国中12位とやや多い方になります。
OECDの中で見てもイギリスはスイスやオランダ、スウェーデンに続いて非常に高い水準で、アメリカは下から2番目と極端に少ないようです。
国による社会システムの違いも大きく関わっていそうですね。
アメリカは利子、配当として直接受け取る事が多い一方で、イギリスは年金準備金の比率が高いなどの違いがあるようです。
4. 対GDP比の推移
続いて、各国の経済規模を表すGDPとの比率でも比較していきましょう。

図6 財産所得 その他の投資所得 家計 対GDP比
OECD Data Explorerより
図6が家計のその他の投資所得 対GDP比の推移です。
イギリスが非常に高い水準なのが確認できますが、徐々に低下している様子もわかります。
日本やフランスもかつてよりも若干低下しているようです。
5. 対GDP比の国際比較
最後に対GDP比の国際比較です。

図7 財産所得 その他の投資所得 家計 1人あたり 2023年
OECD Data Explorerより
図7が対GDP比の国際比較です。
日本は2.0%でOECD30か国中8番目と、比較的高い水準となります。
イギリスは3.8%で日本の2倍近く、アメリカはほぼゼロとなります。
6. 家計のその他の投資所得の特徴
この記事では、家計の財産所得のうちその他の投資所得についてご紹介しました。
日本のその他の投資所得は、かつての水準よりも目減りしていますが、先進国の中でもやや多い水準となっています。
ただし、これまで見てきたように利子の純受取や配当(企業の分配所得)はかなり少ない水準ですので、財産所得全体の純受取としては先進国の中でも中~低水準となります。

図8 財産所得 正味 対GDP比 家計 2023年
OECD Data Explorerより
家計の最終的な所得は、雇用者所得(給与)、事業所得、財産所得、再分配(給付-負担)となります。
日本は先進国の中で雇用者所得、事業所得、再分配が少なく、財産所得もそれほど多くない国ということになりそうです。
日本はストックは多いけどフローが少ない特徴があります。財産所得は特にストックに連動する所得水準のはずですが、それでも先進国の中ではそれほど多くありません。
やはり、付加価値(稼ぎ)が増え、労働者への分配となる雇用者所得(雇用者報酬)が増えていくのが、最も重要な方向性のように思います。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2026年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。







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