米中首脳会談が北京で行われ、トランプ米大統領は米中関係を「私はG2と呼ぶ」(二大国が主導する世界秩序という意味)といい、習近平国家主席は「建設的な戦略的安定関係の構築を確認した」と、説明しました。
国際政治学者で地政学的リスクの分析者で知られるイアン・ブレマー氏はリーダー不在の「Gゼロ」をずっと提唱してきました。どうでしょうか。今回の首脳会談は米中による世界秩序を「G2体制」をで仕切り、両国間では決定的な対立を回避するとの認識で一致したのだと思います。米中ともにそれぞれ覇権を持ち、それを認めあう。
イラン戦争・ホルムズ海峡の封鎖を招いたようなトランプ大統領の暴走を止めるには、中国というライバルの存在が必要なのだと考えます。習近平氏についても、米国の存在が強硬な台湾政策になるのだと思います。
「G2では世界の安定を図れない」(読売)、「米中で都合のよいように世界を取り仕切ってよいということではない」(日経)、「米中融和の具体的なビジョンは見えてこない」(朝日)と、各紙は指摘しています。そうではなく「G2体制が双方の歯止めになる」という視点を持ってほしい。

2026年5月14日米中首脳会談 ホワイトハウスXより
米中とも単独の覇権はありえない
米国がイラン戦争で消耗しているのは「米国の覇権」が衰退期に入った象徴です。追い上げる中国も少子化や経済停滞などで世界覇権を握る前に下降線に入るとの見方が多い。強いて言うならば「米国単独の覇権」でも「中国単独の覇権」は無理で、「G2覇権」に時代に入り、両国は競争しつつ、決定的な対立は避け、自らの利益は図るということです。
トランプ政治・外交は思い付き、その場しのぎ、朝令暮改、TACO(すぐに撤回、方向転換)の連続で、「精神異常の兆候が見られる」との指摘もなされています。それがどうでしょうか。ハイテク製品に不可欠なレアアース(希土類)の輸出規制で中国に反撃されると、「これは戦えない相手」と悟り、対中強硬派のトランプ氏にしては、今回の対中外交はかなり冷静で戦略的、合理的で「あれっ、同じトランプ氏なのか」と思いました。
小国には高圧的な態度をとるダブルスタンダード
その一方で日本を含む西側同盟国、自ら主導してきた国際秩序・機関に対しては、今後も小国や弱みを持つ国に対しては、トランプ氏は無謀、傍若無人、一方的な姿勢で臨んでくる。日本政府は「頭越しの米中接近を警戒」しています。
高市首相は米中首脳会談の内容について電話会談(15分)で「かなり詳細な報告を受けた」といっています。たった15分で詳細な説明はできません。それどころか、日中が緊張関係にあったほが「米国は頼られ、巨額の米国製の武器、兵器を日本に売れる」とトランプ氏は計算しているはずです。
台湾に米国は過去最大規模の総額111億㌦の武器売却を決めています。トランプ氏は台湾についても「中国と緊張関係があったほうが米国の利益になる」と、考えていることでしょう。高市首相は「台湾有事は日本有事」と発言し対中関係を悪化させました。ディール中心のトランプ氏外交をみると、台湾有事や日本有事に際し、米軍の出動を期待すべきではないと考えるべきなのです。高市氏は自らの首を絞めるような外交はやめるできです。
ホルムズ海峡については「封鎖を解き、世界のエネルギー流通を正常化させる必要で一致した」といいます。米中首脳会談における影の参加者の一人はイランでした。米政府は「イランの核兵器保有を認めずで合意した」と発表しています。これもどうなんでしょうか。
イランの核開発を断念はイスラエルの侵略を招く
米国はこれまで、核兵器を放棄したリビア、大量破壊兵器を隠し持っていると称してイラクを攻撃し体制を崩壊させました。核を放棄したウクライナはロシアの侵略を受けました。そうしたことをみているイランは「核開発を断念すれば、米国、イスラエルの間違いなく侵略を受ける」と信じていますから、断念するはずはありません。
米国は消耗戦に入り、「トランプ氏は停戦、休戦にしたくてしょうがないのに、退くに退けないと」の解説が目につきます。イスラエルなどに挑発され、イラン戦争を仕掛けたことは失敗だったと、考えているはずです。そこを中国にみられている。
とにかく「米中は融和、日本は対米従属、日中は対立」という構図は歪んでいます。対米従属なら日中融和があっていいはずです。そうはならない。恐らくトランプ氏は「日本を米国に従属させておくには、日中関係が対立していたほうが米国を頼ってくる」と考えている。少なくとも日中関係を自ら悪化させないとの外交感覚が高市氏には必要です。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年5月16日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。







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