日立買収で弱くなる?ノジマ社長M&Aの不可解

株式会社ノジマ公式サイトより

ノジマの経営者 野島廣司氏は不可解だ。過去のM&A対象には、企業向け研修、動物向けの医療品、アニメの衛星放送まで含まれる。ノジマとどう関係するのだろうか?

M&Aには鉄則がある。「不要なピースを買っても意味はない」。70社近くのM&Aを成功させてきたニデックの永守氏はこう断ずる。どんな企業グループにしたいのか「ジグソーパズルでいうなら完成図が頭の中にないといけない」という。

一方、野島氏の完成図は見えにくい。日経の取材で問われても「描いてる構図をうまく説明しろと言われても、僕自身も説明しづらい」とはぐらかす。VAIO買収時も、シナジーを見出すのはこれから、という状態だった。

当然、うまくいかないこともある。例えば、スルガ銀行との提携だ。実現したのは、スルガ銀行の郵送物に「ノジマのチラシ」を入れることぐらい。ノジマは、提携からわずか2年で全株を売却している。家電と金融の異業種連携は手痛い失敗となった。

だが、失敗には寛容だ。自社サイトで「失敗はいくら起こしても構わない」と語り、自著のタイトルは『失敗のすすめ』。著書では「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」と述べている。

今回の日立(日立GLS)の買収はどうだろう。シナジーはありそうだ。製造・販売・アフターサービスの一貫体制を構築できるうえ、店頭で得た顧客ニーズを製品開発にフィードバックできる。ノジマを製造小売化し、日立をプライベートブランド化できる。これは大きなメリットだ。

だが、ノジマのプライベートブランドを、他の量販店が売るだろうか? VAIOの買収時でさえ販売規模は縮小された。日立はVAIOの比ではない。ノジマ色が濃くなれば、ヤマダ、ヨドバシ・ビックカメラら競合が、日立を売らない・減らす可能性は高くなる。

さらに深刻なのはノジマが「強み」を喪失することだ。ノジマは、2000年代以降、中立的な視点で商品を提案するため、メーカー販売員の受け入れをやめ、自社スタッフだけの接客に切り替えた。求人サイトには以下のような説明がある。

「家電メーカーから派遣された販売員は、当然自社の家電をお勧めします。しかし、それにより選択の幅が狭まり、お客様は納得するお買い物ができなくなる…といった問題が起こるのです」

“お客様を笑顔にする接客”で業績好調。ノジマの全て―。 |転職ならdoda(デューダ)

「ノジマの販売員は、当然日立の家電をお勧めします」。そんなことにならないか。中立を維持できるか。強みがなくなってしまうのではないか。日立の買収はそんなジレンマを抱えている。

では、なぜ日立を買収したのか。野島氏のM&Aを

「投資ファンドのようになりたいのかもしれない」

ノジマ社長「M&Aに今後5年で5000億円」 ファンド組成になお関心|日本経済新聞

とみるノジマ幹部がいる。実際、ノジマは22年12月に投資ファンド事業に参入したことがある(3か月で撤退)。日本プライベート・エクイティ協会賛助会員でもある。会員の大半を金融やコンサルティング企業が占める中、ノジマの存在は異彩を放つ。もし、ノジマが家電量販店を脱皮し、投資ファンド化を目指すとしたら、不可解に思えたM&Aも、投資ポートフォリオの色合いを帯びてくる。

「今後5年で5000億円を買収に充てられる」と野島氏が述べたのはおよそ8か月前。野島氏の不可解が明解になるのは、あと4年と少し先だ。

【参考】
『永守流経営とお金の原則』 永守重信 著/日経BP

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