国債の価格が下落(利回りは上昇)しています。これは日本に限らず世界共通で見られる現象です。この現象はチャートを見ればイラン戦争勃発の2月末から始まっており、現在も引き続き利回り上昇トレンドが続きます。
原因は戦争による原油価格の上昇が最大の引き金ですが、それ以外にAI関連の爆発的需要に対する物価高の演出もあります。細かく言えば大国間の競争で例えばレアアースメタルが手に入りにくくなることも影響しているでしょう。アメリカ、カナダなどでは移民数や外国からの一時的労働者の流入を調整していることで国内人件費の上昇と共に労働の質の低下による効率化の低下もあるでしょう。
日本に関して言えば緩和的財政方針が国債に対する価値を遺棄しやすくし、利回りが上昇する理由となります。これは円安問題ともリンクしています。事実、長期国債で最も基準的な指標である日本の10年物国債は2.80%程度まで上昇しており、ほぼ30年ぶりの水準となっています。アメリカでも4.63%程度と1年ぶりの水準であります。

ベッセント米財務長官による表敬を受ける高市首相 2026年5月12日 首相官邸HPより
先日ベッセント財務長官が日本を訪れましたが、噂ではベッセント氏が片山氏に「アメリカ国債を売らないでほしい」と言ったとも聞こえてきます。まぁそう言ったとしてもおかしくはないでしょう。世界中で国家の財政が悪化し、その歯止めが全く立たなくても「そんなのへっちゃらさ」と言い続けてきたのは政府紙幣、特にアメリカドルは基軸通貨という自負があった為です。しかし、私は再三言っているようにそれは昨日まで話で今後は別の代替通貨があってもおかしくないと考えています。それもそんなに遠くない未来に、です。技術的には出来るはずですが、政治的にそれを許さず抵抗しているのでしょう。そうするとかつての英国ポンド大暴落の悪夢が再び訪れないとは限らないのです。
通貨と国債の番人である各国政府は世界で巨大化かつ肥大化した投資家を相手に戦えるか、これが私のたった一言でいう現在の不信感であります。(答えは戦えない、と考えています。)
1992年のジョージ ソロス氏の英国ポンド売り仕掛け事件は英国政府がたった一人の男に負かされたケースとして歴史に残りますが、あの時、ソロス氏が確信を持ったのは英国の高金利と通貨防衛は国内経済の犠牲の上に成り立っており、これは維持できないと判断したからです。ではこれを現在のアメリカに当てはめたらどうなるか、であります。まだトランプ氏が暴れる余地のある今は良いのですが、中間選挙で仮に負けた場合、2年間のレームダックになるわけでその時のアメリカの落ち込みの方が怖い気もします。
もう1つ気になるのは「高金利の定着」であります。適度な物価の上昇は実は経済にはプラスなのは周知の事実であり、それ故に日本の株価も驚くような快進撃を遂げたわけです。これは株価が将来を買う先行指標的性格であるためです。一方、実際の労働者は物価高で消費を抑えるなど対策を打ち始め、それが企業業績に反映されるには半年とか一年かかる時もあります。また株価が躍進している企業群の多くは海外で儲けるか、政府支出によって業績が向上しているところが多く、消費関連企業は今一つと言うところも多いと思います。
実際に高金利が定着した場合、金持ちの老人は預貯金の利息が増えるのでメリットはありますが、住宅ローンを抱えている層や子育て世代にはダイレクトにインパクトがあり、これが長期化するとボディブローとなり内向きの経済になりやすくなります。この高金利の定着化が今後、世界中で起きると指摘する声もあります。事実、アメリカは期待された利下げではなく、利上げ方向でトランプ氏も一時的に利下げの主張は取り下げました。カナダも欧州も利上げバイアスです。
原油の行方ですが、価格そのものよりも原油関連商品がないということが問題であり、昨年のコメ騒動とそっくり同じ現象が起きつつあります。一部のコメンテーターからは関連企業の倒産続出という意見もありますが、それは過剰だとしても市場の正常化までに時間がかかり忍耐の時期にあるとみています。もちろんこれはアジア スペシャルの現象で北米はモノがないといった影響はありません。
いずれにせよ、AIで株価バブルが起きている一方で経済そのものは相当のクラックが入っている、そんな様相が見て取れます。以前から申し上げているように踊りすぎには要注意であります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年5月21日の記事より転載させていただきました。







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