メディアの憂さ晴らし:ニデック 永守氏の取り扱い方に見る器量の小ささ

バブル経済が弾けて何年かたった頃、メディアがバブル経済の犯人捜しを始めます。そして不動産と海外進出と事業多角化を悪の張本人と決め、当時はまだ発信者が限られていたメディアという一種の「公器」を通じて日本を再洗脳します。日本の銀行が立ち直りに時間がかかったのはこの洗脳が銀行融資の審査において「散らかり放題のおもちゃ箱をきちんと片付けて本業一本に絞りなさい」という上から目線の強制力をもって企業の想像力やしなやかさを排除してしまったことはあるでしょう。

日本という国は昔からある行為が受け入れられなくなると徹底的に追い込み、反省を促す傾向が非常に強いと思います。第二次大戦終了後、あれだけの軍国国家だった日本が敗戦を機に、突如何ら抵抗することなく、GHQを受け入れ、アメリカ主導の再建に一同団結して180度転換し、過去と断絶をしました。当時GHQに派遣された人から漏れ聞こえてきたのは「日本に行くのは怖かった。だけど日本人は俺たちをむしろ歓迎しているそぶりすらあった」といった声であり、それら回顧録を読むにつけ日本は不思議な一面を持っているとも言えます。

昨年、オルツという人工知能スタートアップ企業が不正会計で倒産しました。ご記憶にある方も多いでしょう。問題はその後で、日経が執拗に同社の不正問題について取り上げたのです。そこまでやる編集者の意図がどこにあったのだろうと感じさせるほどでした。オルツ社がまだ表向きブイブイ言わせている頃、日経は同社をめちゃ注目していたのです。記事にもしばしば取り上げ、有力な新興企業というイメージを植え付けてきました。それ故にその変わり身の早さたるや「恥も外聞もなし」というところでした。

このところ気になるのがニデックの創業者、永守重信氏を取り扱う記事の多さです。特に2週間ぐらい前に日経ビジネスは特集まで組んだほどですが、30年近く毎週全記事を読破している私としてはこの記事の質は悪かったと申し上げておきます。つまり彼を否定することだけに着目し、そこまでコトが大きくなった本質問題、それはニデックに限らず、多くの企業で発生した共通問題を深堀していないからです。

永守会長(当時) ニデックHPより

永守氏を持ち上げる一翼を担いだのはメディアであり、日経であったのです。「孫、柳井、永守の日本の三大創業者」と謡いあげ、ソフトバンクの社外取締役を柳井、永守両氏が勤めた時期もありました。それなのに柳井氏が最近、永守氏のことをぼろくそに評価する発言をしているのを目にし、柳井氏も残念な方だなと思っています。完璧な人間などいないのです。時代の変化に鈍感で、内面的意志の強さゆえに外的変化を受け入れられなかったのが永守氏の敗因ですが、ほぼ同時代に共に切磋琢磨した人に浴びせる言葉なのかと考えると柳井氏も小さい器量だと思います。

かつての東芝問題や東電の原発問題、無数の企業による謝罪会見を含め、日本は報じられた謝罪を見ることですっきりする文化が醸成されてしまっています。そうではなく、なぜ忖度する文化が生じたのか、そこを掘らなければこの謝罪文化は永久に無くならないのです。メディアは表層の出来事だけを追い、より重要な本質は問わないならライトノベルのレベルなのか、と私は問いたいのです。

オールドメディア、ニューメディアという切り口で論じる評論家もいますが、ハッキリってそんなのはどちらでもよい話で目くそ鼻くその話です。メディア全般でみると私はカナダやアメリカの長文記事を読むようになってから日本と論説の捉え方が違うと考えています。日本は事実関係をいかに早く短く要点だけを報道できるかに賭けています。リードだけ読んでわかった気にさせるのが強い傾向です。それは経営者を含め、記事を読む時間を効率化目的で削ってしまったことで広く国民は表層の知識だけで分かった気にさせてしまったのではないかと思うのです。

一方で記者会見になると時として100人以上の記者が集まるのですが、バカバカしいと思います。そんなのは5人か10人いてあとマスコミ内配信をして共有すればよいのです。そうではなく、その事実から背景を考え、読者に何を訴えるのか、ここをしっかりと取材しないとメディアもAIに取って代われる時代が来るかもしれません。

では今日はこのぐらい


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年5月26日の記事より転載させていただきました。

アバター画像
会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント