ソニー・ロリンズ死去:代表的なアルバムを聞く

ジャズ史に巨大な足跡を残したテナーサックス奏者、ソニー・ロリンズが死去しました。95歳でした。ロリンズは「サキソフォン・コロッサス」の異名で知られ、ビバップ以後のモダンジャズを代表する巨人の一人でした。

ロリンズの音楽人生は、単なる名演奏家の歩みではありません。マイルス・デイヴィス、セロニアス・モンク、クリフォード・ブラウン、マックス・ローチらと共演しながら、ジャズの語法そのものを押し広げていきました。太く、朗々とした音色、自在なリズム感、そして即興の中で物語を組み立てる能力は、後続のサックス奏者に計り知れない影響を与えました。主なアルバムを紹介しましょう。

Saxophone Colossus
Sonny Rollins Quartet
Hallmark
★★★★★

ロリンズを聴くなら避けて通れないのが、1956年録音の『Saxophone Colossus』です。タイトルそのものが、後にロリンズの代名詞になりました。代表曲「St. Thomas」を収録し、カリプソの明るさとハードバップの緊張感が同居する名盤です。ロリンズの豪快な音色、メロディの展開力、リズムの跳躍感を知るには、最初の1枚として最適でしょう。

Way Out West
Rollins, Sonny
Ojc
★★★★★

次に挙げたいのが1957年の『Way Out West』です。西部劇を思わせるジャケットでも有名ですが、内容は決して企画物にとどまりません。ベースとドラムだけを従えたピアノレス・トリオで、ロリンズのサックスがむき出しになります。和声楽器がないぶん、彼の即興の構築力がより鮮明に浮かび上がります。ロリンズの自由さとユーモアを味わうには格好の作品です。

Night at the Village Vanguard
Rollins, Sonny
Blue Note Records
★★★★★

ライブ盤では『A Night at the Village Vanguard』を外せません。ロリンズはスタジオ録音でも圧倒的ですが、本領はライブでの長い即興にありました。テーマを吹き、そこから音を崩し、再構成し、また新しいメロディを生み出していきます。その過程を聴くと、ジャズの即興が単なる気分や技巧ではなく、瞬間ごとの作曲であることがわかります。

Bridge
Sonny Rollins
Hallmark
★★★★☆

もう一つの重要作が1962年の『The Bridge』です。ロリンズはオーネット・コールマンのフリージャズに衝撃を受け、1959年から一時的に表舞台を離れ、ニューヨークのウィリアムズバーグ橋で練習を重ねたという逸話で知られます。その沈黙の後に発表された復帰作がこのアルバムでした。ギタリストのジム・ホールを迎えた編成は、従来のハードバップとは少し違う透明感を持っています。

ロリンズの魅力は、単に「名盤が多い」ということではありません。彼はキャリアの途中で何度も立ち止まり、自分の音楽を問い直しました。成功の頂点にありながら演奏活動を休止し、修行のようにサックスと向き合いました。その姿勢が、彼を単なる巨匠ではなく、ジャズという芸術の求道者にしていたのです。

訃報に接してあらためてロリンズを聴くなら、まずは『Saxophone Colossus』、次に『Way Out West』、ライブの迫力を知るなら『A Night at the Village Vanguard』、そして精神的な転機を味わうなら『The Bridge』がよいでしょう。

ソニー・ロリンズの死は、モダンジャズ黄金期の終幕を象徴する出来事です。しかし、その音は古びません。むしろAIが音楽を量産する時代だからこそ、ロリンズの即興には、人間がその場で考え、迷い、跳躍し、音で世界を作り直す力があることを思い出させられます。ジャズは録音の中で、今も生きています。

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