トランプ氏に似て道理を踏みにじる高市首相を民間はもう信じていない

中村 仁

首相官邸HPより

正論とは、道理にかなった正しい主張や議論のことで、客観的な事実や論理に基づいて筋の通った考え方をすることを意味します。高市首相の政策、言動を見ていると、正論とは逆のことばかりやっているようです。民間はそれを疑い、自衛に走り始めています。

トランプ米大統領が仕掛けたことから始まったホルムズ海峡封鎖は、いつまで続くか予測不可能です。高市首相は「原油やナフサ(粗製ガソリン)は年越しまで手当てできているから、節約を要請しない」と言い続けています。原油高騰、原油不足に対応して、エネルギーの節約、節減をしている国は多いのに、日本だけは逆の方向を向いています。

民間企業は、高市首相やその指示を受けている政府の言動をもう信じていません。肉や刺身に使うプラスチック容器やトレーの蓋がラップ包装になり、惣菜売り場では焼き鳥や天ぷらは耐油性の紙包装に変わり始めました。

トイレットペーパー騒動に似たゴミ袋不足

自治体指定のビニール製ゴミ回収袋がナフサの供給不安からくる品不足により、指定外の袋の使用に切り替えたりする動きが、生活の隅々にまで及んでいます。輸入品か輸入部品を必要とするユニットバスは、一部の素材、部品が欠品すれば完成できず、納入がいつになるか分からないようです。

今思えば、4月前半にTOTO、リクシルがユニットバスの受注停止を発表し、その直後に受注停止を撤回しました。恐らく高市首相の指示で担当官庁が「そんな発表をしたら危機感が広がるから撤回せよ」と叱りつけたのでしょう。それには従ったものの、企業は「納入時期は未定」で対応し、政府の指示はなんの役にも立っていないのです。

ホルムズ海峡の封鎖から経済、産業、企業、国民生活に影響が連鎖する速さ、その広がりは第1次、第2次オイルショック(1970年代)をはるかにしのぐでしょう。高市首相はそうした供給網断絶の連鎖、品不足、値上がりの連鎖に思いが至らず、日本国内の目先のことしか見えていないのでしょう。

身内からもついにガソリン価格抑制批判

多少の救いは、自民党の鈴木幹事長、萩生田幹事長代理が「ガソリン価格を1リットル170円にしておく政策は、財政負担(月5,000億円)が大きすぎる。見直しが必要である」と発言し、危機感が薄い高市首相にブレーキをかけたことです。「節約は要請しない、価格高騰は政府が抑える」という高市流では、長期化するであろう原油不足、価格高騰に対処できるはずはありません。

法的な裏付けのない節約要請は、正直者がバカを見る(従わなかった者が得をする)恐れがあります。そこで価格メカニズム(価格上昇)を生かし、消費者が等しく痛みを分かち合う。それによって需要を削減し、供給不足をカバーするというのが正論なのです。高市首相はそれが分からない。

高市首相はナフサ由来の石油製品について「流通過程での目詰まり解消に取り組むよう」指示しました。企業が生産量に応じた分以上の在庫を確保することが「目詰まり」を生んでいるという理解でしょう。これもおかしい。企業が100を生産する場合、素材在庫をぎりぎりの100相当分ではなく、130とか150相当分を確保していないと、生産工程に入れない。それらを指して「必要以上の在庫→目詰まり」と判断するのは誤りでしょう。

日銀の利上げを阻止してはならない

先日、高市首相と植田日銀総裁が会談し、「政府・日銀の共同声明(2013年)を踏まえて日銀は適切に対処してほしい」と首相は述べました。声明には「デフレ脱却と物価安定の下で持続的な成長の実現に向け、政府、日銀は政策連携をする」となっています。

もう4年以上、消費者物価が3%以上の上昇を続けているのですから、「もはやデフレではない」状況です。イラン戦争で物価上昇がいつまで、どのレベルまで行くのか予想できません。日銀の政策金利(0.75%)を引き上げるべき時です。植田総裁もそうした思いでしょう。

「適切な対処」とは、利上げでしょう。長期金利はすでに2.8%まで上がっています。高市氏の政治的思惑にとっての「適切な対処」ではなく、インフレ抑制にとっての「適切な対処」が正論なのです。日銀の中立性を侵してはならないのです。

高市氏の理解不能な発言に「日本はこれからレアアースに困らない」もあります。南鳥島の海底に眠るレアアースのことを指したのです。専門家からは「素人受けする発言にすぎない」との批判が寄せられています。

海底6,000メートルから引き上げる費用、精錬技術の開発、環境汚染対策などを考えると、採算に合う商業化ができるのか、何年かかるのか、中国と対抗できるのかなどの問題があります。「日本はもうレアアースには困らない」とは子供じみた発言です。


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年5月24日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。

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