ドイツの衰退(前篇)

Nikada/iStock

こんにちは、自由主義研究所の藤丸です。

今回は、ドイツ人のリバタリアンで、歴史学者かつ社会学者のライナー・ツィテルマン博士からの依頼で、彼の記事「ドイツの衰退」を翻訳・紹介したいと思います。

ライナー・ツィテルマン博士

元記事は、全4回であり、今回はその1回と2回をまとめて「前篇」として紹介します。

ドイツの話ですが、官僚制度の問題点や規制の多さなど、日本にも類似する点が多いと思います。

 

1. 官僚制は、いかにドイツを締めつけているか

7年間にわたり、ドイツの経済生産は停滞しており、その原因の一つは、ドイツにはびこる「官僚制」です。

起業家や市民が官僚制について不満を述べない国はほとんどありませんが、ドイツではそれが新たな次元に達しています。

ドイツの著名なifo研究所は、過剰な官僚制のために、ドイツが毎年1,460億ユーロの経済生産を失っていると推定しています。これは国内総生産の約4パーセントに相当します。企業は、無数の官僚的な規制を遵守するだけのために、何十万人もの従業員を雇わなければなりません。2022年以降だけで32万5,000人です。

2010年、ドイツの連邦法は約2万5,000ページで構成されていましたが、今日ではほぼ4万ページに達しています。毎年、さらに1,000ページが追加されています。そして、これには数多くのEU規制は含まれていません。

これらの数字は、経済学者ダニエル・シュテルターの優れた著書『Absturz. So retten wir Deutschland』(『崩落――こうして私たちはドイツを救う』)に見いだせます。同書は現在、ドイツで大きな議論を呼んでいます。

2. 官僚制を削減する約束——実際に起きているのはその反対

何十年にもわたり、ドイツのあらゆる政府は、数え切れないほどの演説の中で、「官僚制を削減すること」がいかに重要であるかを宣言してきました。

しかし、まさにその反対のことが起こっています。

欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエンは、EUにおける「前例のない」規制削減を約束しましたが、実際に起こったのはその反対でした。2025年、欧州委員会は1,456件の法的行為を開始しました。これは2010年以来、どの年よりも多い数です。

経済学者シュテルターは次のように書いています。「サプライチェーン法、反森林破壊規則、賃金透明性要件、反マネーロンダリング措置、産業排出規則、土壌保護法、包装規制、エコデザイン指令、その他多くの規制の中から、経済に対する最も深刻な負担を特定することは困難です」。

EUタクソノミー規則は、おそらく最大の負担となるでしょう。政治家が、どの融資が「良い」ものであり、どの融資が「悪い」ものであるかを決定するのです。私はこれを中央計画的思考と表現します。

市場経済と計画経済の違いは何でしょうか。

市場経済では、何が生産されるべきかを、何百万もの起業家と消費者が決定します。

計画経済では、政治家が決定します。私有財産はますます中身をくり抜かれています。最終的には、それは空っぽの殻になります。なぜなら、国家が「所有者」が「自分の」財産で何をしてよいか、何をしなければならないか、何をしてはならないかを決定するからです。

3. なぜ官僚制削減は進まないのか

シュテルターによれば、官僚制を削減することは、実際にはそれほど難しいことではありません。

「本質的な措置には新たな法律は必要ありません。過去10年から20年の間に成立した法律を廃止すればよいだけです。そのほうが、新しい法律を起草し調整するよりもはるかに速いのです」。

では、なぜ官僚制削減は進まないのでしょうか。

そして、なぜ官僚制は、ドイツでとりわけ深刻なのでしょうか。

ドイツにおける官僚的な規制の大半は、法律や規則へと鋳込まれたイデオロギーです。それは「消費者保護」「労働者保護」「環境保護」「青少年保護」などの魅力的な名札を付けて提示されます。しかし、その核心にあるのは、左翼的および緑の党系のイデオロギーであり、それが最終的に立法へと変えられているのです。

4. 3,200の社会福祉条項

人工知能と相当な科学的努力を用いても、ifo研究所は2025年に、すべての社会給付とその効果について完全な一覧表を作成することができませんでした。研究者たちは500を超える社会福祉プログラムを記録しましたが、多くのプログラムについて、その目的、対象集団、費用を数量化することはできないと認めざるを得ませんでした。

社会給付は、3,200を超える条項と多数の特別規定を含む12の社会法典に分散しています。連邦政府だけでも300を超える異なるプログラムを作り出しており、その一部は重複しています。ドイツでは現在、公共部門の全従業員の17パーセント超が社会保障の分野で働いています。社会保険機関だけで36万4,000人を雇用し、250億ユーロの行政費用を発生させています。

ドイツ人には、一つの肯定的な特徴と一つの否定的な特徴があります。

肯定的な特徴は、彼らの徹底性です。

否定的な特徴は、急進的なイデオロギー的思考への親和性です。

ドイツは、気候の黙示録から世界を救い、世界中の貧困を根絶しようとしています。後者は、大量移民と開発援助を通じて追求されています。世界でドイツほど多くを開発援助に支出している国はありません(291億ユーロ)。

イデオロギー的思考が、とりわけ徹底的かつ完全に実行されるとき、その結果は、ドイツが苦しんでいる、息の詰まるような法律と規制の洪水となるのです。

5. 国家は拡大し続ける

これは変わるのでしょうか。

官僚制の削減は、その根底にある原因が取り除かれない限り成功しないでしょう。その原因とは、左翼的および緑の党系のイデオロギーです。

フリードリヒ・メルツ首相は選挙前に「左派は終わった」と約束しましたが、私たちは毎日、それが事実ではないことを目にしています。

国家は拡大し続けています。現在、ドイツの公共部門で働く人は500万人を超えており、労働人口の11パーセントを占めています。

2012年以降、公務員の数は58万4,000人、すなわち14パーセント増加しました。社会保険機関の従業員に加え、公的に支配された団体や、ドイツ鉄道のような私法上の会社の従業員も含めるなら、その状況はさらに劇的になります。2012年以降、さらに94万3,000人の従業員が追加され、総数は670万人に達しています。

6. イノベーションのリーダーから教育の衰退へ――深刻化するドイツの危機

ユニセフの委託による研究によれば、ドイツの15歳の生徒のうち、読解と数学において「最低限の能力水準」をなお有しているのは、わずか60パーセントです。

ドイツの日刊紙『ディ・ヴェルト』は、次のように論評しました。

「簡単に言えば、これは40パーセントがほとんど文盲であり、基本的な算術演算を習得していないことを意味します。これにより、われわれは調査対象となった41カ国中34位に位置しています。これは大惨事です。」

7. 数学との戦い

同時に、同紙が報じているように、学力基準は継続的に引き下げられています。最近、ドイツのいくつかの州は、小学校の数学の授業から筆算による割り算と小数計算を削除しました。その理由の一つとして挙げられたのは、生徒が数を割る際にあまりにも多くの間違いをする、ということでした。

批判に応えて、ニーダーザクセン州の教育大臣ユリア・ヴィリー・ハンブルクは、数学教育を簡素化することは「科学的根拠に基づく数学教育のさらなる発展」を意味する、という珍妙な発言をしました。

同大臣は緑の党に所属しています。緑の党の支持者たちは、数学を苦手としていることでよく知られています。これは、アレンスバッハ世論調査研究所が行った調査の結果の一つでした。この調査では、16歳以上の代表的なドイツ人1,118人に対し、「学校で得意だった科目は何でしたか、あなたの最も得意な科目は何でしたか」と質問しました。また、どの科目で成績が悪かったかも尋ねられました。

調査結果の一つは、本人たちの自己申告によれば、緑の党の有権者は学校で英語と社会科が特に得意だった、というものでした。彼らは歴史で特に成績が悪く、また数学においても、左翼党の有権者を除くすべての他党の有権者よりも著しく悪い成績でした。左翼党の有権者は、数学において群を抜いて最も悪い成績でした。

8. 学校資格または職業資格を持たない人々がますます増えている

ドイツの経済生産は7年間にわたり停滞しており、その原因の一つは教育の惨事です。

ダニエル・シュテルターは、著書『Absturz. So retten wir Deutschland』(『崩落――こうして私たちはドイツを救う』)の中で、次のように書いています。

「日本では、学生の32パーセントが数学の達成度において最高水準に到達しているのに対し、ドイツではわずか5パーセントにすぎません。その結果は後に可視化されます。2023年、日本の研究者は、ドイツの同僚たちの3倍を超える特許を出願しました」。

シュテルターは、MINT Nachwuchsbarometer 2023によれば、ドイツの生徒の22パーセントが「リスクあり」に分類され、数字と算術演算についての基礎的理解をほとんど持っていなかったと報告しています。

シュテルターによれば、ドイツにおける学校中退者の数は歴史的高水準に達しています。ルーマニア、スペイン、ハンガリーに次いで、ドイツは欧州連合において4番目に高い学校中退率を有しています。

職業資格を持たない若年成人の間では、状況はさらに劇的です。職業訓練報告書2025によれば、20歳から34歳までの人々のうち286万人が職業資格を持っておらず、これはこの年齢層の19.1パーセントに相当します。さらに、職業訓練を途中で早期に放棄する見習いの割合は、2005年の10パーセントから2020年には20パーセント超へと倍増しました。

ドイツの大学における状況は、さらに悪いものです。学生の32パーセントが大学を中退しています。「ますます多くの学生が、大学での学業を成功させるための基礎的前提条件を欠いている」とシュテルターは指摘しています。

9. イノベーション:もはや上位10カ国には入らない

達成への敵意と大量移民に加え、ドイツの主要な問題の一つは教育連邦主義です。16の連邦州のそれぞれが、独自に教育政策を決定しており、全国的に統一された基準は存在しません。

これらすべては、経済に影響を及ぼしています。

2025年のグローバル・イノベーション・インデックスにおいて、ドイツは9位から11位へと順位を落とし、何年ぶりかで初めて、世界で最も革新的な経済圏の上位10位に入らなくなりました。一方、中国は初めて上位10位に入りました。

シュテルターによれば、スイスは長年にわたりこのランキングの首位に立っており、それにスウェーデンとアメリカが続いています。韓国、シンガポール、イギリス、フィンランド、オランダ、デンマークもドイツより上位に位置しています。

目立つのは、経済的自由の程度と、一国の革新力との密接な関係です。2026年の経済自由度指数では、シンガポールとスイスがランキングを主導しています。デンマーク、オランダ、スウェーデンも上位12カ国に入っており、フィンランドは13位である一方、ドイツはわずか24位にとどまっています。

経済学者シュテルターは次のように書いています。「ドイツの発明家たちは、印刷機、自動車、X線技術、MP3形式、そして世界を変えた数え切れないほどの他の技術を生み出しました。この革新力こそが、私たちの繁栄が依存している今日の主要産業の背後にあります。」

天然資源に乏しい国として、ドイツは、十分に教育を受けた革新的な人々にとりわけ依存しています。しかし、そのための基盤はもはや存在していません。ドイツはますます遅れを取っています。2022年のPISA調査は、成績の劇的な低下を記録しています。数学において、ドイツの15歳の生徒は475点でしたが、これは2018年から25点低下しています。

(後篇につづく)


編集部より:この記事は自由主義研究所のnote 2026年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は自由主義研究所のnoteをご覧ください。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント