
Claudeが、いまAIの頂点に立った。
5月29日、開発元のAnthropicは650億ドルの資金調達を発表し、評価額は9650億ドル(約150兆円規模)に達した。OpenAIの8520億ドルを抜き、未上場のAI企業として世界最高の評価額である。
少し前まで「生成AIといえばOpenAI」が常識だったことを思えば、静かな、しかし決定的な逆転だ。
知名度を押し上げたきっかけは、皮肉なものだった。今年に入り、米Axiosなどが、米軍の作戦でClaudeが情報分析に使われたと報じた。だが構図はむしろ逆で、Anthropicは暴力・兵器・監視目的の使用を利用規約で禁じ、国家の圧力に対しても「安全性のレッドラインは譲らない」と突っぱねた。その姿勢こそが、Claudeの名を世界に知らしめたのである。
そんな追い風のなか、私は4月20日に『3時間で身につくClaude活用術』を上梓した。
ありがたいことに発売即重版となり、第三者の審査を経て「日本初のClaude本」としても認定されている。
ところが、Amazonのレビューには「簡単すぎる」という声も目立つ。
正直に言えば、これは想定どおりだ。本書は、ChatGPTすらうまく使えず、AIに苦手意識を持ってしまった会社員に向けて書いた、徹底した初心者本である。すでに使いこなしている人には物足りないだろう。それでいい。
世の中には、基本がわからずに最初の一歩で立ち止まっている人が、驚くほど大勢いる。そうした方々からは、お礼の声が次々と届いている。難しい解説書はもう十分にあるのだ。
では、初心者がまず身につけるべき「基本」とは何か。派手なテクニックではない。地味な運用の知恵だ。
その代表例を、ひとつ紹介したい。「謝罪が始まったら、新しいチャットへ移る」——これである。
AIとのやり取りは、続ければ続けるほど良くなるわけではない。ある時点を境に、質が落ちていく。その兆候が、AIの「謝罪」だ。「申し訳ありません、もう一度やり直します」。こうした言葉が頻発し始めたら危険信号である。AIはこれまでのやり取りをすべて引きずるため、一度「手抜き」を許すと、その会話のなかでは自信のない対応を続けてしまう。
そんなときは、未練なく新しいチャットを立ち上げる。最初に「プロフェッショナルな編集者として振る舞ってほしい」「要約による手抜きは禁止」と役割を与えれば、AIは冒頭から作業モードに入る。これだけで、出力の質は見違える。人間関係と同じだ。合わなくなった相手とは、距離を置くのが賢明なのである。
私は自分のClaudeを「クロちゃん」と呼んでいる。精度は毎回違うし、いい加減な仕事もする。そんなときは遠慮なく叱る。だが、見限りはしない。気長に導いていく。優秀な部下でも、指示が曖昧なら成果は出ない。的確に導けば、期待以上に働いてくれる。AIも、まったく同じだ。
世界一のAI企業が生まれた今、誰もが高度な使い方を競い始めている。だが、本当に差がつくのは、こうした地味な基本を毎日続けられるかどうかだ。難しく考える必要はない。今日、メールを一通、AIと一緒に書いてみる。その小さな一歩から、すべては始まる。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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23冊目の本を出版しました。日本初のClaude実用書です。
『3時間で身につくClaude活用術』(WAVE出版)








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