「ラクする人」が出世していく理由を、ようやく理解した

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(前回:効率化に挫折する人の共通点は、だいたい一つだ

白状する。昔の自分は「ラクをする人間」が大嫌いだった。

定時で帰る同僚を横目に、「あいつ、やる気あるのか」と本気で思っていた。自分はといえば、週末も出社して資料のフォントサイズを0.5ポイント単位で調整し、メールの一文一文を3回推敲し、「ここまでやる自分はエラい」と悦に入っていた。

評価面談で上司に言われた一言がこれだ。

「君はいつも忙しそうだけど、成果が見えにくいんだよね」

あの瞬間の衝撃は、いまだに胃のあたりに残っている。

冷静になって職場を見渡してみた。たしかに2種類の人間がいる。定時に帰るのにプロジェクトは必ず期限内に仕上げる人。飲み会で「いや全然忙しくないよ」と涼しい顔をしている。

一方、毎日残業して土曜も出てきているのに、なぜかプロジェクトは遅れがち。「忙しい忙しい」が口ぐせで、顔色が常に悪い。後者は自分だ。完全に自分だった。

この差は何か。能力じゃない。経験でもない。いちばんの違いは「がんばる場所」を知っているかどうか、それだけだった。

結果を出している人間は、重要な判断や戦略を練ることに時間を集中させている。資料の見た目を整えたり、メールの言い回しを悩んだりする作業は、最短で片づけるか人に振る。ここが決定的に違う。

自分は全部を同じ熱量でやっていた。フォントの調整も、顧客への提案も、同じ真剣さで。いや、正直に言えばフォントのほうに時間をかけていた(何をやっているんだ)。

ここで一つ、はっきり言っておきたいことがある。「ラクをする」は「サボる」ではない。ムダな作業に時間を使わず、本当に価値のある仕事に集中する。それが「ラクをする」の正体だ。

メールに10分かけていたのを1分にする。浮いた9分で顧客の課題を考える。これは「ラクをしている」のか、「がんばっている」のか。答えは「賢くがんばっている」だ。でも昔の自分がこれを聞いたら、たぶん「ズルだ」と思っただろう。思考が硬直していた。

実際、資料作成2時間が30分に縮まれば、残りの1時間半で提案の中身を練れる。提案の質が上がる。成果が出る。評価される。これのどこがサボりなのか。

がんばる場所を変えただけだ。フォントの調整から、顧客の課題解決へ。単純作業から、頭を使う仕事へ。シフトしただけなのだ。

汗をかくことが目的じゃない。結果を出すことが目的だ。だとすれば、効率的な道具を使わない理由なんてどこにもない。

「ラクしやがって」と言われたら、こう返せばいい。「ええ、賢くラクしてます」と。──あの評価面談から何年も経って、ようやくこの台詞が言えるようになった。遅い。遅すぎる。でもまあ、フォントサイズを調整し続けるよりはマシだろう。たぶん。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

AIで加速する!効率化の教科書』(灰藤健吾 著 きずな出版)

<書籍評価レポート>

■ 採点結果
【基礎点】  37点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】  19点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】  19点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア 【75点/100点】
■ 評価ランク ★★★ 標準的な良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】
「小さく始める」の一貫した訴求力:効率化の第一歩として「毎日必ずやる作業を一つ見つける」という具体的な起点を示しており、読者が行動に移しやすい導線が明確に設計されている。

「がんばる場所」という再定義の巧みさ:「ラクをする=サボる」ではなく「がんばる場所をシフトする」という言い換えは、日本的な勤勉信仰に対する有効なカウンターとなっており、読者の価値観を揺さぶる仕掛けとして機能している。

【課題・改善点】
テーマの既視感:「完璧主義をやめて小さく始めよう」「ムダを省いて本質に集中しよう」という主張は、近年のビジネス書や自己啓発書で繰り返し語られてきた定番の論点であり、本書ならではの新しい視座や独自の切り口が見えにくい。

具体的方法論の不足:「60点の改善でいい」「少しの積み重ねが大きな変化を生む」といったメッセージは共感を得やすいが、では具体的にどんなツールをどう使い、どの作業をどう短縮するのかという実践面の掘り下げが浅く、読後に「で、何をすればいいのか」という疑問が残りやすい。

■ 総評
「効率化は小さく始める」「がんばる場所を選ぶ」という二本柱のメッセージは明快であり、読者に寄り添う語り口にも好感が持てる。特に、完璧主義に陥りがちなビジネスパーソンへの処方箋としては的確で、行動の第一歩を踏み出すきっかけとしての価値は十分にある。しかし、これらの主張自体は近年のビジネス書市場で広く共有されている考え方であり、「どこかで読んだことがある」という既視感は拭えない。

マインドセットの啓発としては水準に達しているが、具体的な手順やツール活用法にまで踏み込んでいれば、類書との差別化がより明確になったはずだ。意識改革の入口としては推奨できるが、実践書を求める読者には次の一冊が必要になるだろう。

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