経営危機のホンダでお家騒動:旧経営陣が三部社長に退陣要求

ホンダが深刻な経営危機に揺れている。EV戦略の失敗によって巨額損失を計上し、上場以来初の最終赤字に転落したことで、現経営陣への批判が一気に噴き出した。ついには旧経営陣から、三部敏宏社長の退陣を求める声が上がった。

ホンダの三部社長

かつてホンダは、創業者・本田宗一郎氏の精神を受け継ぐ「技術の会社」として知られた。ところが、今のホンダをめぐっては、技術力よりも経営判断の迷走が目立つ。とりわけ三部社長が掲げた「脱エンジン」路線は、会社の屋台骨を揺るがす大きな誤算となった。

三部社長の「EVの賭け」が裏目に出て経営危機

三部社長は2021年の就任直後、2040年に世界販売する新車をEVと燃料電池車にするという方針を打ち出した。内燃機関のホンダから、電動化のホンダへ。この大胆な転換は当時、時代の先を読む決断のようにも見えた。

しかし現実は厳しかった。世界のEV市場は想定ほど一直線には伸びず、米国ではEV支援策の見直しや需要鈍化が進んだ。中国ではBYDなどの新興勢力が台頭し、価格競争とソフトウエア競争が激化した。ホンダが得意としてきたエンジン技術やハイブリッド技術の強みを十分に生かせないまま、EVシフトに大きく賭けた結果、巨額の損失処理に追い込まれた。

ホンダはEV関連で1兆円を超える損失を計上し、2026年3月期は営業赤字、最終赤字に転落した。これは単なる一時的な業績悪化ではない。ホンダの中長期戦略そのものが問われる事態である。

経営戦略の失敗の責任を取らない経営陣

問題は、三部社長がその責任をどこまで取るのかという点だ。川本信彦元社長などの旧経営陣は現経営陣に強い不満を抱き、本社を訪れて三部社長に退陣を求めた。ホンダには伝統的に、旧経営陣や技術畑の重鎮が会社の方向性に強い関心を持つ風土がある。

三部社長は、巨額損失について「止血」のための決断だったと説明している。たしかに、傷口を先送りせず、一気に損失処理すること自体は経営判断として理解できる面もある。だが、その傷を作ったのは誰なのか。EV一本足に近い将来像を掲げ、エンジンとハイブリッドの強みを過小評価した責任は重い。

ホンダの苦境は、日産との経営統合協議が破談したこととも無関係ではない。日産との統合は、規模の拡大や電動化投資の分担という意味で、ホンダにとっても重要な選択肢だった。しかし協議はまとまらず、ホンダは単独で厳しい競争に立ち向かわざるを得なくなった。EV、ソフトウエア、自動運転、バッテリーという巨額投資が必要な分野で、単独主義を続けられるのかという疑問は残る。

一方で、ホンダにはまだ強みがある。二輪事業は世界的に強く、インドやブラジルなど新興国市場で収益力を維持している。ハイブリッド車にも競争力があり、北米市場ではEVよりも現実的な選択肢として需要がある。問題は、こうした強みを経営戦略の中心に戻せるかどうかだ。

EV路線から撤退して強みを生かせ

ホンダが本当に再建を目指すなら、まず必要なのは、EV万能論からの撤退である。電動化そのものを否定する必要はない。しかし、世界の市場は一様ではない。北米、欧州、中国、日本、インド、東南アジアでは、消費者の所得水準、電力インフラ、政策支援、燃料価格がまったく違う。すべてをEVに収斂させる発想は、もはや現実的ではない。

むしろホンダは、二輪、ハイブリッド、小型車、エンジン技術、燃料電池、ソフトウエアを地域ごとに組み合わせる柔軟な戦略へ戻るべきだ。創業以来のホンダの強みは、巨大な官僚組織のように一つの正解へ突き進むことではなく、現場から生まれる独創的な技術と商品力にあった。

今回の旧経営陣による退陣要求は、ホンダにとって不名誉な「お家騒動」である。しかし同時に、会社を立て直す最後の警鐘でもある。三部社長が続投するにせよ、退陣するにせよ、ホンダはまず、何を失敗したのかを明確にしなければならない。

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