黒坂岳央です。
「この会社は嫌だ」「この人は自分には合わない」「友達は選ぶ」など、若い頃は誰しも「自分が選ぶ側で当然」という感覚がある。
自分の子供たちのいる学校を見てもそうだ。「この子は嫌いだから遊ばない」「野球は嫌だ。ドッジボールしよう」と誰もが自分の好き嫌いを前面に出す。
20代前半までは、就職ならポテンシャル採用され、人間関係も学校や会社が自動供給してくれる。失敗しても「若いから」で許される。恋愛はまさに「若さそのもの」だけが価値といっていい。
だから「自分は選ぶ側」という感覚が生まれやすい。もちろん、そう思うこと自体は自由だ。しかし若さという魔法が解けた時、多くは実態として「選ばれる側」になる。
※筆者は昔、「全員が選ぶ側でいい」という趣旨の記事を書いたことがあるが、前回は心理的態度の話で今回は市場構造の話と切り口が異なる。

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アラサーから真の実力が問われる
20代が終わり、30代になるといきなり人生が変わる。
仕事では「何ができるのか」「実績は何か」「利益を出せるか」を問われる。転職市場では、30代後半から年収の上昇が止まる層と伸び続ける層に明確に分かれる。
筆者は30歳になった日から、「もう30代なのだから」と仕事の期待値がいきなり上がったことがあった。周囲からは「黒ちゃん」とあだ名で呼ばれなくなって「さん付け」となり、社外の遊びの誘いもぱったりなくなった。失敗しても相手から強めに叱られることが20代ほどはなくなり、それが逆に不安でもあった。
恋愛・婚活でも、性格・経済力・将来性など総合評価になる。人口動態統計では、男女ともに初婚率が35歳以降で急激に低下し、40代以降は年間1%台まで落ちる。「男は何歳でも結婚できる」というのは統計的には完全なる間違いで「男もほぼ年齢」で決まってしまう。
「今どきは晩婚化でしょ」というツッコミもありそうだが、初婚者のピーク年齢は昔から変わらず「男女ともに27歳前後」でずっと同じである。
要は人生は30歳をすぎると「あなたは何者か?」とその人が持っている価値を問われる側になる。いや厳密に言えば、若い頃からずっと評価自体はあったのだが、若さボーナスが大きく補正してその事実が見えなかっただけだ。
20代のうちに「今はボーナスタイム。新人補正が消える前に実力をつけねば」と頑張る人と、子供のように周囲に甘えっぱなしの人とでは30歳以降の人生はまったく違う。こうなると、30歳になって「いきなり周囲が冷たくなった」と感じる人が出てくるが、変わったのは状況ではなく、ただ魔法が解けただけなのだ。
40代以降も「選ぶ側」でいられる人
少数ながら、30代以降も選ぶ側を維持し続ける人間がいる。その共通点を一言で言えば、相手が求めるものを持っている人間だ。
仕事なら、実績ある専門家は待っていれば依頼が来る。こちらから営業しなくても案件が積み上がる状態になれば、クライアントを選べる。筆者は記事が動画を出していると「一緒にお仕事しませんか?」とありがたいお声がかかることがある。
人間関係なら、場を動かすコミュ力や、一緒にいると何かが起きる、心地良いと感じさせる人間には自然と人が集まる。「自分は人気者」なんて痛い勘違いをしているつもりはないが、セミナーを開けば遠方からわざわざ会いに来てくれる人がいる。
これは自分が相手に提供できるコンテンツを持っているから、と冷静にメタ認知している。これは外見などの若さ由来の価値ではなく、ずっと磨き続けたスキルや実績に対して、相手が価値を感じてくれているという状態だ。
だが「自分は選ぶ側」と上から目線で油断して手を抜いて実力がなくなれば、人も仕事もいなくなる。いざ実力が追いつかなくなった時に、選ぶ側だった人もオワコン化してしまう厳しさがある。
「相手に」価値があるもの
そして見落としがちな視点は「自分が価値があると思っているもの」は武器ではないということだ。
専門知識があると自負している。長年の経験がある。自分なりの哲学がある。これらは本人の主観では資産だが、市場が評価しなければただの負債でしかない。
むしろ「自分には価値がある」という自己認識が強い人間ほど、市場からの評価とのズレに気づかず、クセの強い人として敬遠されるだけだ。
筆者は先日、仕事で会った営業マンがいるのだが、「自分はこの業界で長い間見てきて、かなり詳しいつもりなのですが…」と専門家の自負が強い人がいた。
相手のロジックに疑問を感じて、「これってこういうことは考えられませんか?」とやんわりと確認をしたつもりだったが、相手はムッとした声色を出し、「いえ、それは違います!」と語気強めで否定され、根拠のない持論を展開されたことがあった。
市場評価というのはあくまでクライアントが起点になる。相手が価値があると思うものはあるし、そうでないものはミスマッチだ。
これが選ぶ側であり続けることの本質的な難しさだ。だから「選ぶ側に戻る」方法は一つしかない。自分が価値があると思うものを磨くのではなく、相手が欲しがるものを正確に把握し、それを提供できる状態を作り続けることだ。
◇
筆者は上司から「お前はまだ20代だからポテンシャルで任されてたり、ミスを許されてるだけ。今のうちに実力つけないと将来ヤバいよ」と繰り返しいってもらえたこともあって、死に物狂いで働いた。おかげで30代以降は転職する度に年収アップ、キャリアアップが出来るようになった。もしも20代を遊び呆けて過ごしたら転職すらできなかっただろう。
若さによる補正の怖いところは、過ぎ去ってから気づいてももう遅いということだ。市場は本人の遅れを一切待ってくれない。「自分はまだまだ選ぶ側」というズレた主観はマーケットでは致命的になる。
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