イラン戦争の意味

アメリカとイランが戦争終結に向けて覚書に調印しました。トランプ大統領の「間もなく終わるだろう」という言葉に翻弄され、オオカミ少年と思われていた節もありましたが、先週のつぶやきで私見を述べたように今回の本気度は違っており、イラン側も譲歩した形跡があり、薄氷の調印に至ったと考えています。

トランプ大統領とヘグセス戦争長官 ホワイトハウスHPより

ではトランプ氏にとって今回のイラン戦争は何だったのでしょうか?思いつく功罪を並べてみます。


① イランの反国際的で無秩序な独走を止めた
② ハメネイ師の殺害により古いイランと新しいイランの内面的闘争に一定の影響を与えた
③ 国際社会において中東のリスクを改めて認識させ、各方面で多様化の動き
④ 化石燃料偏重のリスクが改めて認識されたこと
⑤ アメリカは武器弾薬を多量に使い、戦争の実戦経験も出来てビジネスと国防の両面で強化


① イスラエルに振り回されたアメリカという印象
② アメリカ世論を中心に「いらぬ戦争」を主導したトランプ氏への嫌悪感が一部で強まる
③ アメリカ議会の影響力低下を見せつけ、大統領独裁主義的な色彩を強めたこと
④ 国際世論がアメリカへの依存度を下げようとする動きを促進
⑤ 一般人の犠牲者が広がったこと

今回の覚書締結で何が変わるのかと言えばホルムズ海峡の通過が元に戻るように努力するだけで核問題やイランに課している経済制裁などは今後の交渉となります。ホルムズ海峡に残るとされる機雷の撤去もあり、船の往来は平常になるまで相当の時間がかかるとみられています。

ペルシャ湾で足止めされている船の多くはドバイ沖で停泊しており、その数は600隻とされます。うち、タンカーが98隻です。一方の空(カラ)の船がペルシャ湾入りを待つためにオマーン湾のドバイ、オマーン沖に約300隻が待ち構えています。(ブルームバーグより)

ペルシャ湾から出す方を優先する見込みなので原油積載済みのタンカーが出ても次の空のタンカーが中に入るにはまだまだ時間がかかる見込みです。よって原油価格の市場は下落していますが、心理的な下落であって需給を反映したものではありません。よって原油の価格下落のペースは今後、遅くなります。国際市場での原油の需給の均衡点は70㌦台から80ドル台なので、価格は今の水準前後で落ち着いてくるとみています。

さて、アメリカはイランに何をしようとしたのでしょうか?イスラム原理的思想を抑え込み、イラン政府の無秩序な行動を止め、イスラエルに対抗する勢力を潰すことだったのでしょうか?ですが、イランの宗教心は変えられません。信仰心も過激であったり厳格な思想に偏れば当然ながら他の宗教思想とは対立します。それがイランの原理主義派であり、対立関係にあるイスラエルの厳格なユダヤ教信者であり、それぞれの国の政権を支える基盤であります。宗教的背景に対して第三国がちょっかいを出すことは火に油を注ぐことであるのは歴史が物語っています。

とすれば個人的にはトランプ氏は最も手を出してはいけない戦争に踏み込んだということになります。そして今回の覚書は覚書でしかなく、拘束力が非常に緩いため、今後、スムーズな解決に向けた道のりになるかどうかは今後の交渉次第になります。時間をかけてとりあえず、戦争前の元の立ち位置に戻す、そんな流れだと思います。

一方、一部のイランの人にとってアメリカへの恨みはより募らせたでしょう。イスラエルとは思想的により厳しい対立関係となるとみています。

トランプ氏は自分の手腕ばかりを考える人です。第1期政権の時からほぼすべての案件について自らがちゃぶ台返しをして、そのちゃぶ台を元に戻した時、載っていたものが少しだけ変わったことに「ほれ、どうだ、俺は凄いだろう」という自慢をしてきました。氏の独特の戦法でありますが、その効果は知れていることから今回も「またそれか」ということになったとも言えます。

今後はまず、G7がどんな展開になるか、イラつくイスラエルの動き、そしてそれにイランが挑発されるか、そちらに興味が移ってきそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年6月16日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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