イタリアの生活に根付いた文化は、なぜ世界に広がったのか

私が働いていたIBMでは、勤続25年目に1ヵ月間の休みが取れる制度がありました。2009年、私はこの休みを使ってイタリアに滞在しました。

フィレンツェにいた時のこと。

イタリアには「バール」というエスプレッソ立ち飲みカフェが至る所にあります。イタリアの人々は、ふらっと立ち寄ってエスプレッソを飲んだり、軽食をしたりと完全に生活の一部になっています。

私もフィレンツェでは毎朝バールに立ち寄って、妻と朝食をとっていました。

当時の価格は、エスプレッソ1杯150円。フィレンツェの人たちは、次々と店に入って、ワイワイと談笑したりしています。

中には大きなゴールデンレトリバーを店内に連れてきたり、乳母車に子供を乗せたまま入店する人もいたりして、誰もが自由気ままです。

乳母車にいた2歳くらいの男の子は、店内で自分の目の前にいるゴールデンレトリバーを指さして「バウ、バウ」と言ってます。

日本語で「ワンワン」という意味ですね。

その様子を見ていたら、その子は私を指さして「バウ、バウ」と言い始めました。男の子にはヒゲを生やしている私も「ワンワン」のようです。

イタリアでは、バールが生活に根付いているのですね。

こうしたバールの文化に感銘を受けて、こう考えた米国人がいました。

「素晴らしい! そう言えば、米国のカフェはどれも不味いよね。このバールを米国で再現しよう」

こうしてイタリアのバールのコンセプトを米国に輸入し、試行錯誤の末に独自に発展させて、世界に広げたのが、スターバックスの創業者ハワード・シュルツです。

こうした戦略には「パイオニア・インポーター」という名前が付けられています。

自分たちの市場におけるパイオニア(市場開拓者)として、他市場の成功事例を輸入する戦略です。

全く新しい新規事業は、誰もやったことがないのでリスクがあります。だから自分で試行錯誤しながら学んでいく必要があります。

でもパイオニアインポーターであれば、他市場での事例から学ぶことで失敗リスクを下げることができます。

このパイオニアインポーター、実は意外と多いのです。

  • クロネコヤマト 米国UPSの仕組みを学んで日本流にしました
  • セブンイレブンジャパン 米国サウスランドのセブンイレブンの仕組みを日本流にしました

ちなみに2006年にスターバックスが始めた抹茶ラテも、日本の抹茶文化の輸入でした。

このパイオニアインポーターの戦略は、海外市場には限りません。他地域や他業界からの輸入もアリです。

丸亀製麺やはなまるうどんは、香川の讃岐うどんを日本全国に広めました。

トヨタ生産方式は、米国のスーパーマーケットが行っている商品補充の仕組みをクルマの生産に応用したものです。

パイオニアインポーターの目線で新規事業を見直してみると、新たな成長のチャンスが掴めると思います。


編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2026年6月16日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。

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