円安が加速気味になる中で、片山さつき大臣の「断固」は堅固なものか?

AIのパワーに圧倒された、それがこの1-2週間でした。弊社のウェブサイトのシステムの一部を作り直すにあたり元従業員の会社から指示されたのはAIとのやり取り。質問の答えがあいまいだとさらにAIに追及されながら2時間ぐらい問答します。その内容を別のAIに流し込み、AIが私の必要とする内容のシステム制作作業を完遂しました。所要日数2日。これをアレンジしてくれた元従業員氏は「かつてなら1か月かかっていた作業」と。しかも一部不具合もAIに指摘したら即座に修正、13フェーズにわたる作業進捗報告はAIが私にEmailで報告、挙句の果てに請求書までAIが作ってきました。正直、別世界でした。制作費用はAIの使用量をベースに課金されています。無駄がないので安いし、文句のつけようがないとも言えます。もう人間のウェブデザイナーとかウェブデベロッパーは勝てないでしょうね。衝撃的でした。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

片山大臣の「断固」は堅固なものか?

円安が加速気味になっています。160円台が定着しつつあった中で18日に急激な円安となり、161円80銭をつけました。プラザ合意の地殻変動的な為替水準の調整があった1985-86年の後にこの水準を超えたのは24年7月に一瞬つけた161円96銭。これを超えると未知の世界に突入すると考えてよいでしょう。360円の時代があったじゃないか、という声があるかもしれませんが、それは基礎的条件が比較できない話で現代の円ドルの水準はプラザ合意以降に形成されたと言い切ってよいでしょう。

さて、片山大臣はこの円安状況に対して引き続き「断固たる姿勢で臨む」と述べていますが、市場は高をくくった可能性があります。以前にも申し上げましたが、前回の11兆円の市場介入は失敗でした。財務官と共に戦略不足もあったのですが、それ以上に為替介入に一定の威力があると今でも信じている財務省はお花畑(=現実逃避)だと思います。明白に言えるのは日本の実質金利はいまだにマイナス水準にある点です。実質金利は長期と短期で見比べる必要があり、長期はプラスに入ってきてますが、短期は政策金利1.0%-期待インフレ率2.3%=-1.3%であります。つまりこれを脱却するには政策金利をもっと引き上げ、期待インフレ率を下げるしかありません。

会見する片山さつき財務相

私が政府の経済政策に当初から疑問を呈しているのは企業インフレが急速に進んでしまった点です。日本は80年代のバブル経済の原因は80年代前半のの金融自由化政策と円高対策で金融緩和政策だったものを三重野総裁が一気に火消しをした極端な政策変更がバブル崩壊の引き金でした。今の日本経済はそれと似た極端な道を辿りつつあるように見えます。例えば食品消費税減税政策を推し進めるのはその一例です。これは日本独特で、過剰な政府主導の景気高揚感醸成=過剰インフレを引き起こしやすくなります。将来の政権が一気に火消し政策を施せば80年代のバブル崩壊と同じシナリオとなります。「今はバブルではない」。そうかもしれませんが、80年代前半の経済運営をもう一度紐解く必要はないでしょうか?

トランプ氏の野望、次はウクライナ停戦

曲がりなりにもイランとの戦争がいったん片付いたのでトランプ氏はウクライナ停戦に向け、全振りするとみています。なぜならほかにポイントを上げるネタがないからです。逆に言えば仮に中間選挙までにウクライナの停戦にこぎつけたとすればトランプ氏の評価はその手法次第ですが、爆上がりになるとみています。それこそ、喉から手が出るほど欲しいノーベル賞も近づくかもしれません。

大局的に見ればウクライナ戦争は両国共に限界にきていると思います。ここで「TKO」にするのではなく、仲裁による喧嘩両成敗がベストで、その強制力がカギになると思います。まず、経済疲弊が両国の最大のネックですが、ロシアについてはその経済復興のアメの案はいくつかあると思いますし、たやすいでしょう。問題はウクライナで、正直、ロシアよりはるかに酷く、同国の潜在的な経済基盤はほぼ崩壊、復興には50年以上かかる話です。その上、ウクライナは汚職や賄賂など歴史的にクリーンとはいえず、欧州を含めた諸外国からの経済支援パッケージが本当に有効か、無駄なく使われるのかこの管理が重要です。さらに近代の人類史上、見たことがないほどの人口減を引き起こした点において私個人はゼレンスキー氏はいただけないのであります。

戦争は外交と軍部の駆け引きと以前申し上げました。歴史的に見て何が難しいか、というと軍部は常に力による支配をその正義だと考える一方、外交は一定の折衷を含む妥結である点において大きな温度差がある点です。これは日本の先の戦争を見ても一貫して言えたことです。イランも革命防衛隊という一種の軍部的要素を持った組織とイラン政府との駆け引きでした。ウクライナ戦争の最大のネックはプーチン氏もゼレンスキー氏も外交を二の次と考え、力による勝負を一義的に考えている点であり、それに口をはさむ国内の穏健派は抑え込まれています。よって第三国が代わりに穏健派の役割=外交的解決を進めるしかない、これが私の見立てであります。

核兵器は過去の産物とすべき

核開発競争という言葉に私は若いころから違和感を持っていました。誰も使いたくない兵器=所有することによる優位性=誰も発射ボタンを押せない無用の長物、ではないかと考えていました。G7の共同声明で北朝鮮の非核化に言及したことに対して金与正氏が「核保有は必ず守るべき核心利益だ」と強く反発しています。先般、米中首脳会談で両首脳は北朝鮮の非核化について同意したとされますが、その後の習氏の北朝鮮訪問でそれが言及されたかは伝わってきていません。

なぜ核に固執するのか、考え方を一つ変えてみれば割と簡単なことに気がつきます。核を超える兵器がないからです。それは人類が広島長崎の二の舞を見たくないと考えるのか、科学者がそんな恐ろしい兵器開発は真っ平だと逃げているのかもしれません。ただこの数年、宇宙開発が急速に進んできている中で人工衛星の武器化は技術的には可能です。宇宙からのレーザー攻撃やタングステン爆弾が考えられ、タングステン爆弾となれば巨大隕石ほどの破壊力があります。もちろん現実的ではありませんが、現代の核兵器だって使うという点からは現実的ではないのです。ならば核以上の武器が開発されるというだけで核兵器を所有する意味が消滅するとも言えないでしょうか?

そもそも現代の戦争においてドローンがこれほどに威力を発揮すると誰が思ったでしょうか?しかもその開発余力はまだ相当あります。また、ウクライナ戦争で見た作戦は電源喪失です。つまり武器そのものではなく、武器攻撃を支える周辺インフラに脆弱性があるのでそれを破壊するのです。現代の最新技術は100%の状態でないと機能しません。昨日の新幹線を見ればわかるでしょう。浜松駅の人身事故で全線が長時間にわたってストップするのです。つまり脆いところはいくらでもある、よって核に固執する意味が私にはよくわからないのであります。

後記
FIFAで盛り上がるバンクーバー。弊社はサッカーカナダと小さな業務契約があるのですが、先方曰く「カナダが勝ち続ければ契約期間は伸びるよ」と。カナダチームは私の住む住宅の裏のホテルに滞在しており、厳戒態勢で警官とセキュリティだらけ。そんな中、ホテルからバスに乗り込む選手たちを近所の人たちが送り出した昨日の試合は相手の自滅に近かったもののカナダがワールドカップで初めて勝利した記念すべき「事態」。試合のあった午後3時には街から人は消えました。スタジアムやスポーツバーは狂喜乱舞だったのでしょう。思い出すのは2010年の冬季オリンピックで、IOCから仕事を受けていたのでよく覚えているのですが、経済効率と波及効果についてはFIFAの方がはるかに大きく、期間も長く、盛り上がりレベルも違います。オリンピックは種目ごとの選手個人が注目されますが、サッカーは国別の集団競技で切り口が簡単という違いは大きいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年6月20日の記事より転載させていただきました。

アバター画像
会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント

  1. 早川蒼真 より:

    円安が160円台で定着し、さらに一段と進みつつある——この問題意識そのものには、私も賛同します。

    しかし、しかしです。だからこそ、議論の根幹となる数字の扱いは丁寧であるべきだと思うのです。

    この記事では「政策金利1.0%-期待インフレ率2.3%=実質金利マイナス1.3%」という形で短期の実質金利を論じ、ここを起点に「過剰インフレ」「80年代バブルの再来」といった大きな話へと展開していきます。つまり、この「2.3%」という数字が、論全体を支える土台になっているわけです。

    ところが、この2.3%はかなり雑に見えます。何を指しているのかと確認してみると、おそらく5月にBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)が一時的に2.3%近辺まで跳ねた、その瞬間のピーク値を拾っているように見えるのです。

    しかし、直近のデータを見れば話は変わります。財務省の資料では、2026年6月18日時点の10年BEIは約2.069%です。さらに第一生命経済研究所(第一ライフ資産運用経済研究所)の「合成予想インフレ率指標」を見ても、2026年1〜3月期の5年指標は1.90%とされています。つまり、今の期待インフレ率を語るなら「おおむね2%前後」と見るのが自然です。

    この差は、論旨にとって決して小さくありません。仮に実態に近い2.0%を当てはめれば「政策金利1.0%-2.0%=マイナス1.0%」となり、マイナス幅の印象はかなり変わってきます。記事のように2.3%を使うと、実質金利のマイナス幅が一段と大きく見え、結果として危機感が強調される構図になります。その論を組み立てる前提に、都合よく一時的に跳ねた瞬間値を使われてしまうと、説得力がかえって削がれてしまうのが正直なところです。

    もし2.3%という数字をどうしても使いたいのであれば、せめてそれが「5月の一時的な高値」なのか「直近値」なのか、また何年限のBEIを指しているのかを明示すべきだと思います。現在値とピーク値を区別せず、代表値のように扱ってしまうと、読み手は実態より深刻な状況だと受け取りかねません。

    危機を語るのであれば、直近のデータを使い論じてほしい——というのが率直な感想です。現在のBEIは約2%、合成予想インフレ率も約1.9%という現実から出発してこそ、冷静で建設的な議論ができるのではないでしょうか。