コロナ対策は本当に正しかったのか:青柳貞一郎『臨床現場からみた新型コロナの虚と実』

松田 智

この頃は、電車やバスの中でもマスクを着用する人が減り、数年前のコロナ全盛期とは街の表情もずいぶんと様変わりした印象だが、実は2026年現在でも新型コロナ感染症はさまざまなウイルス変異を繰り返しながら世界中で流行している。新型コロナは、全然終わっていない。

その最中に、新型コロナとそのワクチンに関する良書が出版された。題して『臨床現場からみた新型コロナの虚と実』、副題には「日本人の新型コロナに対する認識は正しかったのか」とある。つまりこの本は、今の日本人の新型コロナに対する認識を問う内容になっている。

著者は、東京医科大学名誉教授の青柳貞一郎氏で、同大学茨城医療センターで現場医療の最前線に立ってこられた方だ。泌尿器科専門医として日常診療に従事しながら、10年以上、近隣病院や地域の開業医との連携を図る医療連携室長として働いてこられた。また、病院全体の「医療の質検証委員会」委員長として、年間500例近い、院内で死亡した症例および救急搬送されて死亡診断された症例のすべてについて、医学的検証も行ってこられたという。

これらの経験が本書の中に随所に散りばめられていることは、特筆しておきたい。本書の主張に説得力を与える一つの力になっているからだ。

実は、本書の紹介は青柳先生ご自身のブログですでになされている。内容に関しては、著者ご本人が書かれたものが最も正確であることは言うまでもない。執筆目的として、以下を挙げている。

  • 再び新型コロナのような未知の感染症が流行し始めたときに、どのように対応するのか。
  • また、コロナのときのように世の中の構造が変わるほどの対応をするべきなのか。
  • コロナ感染後遺症、ワクチン後遺症に悩む知人や家族がいて、これらの病的本態を知りたい。
  • コロナウイルスや、人類で初めて使用した遺伝子ワクチンについて、医学的にまとまった知識を得たい。
  • 高齢者の超過死亡が続いており、ワクチンに関連した「がんの増加」という風評もあり、これらの真実について知りたい。

これらの疑問に答えるために、本書は書かれた、とある。一方で、「新型コロナ感染症は軍が細菌兵器として開発した? コロナワクチンは人口削減のためのディープステートの陰謀である?」といった内容に関しては、一切書いていないとも断っている。

ただし、メディアを使った「ワクチンは安全・安心」キャンペーンの欺瞞や、PCRと隔離政策の徹底で新型コロナ感染症は封じ込めが可能で、また元の生活に戻れる、といった嘘については、証拠を挙げて徹底的に検証したともある。

以上の紹介で、本書の内容は概略知られるのだが、以下、章を順に追って内容を見ていこう。

第1章 新型コロナ感染症初期:この感染症はいつからあったのだろうか?

新型コロナ感染症が新しい感染症として初めて公式認定されたのは、2019年12月の中国・武漢であるが、もっと前から流行していた可能性が指摘されている。本書によれば、最も早い確認例は2019年12月7日頃であり、潜伏期を考えると、遅くとも同年11月にはウイルスが市中に出ていたことが想定される。

驚くべきは、翌2020年1月10日頃にはウイルスの全遺伝子が解明されていることである。この手際の良さは、「この裏に何かあるんじゃないの?」との疑いを持たせるのに十分だ。

後になって、事後的な検証から、新型コロナ感染症は2019年冬には全世界に広がっていたと考えられるようになった。著者の推測では、武漢の研究所から2019年夏頃に漏洩したのではないかとされる。後に、新規感染症であることを当局が認めてから数日でウイルスの同定、遺伝子組成の解明まで可能になったのは、初めから原因ウイルスが分かっていたからだろうとの推測には説得力がある。

本文でも触れられている京都大学の上久保靖彦氏(現・千葉県がんセンター)は、2020年の段階でコロナウイルスの系統分析から、「日本ではCOVID-19の感染拡大がすでに2019年末から起こっていて、基礎的な免疫は広がっているのでワクチンは必要ない」という内容の講演を、自民党のコロナ感染症勉強会に呼ばれて行っている。

この逸話は、少数の研究者とともに、自民党議員たちが新型コロナについて2020年の段階でかなり真実に近いことを理解していた事実を示している。その後の新型コロナに関する展開を後から振り返る上でも、この「ウイルスの起源」問題は、ゆるがせにできない重要問題であることを再認識しておきたい。

本章の後半は、PCR検査に関する批判が中心である。もともとPCR検査は、陽性率の高い集団に診断目的で使うべきもので、陽性率の低い集団にスクリーニング手段として使うのは不適切だった。

しかも日本では、PCRの増幅回数を40回に設定したので、誤った陽性判定が頻発した。信頼できる増幅回数は30回程度だったにもかかわらずである。しかし当時は、「国民全員が週1回はPCR検査を受けるべきだ」といった主張が盛んになされた。

(実は私自身も研究でPCRを使っていたので、その有効性には疑問を抱いていた。増幅回数だけでなく、DNA鎖にプライマーをくっつけるアニーリング条件などで感度が変わることを知っており、それらの条件を明示しないPCR結果を信用しなかった。)

第2章 新型コロナ感染症中期以降:医療現場の混乱

この章では、新型コロナ感染症が2類に位置づけられたことによる医療現場の混乱ぶりが、生々しく描かれている。2類では、患者の隔離が必須であるほか、検体輸送にも制限が生じてくるからだ。

これまで2類に属する感染症には、結核、MERS、SARSなどがあり、入院先は感染症指定医療機関に限るとされていた。そのため、コロナ患者の入院病棟を専用病棟として一般病棟と分ける必要が生じ、コロナ以外の患者の入院が困難になる事態となった。

新型コロナの患者には軽症または無症状の例も多く、その傾向は変異が続くにつれて強まった。つまり感染力はより強く、したがって「かかる」ことは防ぎにくい反面、いわゆる毒性は低くなり、症状自体は重篤でなくなった。そうなると、ますます2類指定が医療機関にとって重荷になる。

本書33ページに、図2-4「日本における新型コロナ感染者数、重症者数、死亡者数の推移」というグラフが載っている。この中で、第○波とされる波に最も近いのは重症者数のみであり、不思議なことに感染者数も死亡者数も同期していない。

この辺の説明は長くなるので本文に譲るが、いずれにせよ、医療現場的には2類指定を早く解除し、5類に移行させるべきであったことは疑えない。実際に5類に移行したのは2023年、第8波の頃だった。

ただし、2類は医療費が全額公費で、感染者数の全数把握が必須だったので、全体状況の把握が可能だった。5類では医療費の一部負担と、全数把握が義務づけられないため、全体状況がつかみにくくなった面はあった。

第3章 変異ウイルスの蔓延とワクチン

この章では、2021年から2023年にかけて次々と変異株が出現し、それが流行を繰り返していった状況と、人類で初めての使用となる「遺伝子ワクチン」の導入について記されている。

新型コロナの変異株は、ギリシャ文字の最初から順に、α、β、γ、δなどと命名されていた。前の方ほど、2021年までの武漢起源株に近い。

日本ではなぜか、2022年のオミクロン株による第6波以降に感染者数が増えた。その理由として、先にも触れたが、2019年末には起源株の一種がすでに日本でも流行していて、多くの日本人が免疫を獲得していたからではないか、との仮説には説得力がある。オミクロン以後は、この免疫が効かなくなり、感染者数が増えたのだという。

実際、本書の図3-3-1にある新型コロナウイルスの主な変異の系統図を見ると、アルファからガンマまでは一塊で、オミクロンで大きく枝分かれしているのが印象的だ。

ワクチン接種に関しては、皮肉なことに、2022年の第3回接種以降に感染者数が爆増している。つまり、2022年のオミクロン株以降は、ワクチンは感染予防には全く効いていなかった。

そこで厚労省はワクチンの効用を「重症化を防ぐため」としたが、これには因果関係を説明する科学的根拠が薄弱だった。また、新型コロナワクチンは本当に多くの命を救ったのか、との疑問に対する答えは、簡単には出てこない。長くなるので詳しくは本文に譲るが、正確に検証するのが難しいためだ。

本書によれば、結論的に言えるのは、ワクチンの1回接種であれば有効性がかなり期待できるのに対し、複数回投与は「感染予防」にも「重症化予防」にも効果がないことだった、とある。日本では、6回、7回とワクチン接種を受けた人も相当数に上るのであるが。

コロナ医療関連の国費の支出は総額16兆円にも上り、そのうちワクチンの確保や接種にかかる費用は4.7兆円だった。これほどの巨費を投じたコロナ対策の「費用対効果」の検証結果を知りたいものだ。そこには「ワクチン利権」の問題がないのかどうかも気になる。

第4章 新型コロナウイルスワクチン自体の問題点

この章は、次の第5章と並んで本書の白眉というべき内容を含んでいる。なぜなら、これまでわが国では、ワクチンはほぼ無条件に「打つべきもの」とされ、それに疑義を挟むと「反ワク」などのレッテル貼りがなされ、バッシングの対象にさえなってきたからだ。

それに加え、新型コロナウイルスワクチン自体に関する科学的な説明そのものが、極めて貧弱だったのだ。本章で取り上げられた問題点は、大きく二つある。一つは「遺伝子ワクチン」を全人類に使うことの是非、もう一つは新型ワクチン自体が持っている問題である。

まず、遺伝子ワクチンを全人類に使うことについて。新型コロナウイルスワクチンを「遺伝子ワクチン」と呼ぶには、理由がある。これまでのワクチンは、弱毒化したウイルスなどを接種することで体内に抗体を作らせるタイプだったが、新型ワクチンでは、遺伝物質そのものである核酸、この場合はmRNAを直接体内に入れる点が大きく異なる。

20年以上も前にヒトゲノムの全解析は完了したが、遺伝子の働きがどのように調節されるのかについては、現在でも不明な点が多い。1個の遺伝子が関与する酵素反応なら、転写制御の仕組みなども知られているが、多数の遺伝子が関与する高次機能に関しては、分かっていることはほとんどない。

この状況下で、遺伝物質である核酸を体内に直接投入することは、人類どころか生物界でも初めてのイベントだった。遺伝情報は、核酸の中の塩基配列として蓄えられている。4種類ある塩基(A、G、C、T)の1個でも入れ替わると、遺伝情報は致命的な影響を受ける。また、多数の遺伝子が関与する制御系に別の核酸が入り込んだとき、何が起こるか、全然分かっていない。

ゆえに本来ならば、この「遺伝子ワクチン」の使用に当たっては、慎重な倫理的・科学的検討がなされるべきであったが、WHOも各国政府も一切の倫理的検討を行わず、パンデミックによる緊急性が優先され、簡単な審査のみで使用が許可された。実際には、ここに大きな問題点があった。

全世界の健常人に、この遺伝子ワクチンを実際に使った結果はどうであったか。2023年までにワクチンに関連した合併症の研究報告は1,500件以上あり、従来のワクチン副作用報告より明らかに多い。

また日本でも、2024年2月までの集計で、救済制度の認定数4,232件、死亡認定412件があり、これは過去47年間のすべてのワクチンによる救済認定数を超えている(総数3,636件、死亡158件)。ほんの2〜3年分の集計で47年分の総数を上回ってしまった事実、特に死亡例が多いことは重い。つまり、副作用の弊害が無視できないほど大きかったということだ。

また、効果においても、各種の統計数字を用いて、ワクチンで世界規模の流行病を制御する実験は失敗に終わったと結論づけられている。

遺伝子ワクチンそれ自体が持つ問題点は、mRNAを包むポリエチレングリコールによるアレルギーから始まり、同一ワクチンの反復投与による免疫系への影響、遺伝子ワクチンの特異性、工業製品としての問題点、すなわち製品ロットによる不均一性に至るまで、詳細に解説されている。

この部分は免疫学に関わる専門用語なども多く、理科系の人間でないと簡単には読みこなせないと思うが、記述自体は極めて明瞭で、私には強い説得力が感じられた。これを読んで、遺伝子ワクチンの抱える問題点が、一望の下に見渡せるような気がした。

なお、コロナワクチンのロット差に関しては、小島勢二・名大名誉教授による具体的な検討結果の例があり、参考になるほか、同氏は新型コロナとワクチンに関して、多数の論説を発表されている。

第5章 日本を含む各国の超過死亡増加と新型コロナ感染症、ワクチンとの関連

この章では、各種統計データを用いて、世界各国のワクチン投与とコロナ陽性死亡、超過死亡の関連などを追跡している。

超過死亡とは、例年から予測される死者数と、実際に報告された死者数との差、すなわち増加分をいう。日本では、新型コロナが流行し始めた2020年には超過死亡はマイナス、つまり死者数は予想より少なかったのだが、2021年から増え始め、2025年までずっと、2020年に比べて毎年20万人規模で増えている。その数は、コロナ陽性の死亡者数増加だけでは説明できない。

世界各国のデータで同様に比較して分かることは、基本的にコロナの流行に合わせて超過死亡の数は増減するが、ワクチン接種率がある程度高いと、流行が終わっても超過死亡が続く傾向があることだと、本書では述べている。

注目すべきは、本書135ページにある図5-10-1である。世界各国では、オミクロン株以降はワクチン接種をやめており、超過死亡も減少傾向にあるのに対し、日本だけがワクチン接種を続け、超過死亡も増え続けている様子が、この図から読み取れる。

また、74歳までの死亡者数は2020年から2024年までほぼ一定であるのに対し、75歳以上の死者数は明らかに増えている。ゆえに、因果関係は断定できないとしても、高齢者の超過死亡がワクチン接種後に増加したことは、統計的にも明らかだと言える。そのメカニズムの解明は、今後の課題になるだろう。

なお、本書でも紹介されている「ワクチン接種1回目から7回目までの400万人分の接種後死亡に関する情報を統計的にまとめた論文」については、今年2月に「並行図書館」というサイトに掲載された「日本のワクチン後死亡389万人推計の衝撃と射程――市民の情報公開請求が覆す『安全で効果的』の虚構」という記事があり、内容的にも大いに注目に値する。

本書には書かれていないが、この論文を作るために全国191自治体に情報公開請求を出したのに、開示したのは57自治体のみ、約30%にすぎなかった。約7割の自治体が、さまざまな理由づけで開示を阻んだのだ。詳しくは、同サイトをご参照いただきたい。極めて重要な指摘が複数なされている。

第6章 臨床現場で感じた死亡者数の増加とワクチンの関係

この章は、医療の現場で働く臨床家としての面目躍如と言える内容を含んでいる。

2020年以降に新型コロナが流行し、ワクチン接種が開始されて以降、医療の現場では「異変」を感じていたそうだ。それは第一に死者数自体の増加であり、異常に進行の早いがんが多く見つかったり、これまでと違う症例が増えたりしたことに現れた。

特に、免疫治療を行っている進行がんの患者たちから、ワクチンを打つべきか相談されたときには、大いに悩んだという。青柳先生は、ご自身の担当患者には説得してワクチン接種を控えてもらい、すでに治療後の患者には「体調が良ければワクチン投与自体は可能です」と答えていたそうだ。

結果はかなり明らかで、ワクチンを受けた患者の多くはその後がんが進行して亡くなり、受けなかった方は現在も元気にしているという。

そして本書は、「おわりに 科学を、民衆を従わせる手段として使うなかれ」との言葉を記して閉じられる。私は著者のこの姿勢に、分野は違えど同じ科学に従事する者として、強い共感を覚えるのである。

以上、この本は新型コロナ感染症とそのワクチンに対する、現時点における最も科学的で信頼度の高い解説書としての価値を持つと、私は思う。

一家に一冊、常備しておけば、新型コロナとワクチンに関して何か分からないときには、折に触れて参照できる。なるべく多くの方々に読んでいただきたい。

臨床現場からみた新型コロナの虚と実

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