世間では「日本は過去30年間、労働生産性が上がらなかった」とまことしやかに語られているが、増田悦佐『やっぱり高度経済成長は復活できる』によれば、これは明らかなミスリーディングである。労働時間1時間当たりの労働生産性を見れば、日本は一貫して着実に上昇している。問題は労働者の能力ではなく、政府による過剰な金融緩和や円安誘導、そして企業が「できる限り賃金の安い非正規雇用・不定時勤務のシェアを増やしてきた」そしてその結果による総労働時間の減少という雇用慣行の歪みにある。
企業は目先の利益を優先し、経験や熟練を必要としない非正規労働を大量に投入し、総労働時間を削ることでしのいできた。その結果として実質GDP成長率の低下を招き、巡り巡って現在の人手不足という「自業自得の経営難」を惹き起こしているのだ。

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若年層の経済基盤破壊が招いた少子化
では、なぜ少子化が止まらないのか。20代で子育てをしている世帯数はこの20年で半減している。これは若者の意識が変わったからでも、子どもが欲しくないからでもない。20代の所得水準が徹底的に抑え込まれ、子どもを産み育てるための経済基盤が完全に破壊されてきたからに他ならない。
輸入物価を押し上げる円安やインフレ政策が放置される一方で、若い世代に安定した賃金が支払われなければ、結婚や出産が遠のくのは当然の理屈である。にもかかわらず、政府やマスコミは「女性の意識の変化」といった精神論に逃げ込み、肝心の雇用構造の不備に目をつむり続けている。
未婚女性の低所得と日本型雇用の限界
さらに深刻なのは、日本の未婚女性の所得水準が諸外国に比べて異常に低いという現実だ。スウェーデンをはじめとする欧州諸国では、未婚女性であっても自立した生活を送るに足る所得を得ており、それが社会全体の安定や少子化抑制につながっている。
対照的に日本では、「男性は外で働き、女性は補助的な低賃金労働」という古い身分制のような雇用慣行が根強く残っている。その結果、女性たちが経済的自立を得られず、結婚や出産へのハードルが跳ね上がっているのである。
女性労働者の処遇改善こそが経済復活の王道
本書が論じるように、この閉塞状況を打破する鍵は女性労働者の処遇改善と所得増にある。人手不足と叫ばれる現在、未稼働・低稼働状態にある優秀な女性たちに対して、適正な賃金とキャリアパスを提供すれば、労働市場の景色は一変するはずだ。
小手先の補助金やバラマキ政策で少子化や人手不足が解決することはあり得ない。昭和的ないびつな雇用システムを見直し、現場のインセンティブを正しく評価する経済構造へシフトしない限り、この国の持続的な成長は望めないのだ。
【目次】
第1章 本邦開闢以来の女性宰相率いる自民党、総選挙で圧勝
第2章 さまよい出たリフレ派の亡霊たちで、枯れ木も山の大賑わい
第3章 格差社会論はウソ……ではなかった
第4章 シングルマザー所得三倍増計画
第5章 女性勤労者の所得激増こそ、少子化対策の王道
第6章 だからやっぱり、高度経済成長は復活できる








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