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やる気を待ってはいけない。やる気が出たら読む——これほど愚かな考え方はない。
やる気は、行動を始めてから出てくる。
『速効読書』(石川和男著)青春出版社
精神科医のクレペリンが提唱した「作業興奮」が、それを示している。始めるからやる気が出る。順番は逆なのだ。腕立て伏せも「1回だけ」と決めて床に手をつけば、気づけば10回やっている。面倒なメールも返信ボタンを押せば書け、イヤな仕事も席に座れば始まる。読書も「1ページだけ」でいい。ハードルを下げることだけが、習慣化の唯一の道だ。
それでも先延ばしのクセが抜けないなら、禁煙と同じ手を使うといい。タバコをやめられない人は、害を繰り返し刷り込むことで断つ。先延ばしも同じだ。「先送りは仕事の負荷を増やす」「モチベーションを下げる」「出世を遠ざける」——悪影響を書き出して可視化する。見えるようにすれば、自然と手が動く。
前日の寝る前に、翌日やることを整理しておくのも効く。意識を仕事へ向けておけば、朝、最もエネルギーの満ちた時間にすぐ取り掛かれる。それでも動けないなら、睡眠を疑ったほうがいい。活動量計メーカーのポラールの分析では、日本人の平均睡眠時間は男性6時間30分、女性6時間40分と、主要28カ国中で最短だという。睡眠が浅いとやる気も集中力も落ち、判断力が鈍る。負のループだ。気合いでは乗り越えられない。
数字で見てみよう。1日15分を365日続ければ年間約90時間、1冊3時間なら年30冊、10年で300冊になる。同じ15分をXのタイムラインに使っても、いいねは3日で忘れる。本の一節は10年後も残る。
文化庁の調査では、1か月に1冊も読まない日本人が47.3%。裏を返せば、読むだけで上位半分に入れる。この差は1年後、会話の厚み、判断の速さ、文章の重さとなって静かに表れる。「あの人、なんか違う」と思われる人間は、だいたい読んでいる。
集中できないなら場所も変えればいい。自宅は冷蔵庫もテレビもソファもある誘惑の巣窟だが、喫茶店なら雑事が届かない。適度な雑音は、むしろ思考を整えてくれる。
私のルールは「入る前に読む本を決める」「スマホの電源を切る」の2つだけだ。やる気を待つな。1ページだけ開け。喫茶店の15分が、気づけば一生モノの習慣になっている。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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