日本の中にいるとなかなかわかりにくいことの一つに日本と他国の比較があります。日本国内でも海外製品は入ってきますが、ビジネスの淘汰の観点から最後に生き残るまともな商品は日本製であったり、日本の会社が海外で作る商品であったりします。

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ところが私のようにカナダに住むと製品のみならず、製品を作る過程、つまり人的業務能力を見ることができます。そうすると「この国の人たちは本当に労働の質は高いのだろうか?」と疑問を持たないことはないのです。
アメリカの統計局発表のデータにLabor Productivity(労働生産性)があります。いや、どこの国にも似たような統計データはあり、この労働生産性こそ企業誘致をするにおいて重要な指標とされてきたのです、今でも各国大使館には商務関係の付属団体が同居しているケースは多く、企業の海外進出の話があれば熱心に売り込みをしています。その中で「我が国の労働の質は極めて優秀で…」というセールストークをすることは多く、その際によく持ち出すのが労働生産性の指標であります。
ではアメリカの労働生産性の指標。長く見続けてきたのですが、統計の特性があるのです。それはIT化、AI化が進んだ場合でもその労働者個人が持つ資質能力を指標的に示すことができないのであります。
例えばある人が自分だけの能力で書物を1冊書きます。もう1人はAIを駆使して同じ時間で3冊書いたとします。すると労働生産性の指標は3冊書いた人を優れた能力を持つ人として計算するようになっています。労働生産性の計算式は比較的単純な式(実質アウトプット÷総労働時間)で計算するのですが、この中に様々な調整機能が組み込まれています。たとえば製造業と小売業では同列で計算できませんよね。そこには調整があるのですが、それでも労働者の個人の能力を測る指標ではないのです。
私は不動産事業者ですから建設工事には深く関与します。工事現場の作業効率は日本と比べ、低く感じるし、特に仕上げ工事はカナダ人は全く苦手であります。床が波打っているとかコンセントのカバーがひん曲がってついているなんてざらです。コンクリート打設で泡が入ってしまったなどは職人の基礎トレーニングすらまともにできていないこともあり、その修正のために工事業者は無償でその修復を行うのです。これに時間がかかるわけです。わかりやすく言うとスキルがない人材が先に大まかな仕事を行い、品質チェックで総じてダメ出しとなり、親方が渋々無償でやり直す、これがこちらの典型的な業務スタイルです。親方は手直しが経験則でわかっているのでそれを吹っ掛けて見積もり、請求をします。これは工期が伸び、コストもかかるけれど最終的には取り繕ったものができる仕組みであります。
これは労働生産性の計算からすると悪い数字は出ません。親方の無償の修正作業が計上されないからです。
では日本はどうか。我々にとって絶対的な自信があるメードインジャパン。これは確かに総じて他に比べられないほどクオリティは高いと思います。何が違うのか、私なりに思うのは細部にわたるまでよく考えられ、細かい部品まで設計されている点だと思います。
先般、当地で「改造カー ショー」に行ってきたのですが、ずらりと並ぶ百台近い改造車の8割は日本車です。知り合い曰く、日本車は改造しやすく、改造用部品も多いとのこと。初期シビックとか日産シルビアの改造車はファンには垂涎ものでした。それは日本車のクオリティと汎用性が裏打ちされているとも言えるのかもしれません。
日本万歳だな、と言いたいのですが、1つだけ。上述の労働生産性の弱点を補う指標が全要素生産性(Total Factor Productivity、TFP)でこれは人間の純粋な生産性だけを抽出するようになっています。これによるとアメリカは一時下げましたが、今は回復期にあります。世の中の技術進歩が労働者に実装されたとみられているからです。本を書くのにAIを使ったのではなく、本を書く人がITやAIの進化により能力の底上げがあったということでしょう。
では日本。この数字が悪いのです。アメリカが年1.0%近い上昇に対して日本は年0.5%程度です。理由としては労働者能力の底上げをするというより現状を維持する防波堤的雇用になっている点が指摘されています。この時間帯のシフトを埋める、とかこのイベントで50人いるからかき集めろ、といった使い方であり、労働生産性の抜本的イノベーションが起きていないというわけです。
長くなるのでこれ以上、書きませんが、良き日本製の商品の裏側には低い労働生産性=手間がかかりコストがかかる体質がまだ残っているとも言えるのかもしれません。この辺りが割と数字に出にくい部分なのかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年6月23日の記事より転載させていただきました。







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