SpaceX株が暴落した。6月12日にナスダックへ上場し、公開価格135ドル、時価総額1.77兆ドルという史上最大級のIPOで市場を沸かせたばかりだった。初日の終値は160.95ドル、時価総額は2.1兆ドルに達した。ところが株価は6月16日の高値211.39ドルから、6月22日には154.60ドルまで下落した。高値からの下落率は約27%である。(Reuters)

この下げは、単なる利食い売りではない。MarketWatchは、SpaceXの株価が上場初日の終値を下回り、時価総額で約4000億ドルが吹き飛んだと報じた。公開価格はなお上回っているが、上場直後に買った投資家の多くは含み損を抱えることになった。これは、熱狂相場の第一幕が終わったことを意味する。(マーケットウォッチ)
きっかけは社債発行
きっかけになったのは、SpaceXが上場直後に社債発行へ動いたことだ。同社は6月22日、初の債券市場での資金調達に乗り出した。IPOで巨額の資金を集め、現金・現金同等物は1008億ドルに達しているにもかかわらず、短期のつなぎ融資を長期債務に置き換え、AIインフラや次世代ロケット「Starship」への投資を続けるという。(Reuters)
ここに投資家は違和感を覚えた。なぜ、これほど巨額の現金を持つ会社が、上場直後にさらに借金をするのか。答えは簡単である。SpaceXはもはや単なるロケット会社ではなく、Starlink、AI、宇宙データセンター、火星開発までを一体化した巨大投資会社になっているからだ。2025年の売上高は186.7億ドルと前年比33%増だったが、巨額投資のため最終赤字を計上している。(Reuters)
問題は、事業ではなく株価である。SpaceXは実体のないドットコム企業ではない。商業打ち上げでは圧倒的な地位を持ち、Starlinkという収益源もある。格付け会社も投資適格級の評価を与えている。だが、初日の時価総額2.1兆ドルは、売上高に対して100倍を超える水準だった。これは、現在の利益ではなく、未来の火星、未来のAI、未来の宇宙インフラをすべて織り込んだ価格である。(Reuters)
イーロン・マスクというカリスマの崩壊
つまりSpaceXの暴落は「会社の崩壊」ではない。「物語の崩壊」である。イーロン・マスクというカリスマ、民間宇宙開発という夢、AIブーム、個人投資家の熱狂が一体となり、株価は実力以上に先走った。その反動が来ている。
さらに見逃せないのは、議決権構造だ。ロイターによると、マスク氏は上場後もSpaceXの議決権の82%を保持している。一般株主は資金を出すが、経営を動かす力はほとんどない。株価が上がっている間は問題にならないが、下がり始めると、この構造は一気に不安材料になる。(Reuters)
では、バブル崩壊は始まったのか。答えは「まだ決まっていない」だ。SpaceXが今後、Starlinkで安定的なキャッシュフローを稼ぎ、Starshipを商業化し、AI投資を収益化できれば、今回の下落は単なる調整で終わる。しかし、株価が織り込んでいる未来があまりに大きいため、少しでも計画が遅れれば、株価はさらに修正される。
SpaceXショックが示しているのは、AI・宇宙・カリスマ経営者という3つの夢を掛け合わせた相場の危うさである。会社は本物でも、株価が本物とは限らない。むしろ本物の企業ほど、過大な期待を背負わされやすい。
SpaceXの暴落は、バブル崩壊の始まりというより、銘柄選別の始まりである。これから市場は、夢ではなく決算を要求する。火星に行く前に、まず地上の株主を納得させなければならない。






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