セブンの半額スムージーに並んだら負け

黒坂岳央です。

セブンイレブンのスムージー半額セールで混乱が起きた。本来は新規顧客獲得につなげるつもりの施策が、一人で5個、6個と買う人が現れた。

その結果、長蛇の列ができ、解凍機は1台しかないのに需要が殺到。買い占め、品切れ、店員の対応負荷増加である。SNSには「20分も並んだ」「待ち時間中に溶けてグニャグニャになった」という投稿も見られた。

メディアは「セブン本部が現場を無視した愚策」と報じ、SNSでは「一人あたりの個数制限をしておけ」と批判が出た。だが、問題はセブン本部ではなく、半額に飛びつく消費者にあると自分は考える。

この件に限らず「無料配布」とか「半額」といったセールに飛びつくと値段以上の損をしやすい。

winhorse/iStock

 

安売りに並んだら負け

欲しいものがたまたま安売りされていたら、それは買うべきだろう。だが多くの場合、人気商品ではなく企業は売りたいものを安く売る。つまり、欲しいものではなく、安いものを買ってしまうことになりがちだ。

実際、セブンがスムージーを半額にした理由はシンプルだ。売上を伸ばしたいからだ。

セブンイレブンジャパンの決算説明資料から、カテゴリー別売上動向を見ると、その理由が明らかになる。おにぎりは前年同期比102%、肉まん・中華まんは前年同期比98%、缶コーヒーは前年同期比99%。これらのメイン商品は目標水準か、それ以上の売上を確保している。

ところがスムージー・フローズンドリンクはどうか。前年同期比85%、目標対比92%。計画値に8ポイント届いていない。

この数字の意味は明確だ。セブンのメイン商品は黙っていても売れているから値下げしない。だがスムージーは違う。Z世代には人気と言われているが、実際は売上が計画値に届いていない。だからセブンは「安売り」というカードを切ったのだ。

つまり、セブルが半額にした理由は「消費者のため」というより「売りたい」からである。本当にスムージーが欲しくて、たまたま安売りで買ったなら何も問題はない。だが、安売り情報に反応して衝動買いは、経済的に損になりやすい行動である。

セール品を買うと損をする

有名な格言がある。「欲しいものが値段ならやめろ。悩む理由が価格なら買え」。つまり、欲しさと価格のバランスで判断するのではなく、「値段で迷っている時点で、その商品への本当の欲望がない証拠」だということだ。

セブンの行列に並んだ人たちは、何に迷っていたのか。「このスムージーが欲しい」ではなく、「安いから得」という判断だ。だが冷静に考えると、実際には安売りで買えた以上のコストを支払っている。

スムージーは生活必需品ではない。栄養やカロリー面でマイナス、買うために数十分の行列に並ぶ時間もマイナス。そして何より、支払った金額はたとえそれが定価の半額でも100%コストである。

野菜やお米を買うのと同じ食品カテゴリーでも、その性質は全く異なる。スムージーは一見、健康的に見えるが、空腹時に飲むと血糖値スパイクを引き起こしやすいため、本質的にはお菓子を安く買ってたくさん食べるのとあまり変わらない。しかも冷凍すると食感が損なわれるので、たくさん買うと短期間で食べきることになる。

時間コスト、カロリー、判断力の消耗など全てを計算すれば、「本当に欲しい時以外は買わない」という選択が最も合理的だ。

セール消費は「買い物ではなく娯楽」

「安いから買う」というのは「買い物」のようで本質は「娯楽」である。娯楽はそれ自体の楽しさとなるのが、そこをメタ認知できているかは大きな分かれ道だ。

筆者は毎年、百貨店の初売りセールでお菓子を買う。これは妻と出会ってからずっと続けている恒例行事で、最近は子供も一緒に参加している。

この買い物の本質は買い物ではなく、自分はゲームだと思っている。売り場コーナーへ走り、争奪戦をして、目当ての商品が買えるか、買えないか。その過程を家族と楽しむ。完全にただの娯楽だ。得られるのは「買えたという達成感」「チームプレイを通じた家族との思い出」「季節の儀式」である。

お正月で暇している。買う物や金額も事前に決めている。衝動性がない。お菓子なので数ヶ月持つので、ゆっくりと消費する。だから買い物で失うものは何もない。

子供は「買えたということよりも、みんなで早起きして買いに行く時間が楽しい。行列に並ぶ間のおしゃべりが面白い」といっている。だから正直、買えるかどうかは実はどうでもよく、目当ての品が買えなくても笑って流せるし、まったくストレスもない。

だが時々、目当ての品が目の前で売り切れたことに怒り出すお客を見る。「もっと数を準備しておけよ!」と店員に怒鳴っている人だ。「安売りで得したい」という気持ちが強すぎると、安く買えて得どころか、せっかくのお正月からイライラしてストレスを抱える分、損をしやすい。

「安いから買う」はコスパがいいようで、実は最もコスパが悪い。昔書いた「ガソリン値上げ前の駆け込み給油は損をする」という記事と本質は変わらない。

本当のコストは値札には書かれていない。時間や手間、衝動買いまで含めて考えるようになると、「安い」という言葉の見え方は少し変わってくるはずだ。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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