
こんにちは、自由主義研究所の藤丸です。
今月のIPOでも大きな話題となったSpaceXとイーロン・マスクですが、現在、SpaceXは宇宙輸送、特にロケット打ち上げの分野で圧倒的な地位にあり、「独占」に近いと言えるかもしれません。
果たして、その「独占」は、消費者にとって害のあるものなのでしょうか?
巨大企業による独占や競争制限を規制する法律として、アメリカには「反トラスト法」と呼ばれる法体系があります。
日本では、これに相当するものとして「独占禁止法」があり、その目的は、公正取引委員会のホームページで次のように説明されています。
独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。市場メカニズムが正しく機能していれば、事業者は、自らの創意工夫によって、より安くて優れた商品を提供して売上高を伸ばそうとしますし、消費者は、ニーズに合った商品を選択することができ、事業者間の競争によって、消費者の利益が確保されることになります。
公正取引委員会のHPから、「独占禁止法の概要」より抜粋
独占禁止法が問題にしているのは、単に企業が大きいことや、市場で高いシェアを持っていること自体ではありません。問題とされるのは、競争相手を不当に排除したり、新規参入を妨げたり、カルテルなどによって競争を制限したりする行為です。
しかし、上記の目的を達するために、「法律」による規制が本当に必要なのでしょうか。
そもそも、市場で高いシェアを持つことや、企業が巨大化すること自体は、「悪」ではありません。消費者に選ばれ、より安く、より優れた商品やサービスを提供した結果として企業が大きくなったのであれば、それは市場競争の成果ともいえます。これはむしろ、消費者にとって「有益」なことなのです。
そして、世界の歴史を見ても、誰もが「この企業の支配はずっと続く」と思ったような巨大な企業による独占状態はありましたが、やがて他の企業に取って代わられ、その独占状態は永続しませんでした。
まさに歴史は「盛者必衰」を示しています。
そこに、政府権力が介入する必要はないのです。
むしろ、「独占状態が次第に失われ、次の企業に取って代わられる市場の仕組み」を妨害しているのが政府である、と言えます。
なぜなら、政府は権力によって、ある特定の企業に特権を与えたり、その企業に挑戦する新興企業が参入できないように規制を課すことができるからです。補助金、免許制度、許認可、規制、関税、参入制限などは、政府だけが持つ力です。
このように、企業が、政治権力との結びつきによって利益や地位を守る仕組みは「縁故主義」と呼ばれます。
この縁故主義によって政府と癒着した企業は、市場の自然な仕組みによって新興企業に取って代わられにくく、長くその地位を守ることができます。
そして、政府の庇護によって、そのような安定した地位を確保できるため、消費者へのサービスの質は悪くなりがちであり、その価格は下がりにくくなる傾向があります。
したがって、本当に問題にすべきなのは「市場で成功した巨大企業」ではなく、「政府の力によって競争から守られた縁故企業」なのです。
競争を守るという名目で、政府の裁量が大きくなればなるほど、かえって政治と企業の結びつきを強め、市場の自然な新陳代謝を妨げる危険があるのです。
以下では、この「独占」に関連して、ドイツ人の社会学者であり歴史学者でもあるライナー・ツィテルマン(Rainer Zitelmann)博士の記事を紹介したいと思います。
「SpaceXは独占企業である――しかし、それはまったく問題ではない」という記事です。

ライナー・ツィテルマン(Rainer Zitelmann)博士
自由主義研究所では、ライナー・ツィテルマン博士の本『New Space Capitalism』を翻訳出版することになりました。8月に出版予定です。
『New Space Capitalismの日本語版の仮タイトルは、「なぜスペースXはNASAを超えたのか――イーロン・マスクと民間宇宙開発」です(仮なので、変更になるかもしれません💦)。
非常に興味深い内容なので、こちらもぜひお読みいただけると嬉しいです☺️
SpaceXは独占企業である――しかし、それはまったく問題ではない
SpaceXは近年、とりわけ2023年以降、世界全体の軌道投入ペイロード質量のおよそ80%以上を担ってきた。2025年だけでも、同社は2,200トンを超えるペイロードを軌道に運び、世界全体の軌道投入質量の80%以上を占めている。その背景には、高い打ち上げ頻度と、スターリンク関連のミッションがある。
SpaceXのS-1 IPO目論見書にも、「2023年以降、当社は毎年、世界全体の軌道投入質量の80%以上を打ち上げてきた」と明記されており、ミッション成功率も99%を超えている。こうした実績は、世界の打ち上げ市場においてSpaceXが圧倒的な地位を築いていることを示している。
すでに2023年には、著名な宇宙専門家ジェフ・ファウストが、SpaceNewsの記事「偶然の独占――SpaceXはいかにして(ほぼ)唯一の選択肢となったのか」で、この状況を指摘していた。
実際、いくつかの分野で、SpaceXは独占企業としての地位を確立している。経済的な意味での独占とは、必ずしも市場を100%支配していることを意味しない。むしろ重要なのは、「十分な競争が存在しないため、企業が自らの判断で価格を設定できる状態にある」という点である。
打ち上げ費用については、まさにこれが当てはまる。SpaceXは市場での強い立場を背景に、自社の原価に大きな上乗せをした料金を請求することができ、実際にそうしている。
一方で、独占にはもう一つの弊害がある。独占企業はしばしば動きが鈍くなり、革新性を失うという問題である。しかし、この点はSpaceXにはまったく当てはまらない。イーロン・マスクは、驚くほどのスピードと決断力で事業を進めている。彼を突き動かしているのは、競争相手の存在ではない。「自分が生きているうちに火星への定住を始めたい」という目標であり、そのために彼は時間と競争しているのである。
SpaceXの独占には、肯定的な面と否定的な面の両方がある。マスクが行ってきたように、まったく新しい製品や市場を生み出す場合、そこには既存市場で事業を行う場合とはまったく異なるリスクと条件が伴う。起業家がそうした大きなリスクを引き受けるのは、少なくとも一時的に、通常の利潤率を大きく上回る独占利潤を得られる可能性がある場合である。
アメリカの経済学者リチャード・B・マッケンジーとドワイト・R・リーは、著書『独占の擁護』の中で、次のように述べている。
「したがって、発展や進歩が何らかの体系的な形で見込まれる、より動態的な現実世界の経済においては、一定の超過利潤が生じなければならない。そして、その収益性の水準は、完全競争の環境で達成できる水準を上回っていなければならない」
彼らはまた、ヨーゼフ・シュンペーターにも言及し、次のように述べている。
「シュンペーターの分析の中には、最大限の経済成長に必要な『最適な独占』の理論が隠されている」
もっとも、この二人の経済学者は、独占を無条件に擁護しているわけではない。独占が経済成長に悪影響を及ぼす場合があることも認めている。
ただし彼らは、既存の製品をめぐる独占と、独占企業自身が新たに生み出した財やサービスをめぐる独占とを区別している。前者については、「その独占は、その財を創造し、その純価値を生み出すうえで何の役割も果たしていなかった」ため、否定的に評価しているのである。
独占利潤を得られる可能性は、革新を促すきっかけとなる。もちろん、競争は経済発展に欠かせない原動力である。しかし、ここでいう競争とは、経済モデルの中にしか存在しない「完全競争」や「完全市場」のことではない。現実の競争とは、一時的な独占的傾向によって弱められながらも、絶えず続いていく競争である。
いずれにせよ、歴史が示しているのは、どれほど強力に見える独占であっても、遅かれ早かれ革新と競争によって崩れていくということである。そして、やがてSpaceXも同じ運命をたどるだろう。
歴史には、一見すると揺るぎない独占のように見えながら、最終的には革新と競争によってその地位を失った企業が数多くある。
たとえばMyspaceは、2000年代半ばにソーシャル・ネットワーキングの分野を支配していた。2007年には、ガーディアン紙が「Myspaceは独占を失うことがあるのか」と問いかけたほどである。ところが、その後わずか数年でFacebookがMyspaceを追い抜き、今日ではMyspaceの存在感はほとんどなくなっている。
ノキアにも、同じようなことが起きた。2008年、フォーブスはノキアを「携帯電話の王」と呼んだ。
しかし、ノキアはスマートフォンの先駆者であったにもかかわらず、アプリの重要性を見誤り、サムスンとアップルに追い抜かれてしまった。そして市場シェアが大きく落ち込んだ後、2013年には、マイクロソフトがノキアの携帯電話事業を買収した。
ゼロックスもまた、かつてはコピー機市場のほぼ全体を支配していた。その影響力は非常に大きく、文書をコピーすることを「ゼロックスする」と表現するほどであった。
しかし、その地位は、キヤノン、リコー、コダックなどの企業との競争によって、少しずつ切り崩されていった。今日では、ゼロックスの世界市場シェアは2%未満にまで低下している。
コダックも同じである。同社はかつて、アメリカのフィルム市場で90%を超えるシェアを握っていた。しかし、デジタル革命の重要性を過小評価し、2012年には破産を申請するに至った。
インターネット検索におけるグーグルの支配でさえ、いまでは挑戦を受けている。私が最近、ある聴衆に対して、主にグーグルを使っているのか、それともChatGPTのようなAIツールを使っているのかと尋ねたところ、「依然として主にグーグルに頼っている」と答えた人は少数派にすぎなかった。
私は、遅かれ早かれ、政治家、ジャーナリスト、あるいは弁護士たちが、SpaceXに対する反トラスト措置を求めるようになるのではないかと懸念している。しかし、私はそのような措置にはまったく賛成しない。
SpaceXであれ、その他のどのような独占であれ、それに対処するために反トラスト法は必要ない。市場がそれに対応するからである。資本主義、競争、そして革新は、最終的にはあらゆる独占を終わらせるのである。
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最後まで読んでくださりありがとうございました!
編集部より:この記事は自由主義研究所のnote 2026年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は自由主義研究所のnoteをご覧ください。







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