イラン戦争については6月に歴史的な戦闘終結の合意がなされ、残された問題について話し合いを通じた解決を探るとされていました。ところが7月6-7日にかけ、この合意が破られ、イラン革命防衛隊はホルムズ海峡を通過する商船に対して一方的な攻撃を加えました。これに対してアメリカがブチ切れ、戦闘終結の合意が実質的に破棄されたとして再び緊張が高まっています。

イラン最高指導者モジタバ・ハメネイ師(Wikipedia)とトランプ大統領(ホワイトハウス)
戦闘終結の合意は世界に安ど感をもたらしたのにそのわずか数週間後にこのような形で反故にされてしまうのはがっかりであり、情けなさすら感じます。今回の問題について掘り下げてみます。
イラン革命隊が商船を攻撃した理由はホルムズ海峡の実効支配を主張するためとされます。一部の商船がホルムズ海峡を通過するにあたり、イランの指定したイラン寄りの海峡を通らず、対岸のオマーン寄りを通過したことに反発したとされます。とりもなおさず、イランは同海峡の支配権を狙い、イランの言うとおりに通行しない商船は攻撃対象とするということになってしまいます。
イランの究極的な目的は通行料徴収とされます。あるコメンテーターが「通行料が徴収されたとしても原油価格の価値を考えると大したことはない」という発言がありました。これには私は耳を疑ってしまいました。価格が安ければ通行料があってもしょうがないという発想自体が全く論理的ではなく、許されるものではありません。
私がなぜこれに固執するかといえば仮にイランがそのような通行管理権を主張し、それが世界で黙認されるようになれば同様の行為を行うケースが後を絶たなくなるからです。例えばジプチとイエメンの間にあるバブ エル マンデブ海峡はホルムズ海峡の39キロ幅よりもさらに狭い30キロしかありません。ここで仮に通行料を徴収するとすれば中東からの原油の輸出はほぼすべて通行料徴収の対象になってしまうのです。
更に狭いのがタンカーや商船の交通の要衝とされるマラッカ海峡で最も狭い部分はシンガポール近くのフィリップ水路あたりでわずか2.8キロしかないのです。
なぜイランは通行料を主張しているかといえばイランが国連海洋法条約(UNCLOS)に加盟していないからです。この条約では公海と公海をつなぐ部分を国際海峡と定め、そこには通過通行権が認められているのですが、イランはその条約を批准していないから関係ない、という立場なのです。ご承知の通り、沿岸国は12カイリ(約22キロ)の領海権があります。ホルムズ海峡やバブエルマンデブ海峡、マラッカ海峡は狭すぎて公海がなく、領海域になってしまうため、公海と公海を結ぶそれらの狭いエリアを一種の通路として定めているわけです。
イランの主張は屁理屈であり、身勝手そのものであります。アメリカがブチ切れるのも当然で、トランプ大統領はカーグ島をアメリカ軍が占拠することも視野に入れているようです。それは至極当然の流れかもしれませんが、アメリカ軍がそこに常駐し、監視を継続的にするのは負担が大きく、またリスクも伴います。アメリカとしてはそこまでコミットしたくないというポジションではないかと思います。
一方、パンドラの箱を開けたのはアメリカではないか、という見方もあり、トランプ氏としてはどう収拾させるかが中間選挙がそろそろ視野に入ってくる中で最大のイシューとなるとみています。
アメリカとイランの話し合いは一筋縄ではいかないことはわかっていましたので散発的な交戦はあるだろうと予想していましたが、今回のイランの蛮行は合意そのものを覆してしまう行為であり、世界経済への心理的圧迫も含め、暗雲となってしまいます。
ハメネイ師の国葬が7月9日までとなっており、外交も一切止まっています。よって国葬明けにイラン政府が革命防衛隊を制御し、アメリカとの対話で収拾させることができるかがキーになるかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月9日の記事より転載させていただきました。







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