内政、経済、外交政策などを見ていると、「日本の常識」が「世界の常識」とかけ離れていることが多いと思います。「世界」というのは、「まともな主要国」の意味です。
皇室典範改正案が10日、衆院を通過しました。①旧宮家の一般男性を養子に迎え、皇族男系による皇位継承を維持する、②女性・女系天皇を排除し、国民の人気が極めて高い「愛子天皇」を忌避する——が柱です。高市首相も同意するこの「立法府の総意」に、多くの国民は同意していそうもありません。
海外の常識は「男女の区別なく、長子が皇位を継承する」なのに、日本はいまだに男性優位で皇位を継承していくつもりです。日本の非常識です。それを後押しする学者、専門家も少なくなく、そう発言することが職業になっていると思いたくなります。
さらに中曽根元外相が「愛子天皇になったら結婚する人もいない。男性を産めとのすごいプレッシャーがかかるからだ」という暴言を吐きました。愛子天皇への道を排除するための詭弁です。すぐさま「悠仁天皇の場合でも、結婚相手の女性に同じプレッシャーがかかるはずだ」との批判を浴びました。こんな感覚で外交をやっていたのかと、空恐ろしくなります。

高市政権の面々 首相官邸HPより
対米追従は自殺行為と仏学者が警告
フランスの歴史人口学者で、歴史の大きな転換で何度も予想を的中させてきたE.トッド氏が「日本の対米追従は自殺行為だ」(月刊『文藝春秋』最新号)で述べています。トランプ米大統領による強引かつ乱暴なイラン戦争の開始、同盟関係を踏みにじる外交、貿易・関税政策に、多くの国は批判的です。
対米依存から転換して、新たな同盟関係を模索する動きが加速しています。高市政権は対米従属にのめり込んでおり、多極化、多軸化する世界史の転換期をこれで乗り切れると思い込んでいるようです。
官民一体の投資計画は多くが失敗する
高市政権は、経済・財政政策では官民一体で17分野・370兆円の投資(~2040年度)計画により、「日本経済を強くする。経済成長あっての財政」を看板に掲げています。官民一体プロジェクトは失敗が多い。ですから、高市政権では財政赤字が拡大するとみられ、円安が進んでいます。
新聞各紙の社説は、政府と民間が資金を出し合う官民ファンドの失敗例を挙げ、政府のリスクが大きいと批判しています。海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)の累積損失は25年度末で540億円で、深刻な事態に陥っています。
「政府がリスクを負って出資し、それを呼び水として民間の投資を促す計画だったのに、投じられた資金の大半が政府出資だった。17分野の投資も、市場の変化が早く、官の関与は向かない」(日経)。
読売の論調も厳しい。「13年に政府が策定した日本再興戦略で経産省の傘下に多くのファンドが設立された。誰が責任を負うべきか厳しく検証しなければならない」「農水省傘下のファンドは累積213億円の赤字、国交省のインフラ輸出ファンドは赤字が950億円に膨らんだ」と指摘しています。
安倍政権の「日本再興戦略」といい、高市政権の「17分野投資」といい、新政権になると、同じような計画が持ち出されます。
高市首相の本心はインフレ歓迎
財政赤字が膨張する恐れがあると、円安が進みます。そんな時に介入や「断固たる措置を取る」などと口先で警告しても、円安を止められるはずはありません。正直に「インフレで税収が増えるので、円安によるインフレは歓迎なのです」と、高市首相は本心を語ったらよいのです。
「好況時には予算を抑制する」「インフレ時には金利を上げる」「企業業績が堅調で税収が史上最高(25年度84.2兆円)なら、増収分は優先的に国債償還に充てる。積極財政なんて口に出さない」は、まともな国の常識です。正反対のことを続ける財政・金融政策は、日本の非常識です。「骨太の方針」では、「適切な金融政策が非常に重要である」と書き、日銀の利上げをけん制し、それが円安要因になっています。
国際通貨基金(IMF)は中東情勢の悪化に伴い、「26年の世界経済成長率(実質)予想を下げ、3.0%に、日本は0.6%(27年度は0.7%)」と発表しました。「日本の低成長率」は世界の常識なのに、高市政権は積極財政で成長率が上がり得ると、非常識なことを主張しています。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年7月10日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。







コメント
以下の部分を読んで、この表題、まったくその通りだと思いました。
> 国際通貨基金(IMF)は中東情勢の悪化に伴い、「26年の世界経済成長率(実質)予想を下げ、3.0%に、日本は0.6%(27年度は0.7%)」と発表しました。「日本の低成長率」は世界の常識なのに、高市政権は積極財政で成長率が上がり得ると、非常識なことを主張しています。
「『日本の低成長率』は世界の常識」であることはその通りでしょう。現に日本のGDPは1995年以来、全然成長しておりません。では「『積極財政で成長率が上がり得る』は『非常識なこと』」でしょうか。こちらも経済の世界では「常識」だと思うのですが。
ご自身も、このすぐ上に書かれていますよね。
> 「好況時には予算を抑制する」「インフレ時には金利を上げる」「企業業績が堅調で税収が史上最高(25年度84.2兆円)なら、増収分は優先的に国債償還に充てる。積極財政なんて口に出さない」は、まともな国の常識です。
この双方の引用部を重ねますと、「日本は低成長率だが、経済を冷やすべき好況状態にある」という論理が導き出されるのではないでしょうか。つまり、「日本は低成長率でなければならない」ということですね。
これが世界の常識なのでしょうか? 「現実の姿として『日本が低成長率である』」ということは世界の常識といってもよいでしょうけど、「日本は低成長率でなければならない」ことが世界の常識であるようにはとても思えないのですね。もちろん、日本の国内産業(特に鉄鋼や自動車)との競合を恐れる米国(得にトランプ氏)にとっては、「日本は低成長率でなければならない」が常識なのかもしれませんけど、日本にしてみればそれでは困る。これが現実ではないでしょうか。
日本人の暮らしを考え、税収を増やして政府財政のプライマリーバランスを目指すなら、日本は景気を良くしてGDPを拡大することこそ、政府が目指すべき方向であるはず。「企業業績が堅調で税収が史上最高(25年度84.2兆円)」なら、この状態がいつまでも続くように、経済をコントロールしなくてはいけないのですね。
ジャーナリズムの一つの役割が権力の監視であって、政府批判も必要であることは認めますけど、政府を批判されるような状況に追い込むことは、全然その役割ではない。我が国のメディアの一部には、日本が困ったことになることを望むような論調が、時としてみられることは、まったくおかしなことと言わざるを得ません。
医者の役割は病気を治すことで、病気を流行らせることではないのですね。政府に批判的なメディア、評論家、野党関係者は、ここを間違えないようにしなくてはいけません。
経済政策の記述については、議論の前提そのものを揺るがす重大な混同があると指摘せざるを得ません。
本稿は「17分野・370兆円」を、あたかも政府が370兆円をそのまま支出する巨大な官民ファンドであるかのように扱っています。しかしこれは、政府公式資料の記載と一致しません。
2026年6月24日の経済財政諮問会議・日本成長戦略会議合同会議で示され、6月30日の「日本成長戦略(案)」にも盛り込まれた内容によれば、370兆円超という数字は、17の戦略分野を細分化した62の「主要な製品・技術等」について、2040年度までの約15年間に見込まれる**官民合計の累積投資額**です。政府担当部局が主要企業や業界団体への聞き取りを行い、市場の伸び率なども加味して積み上げた試算であって、確定した支出額でも、企業が実行を確約した投資額でもありません。政府と民間の負担割合は分野ごとに異なり、全体としての内訳は公表されていません。
つまり、「政府が370兆円を投じる」わけでも、「新設の官民ファンドに370兆円を出資する」わけでもなく、補助金・税制優遇・政策金融・規制改革・公共調達などを組み合わせて民間投資を誘発する、長期の産業政策ロードマップの集計値というのが正確な位置づけです。半導体工場、データセンター、通信網、医薬品のR&D、次世代エネルギー、造船設備などへの民間企業自身の投資見込みも、この数字に含まれています。
この点を踏まえると、本稿がクールジャパン機構や農水省・国交省傘下ファンドの累積損失を根拠に「官民一体の投資計画は多くが失敗する」と論じ、それをそのまま370兆円計画への批判に接続している部分には無理があります。前者は政府が実際に出資し、会計上の損益が発生する個別のファンドです。後者は税制や規制改革を通じて民間投資を後押しする広範な政策の積算値であり、会計上の「損失」という概念自体が当てはまりません。過去の官民ファンドに失敗例があることは、370兆円全体が同種の仕組みであり同じように失敗することの証明にはなりません。両者を同列に扱うのは、比較対象を誤っていると言わざるを得ません。
そして、「この計画によって財政赤字が拡大するから円安が進んでいる」と断定するのも飛躍があります。370兆円の大部分を政府支出とみなす前提が誤っている以上、その数字から財政赤字の拡大量を導くことはできません。前提が崩れれば、そこから引き出された因果関係の推論もまた成り立たなくなります。
加えて、「好況時には予算を抑制し、増収分は国債償還に充てるのがまともな国の常識」として積極財政を「日本の非常識」と断じる点も、現実の産業政策の潮流とは乖離しています。米国のIRAやCHIPS法、欧州、中国をはじめとする主要国は、GX・DX・半導体・AIといった戦略分野に対し、政府が巨額の補助金や税制優遇を投じて民間投資を強力に引き込む「新しい産業政策」を断行しています。「官の関与は向かない」という市場放任の発想は、いまや主要国においても過去のものになりつつあります。