イスラエルは第二の南アフリカになるのか:民主党大物が突きつけた「制裁」というタブー

米民主党内で、イスラエルへの姿勢をめぐる路線対立が新たな局面を迎えている。かつてオバマ政権の首席補佐官を務め、駐日米国大使も歴任した民主党重鎮のラーム・エマニュエル氏が、テルアビブ大学での演説でイスラエル批判を展開し、注目を集めている。

テルアビブ大学で講演するエマニュエル氏 同氏Xより

エマニュエル氏、対イスラエル制裁を提言

エマニュエル氏は演説の中で、ネタニヤフ政権下でのイスラエルが「スタートアップ国家」から「現代のスパルタ」へと変貌したと厳しく評した。

さらに踏み込んで、ヨルダン川西岸での入植地拡大や、パレスチナ人の農地焼き討ちといった行為への対応として、具体的な制裁措置を提案した。パレスチナ市民や財産を攻撃したイスラエル人、そうした暴力を支持する当局者、違法入植地を建設・融資する企業や銀行を制裁対象にすべきだと明言している。加えて、米国がイスラエルの防衛予算を事実上補助してきた構造そのものを終わらせ、他の同盟国と同じ商業条件で米国製兵器を購入させるべきだとも主張した。

エマニュエル氏はまた、パレスチナ自治政府ではなくアラブ諸国側に責任を負わせる「23か国解決策」という独自の構想も提示し、単純な二国家解決の限界を超える枠組みを模索している。ただし、これはイスラエルを擁護する側面も強く、「川からイスラエルの海まで」というスローガンを掲げる勢力への否定も明確にしている点で、単純な「イスラエル批判」とは一線を画す複雑な立場表明と言える。

ニューサム知事も「アパルトヘイト国家」発言

同時期、2028年大統領選の最有力候補の一人と目されるギャビン・ニューサム加州知事も、Politicoのジョナサン・マーティン記者とのインタビューを含む一連の発言で波紋を広げた。3月初旬、ニューサム氏はネタニヤフ首相を「刑務所行きを免れようとしている」「西岸併合を求める強硬派に突き上げられている」などと評し、一部の論者がイスラエルを「アパルトヘイト国家」と形容するのは「妥当だ」と発言した。さらに、将来的な対イスラエル軍事支援の見直しは避けられない選択になり得るとの見解も示した。

もっとも、この発言はユダヤ系団体などから強い反発を招き、ニューサム氏は後日、Politicoのインタビューでこの文脈での発言を「後悔している」と釈明。あくまでニューヨーク・タイムズ紙のトーマス・フリードマン氏のコラムを引用した表現だったとし、「イスラエルという国家を敬愛している」と強調するなど、事実上の軌道修正を図っている。

かつての「親イスラエルタカ派」が転向する構図

興味深いのは、エマニュエル氏もニューサム氏も、これまでイスラエル支持で知られてきた人物だという点だ。エマニュエル氏はイスラエル建国期に戦った父を持つ。ニューサム氏も2023年10月のハマス攻撃直後にイスラエルを訪問し、AIPAC(米イスラエル公共問題委員会)からの献金を拒否しつつも伝統的に親イスラエルの立場を取ってきた政治家である。

その両者が、ガザ戦争の長期化とイランをめぐる軍事作戦の余波の中で、公然と対イスラエル政策の見直しに言及し始めたことは、民主党内の地殻変動を象徴している。米国内の対イスラエル世論は急速に悪化しており、2022年に55%あった好感度は37%まで落ち込んだとエマニュエル氏は指摘する。この数字が正確かどうかは検証が必要だが、少なくとも党指導部クラスの人物がこうした言説を公然と語り始めたこと自体が新しい現象だ。

かつて南アフリカのアパルトヘイト政権に対して、米国が経済制裁という「ハードパワー」を用いて体制転換を後押しした歴史を想起させる文脈で、今回のエマニュエル氏の制裁提言は語られている。冷戦後期の対南ア制裁が最終的にアパルトヘイト撤廃への外圧として機能したように、対イスラエル制裁論が今後の民主党の外交政策における主流の選択肢となるのか、それとも一部の急進的な提言に留まるのかは、2028年大統領選に向けた党内力学を占う重要な試金石となりそうだ。

今日、私はテルアビブで米イスラエル関係について、その現状と今後の道筋について講演しました。私の完全な準備した発言全文はこちらで読めます:米国とイスラエルの関係:現状と今後の展望 テルアビブ大学での私のスピーチ

The US-Israel relationship: where it stands today and the road ahead
My speech at Tel-Aviv University

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント