日経に東京都の空き家が90万戸あり、更に空き家予備軍が100万戸あると報じられています。記事はその対策を、と言うことですが、中身は大したことがなく、特段振るった内容でもありません。それはアイディアがないからでしょう。

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何故空き家が生まれるのか、まずここを考えてみましょう。10中8,9の人は「老後に住むところが無くなったら困るじゃないか」です。よって死ぬまでその家を持ち続けるのです。特に今、70歳台中盤から上の年齢の方々は高度成長期を謳歌された方で、その際に政府が強力な持ち家政策をとったのをよく覚えていらっしゃると思います。戦後のどさくさから「もう戦後ではない」という成長過程において重要課題の一つが持ち家促進でありました。これがマインド的に正しいことだと頭に刻み込まれているのです。ちなみにこの持ち家比率は世界の先進国を見るとほぼ一緒でだいたい60%程度ちょっとが頭打ちになります。これ以上にはほとんどなりません。
もう1つは賃貸に対する独特の認識があります。まず、高齢になると賃貸を借りにくいとか、年金暮らしで賃料は払えないといったケースです。一方で企業年金などを受け取れるようなリッチな高齢者は早期に有料老人ホームに入居し、悠々自適となりますが、これも考えるまでもなく、賃貸の一種であります。このあたりは案外、都合よい解釈でもあり、ライフスタイルの変化とも言えるかもしれません。
いずれにせよ東京都民に限らず日本全国、持ち家にしがみつくのは世の常であります。
さて、視点を変えてみましょう。近年、財務省がホクホクしている一つの理由は税収が増えているからでその一つに相続税があります。令和8年の相続税は3.8兆円ですが、14-5年前まで1.5兆円程度だったことからみて倍増以上であります。また年々その金額は増え続け、まるで暴騰する株価のチャートのような感じとしても言い過ぎではありません。
相続税は昔はごく一部の人だけの問題とされていましたが、現在ではお亡くなりになる方の10人に1人以上が相続税が発生する資産持ちになっています。
この一つの仕組みの特徴が老夫婦のうち、片方がお亡くなりになった場合、もう片方が相続するので夫婦間の1.6億円の控除額がキックインし、相続税があまり発生しないのです。ところがその片親もなくなるとその子供に相続されるので3000万円プラス600万円の縛りが発生してしまうのです。現在は年齢的に両親が無くなる時期に入っていることもあり、相続税が増えやすくなる原因の一つとなります。もう1つは言うまでもなく、路線価が上がっているので相続税評価額が上がっていることがあります。
亡くなるまで家を持ち続け、相続人はわずかの控除額しかなく「相続税が払えない」という根本的な社会循環上の問題が生じているのです。死ぬまで家を持ち続けたい高齢者と相続税を払う人が別人格ということが一つのトリックとも言えます。
お前はどう思うのか、と言われると基本的には相続税を少なくする様、努力する方法はなくはないと思います。金持ちなら資産管理会社を作るのはほぼ常識と言ってもよいかもしれません。日本は海外のようにファミリーオフィスが浸透していないし、税制上、節税になりにくいことはありますが、それでも様々なメリットはあります。では一般の人ならどうするか、です。
私が思う一つの方法は割と元気なうち、例えば70歳ぐらいの時点でお住まいの不動産を第三者に売却します。そしてその住宅を死ぬまで住める終身建物賃貸借契約でリースバックする手法があると思います。要はお年寄りにとって不安なのは住むところとお金なのです。その両方を解決するのがこの方法です。
70歳でリースバック契約付き不動産売買をしたとしましょう。仮に不動産の額は8000万円です。それに対して今後、賃料を月々35万円払います。8000万円から取得原価を差し引いたキャピタルゲイン額に対して20%程度の税金が課されます。今の不動産市況から持ち家の資産額が2倍になっているとすれば4000万円の20%ですから800万円が税金。よって7200万円が手元に残ります。これを運用しながら賃料を払っていくことで余生を過ごすところとお金と言う両方をゲットできるのです。
これを聞いた不動産に詳しい方は「現実はそんなに甘くない」というはずです。私のポイントは今、日本にありそうで出来ない仕組みを国や地方自治体が主導しながら新たに作るという話なのです。これだけ空き家問題が切実になっているなら制度を作り、支援するのが政府の役目ですよね。ところが現状の高齢者向けリースバックは不動産屋がウッシッシと笑いが止まらないほど馬鹿儲けできる仕組みなのです。それを社会制度的に変えていく、それが必要なのです。
もちろん相続だけを考えると現金と不動産では不動産の相続税の方が安く計算されます。ただ、私は親は好きなだけ使うべきだと思っています。つまり不安で1円でも安いところを探し回る生活より老後を少しゆったり過ごせる資金的余裕は幸福感を増大させるでしょう。
では不動産を買う第三者からすればどんなメリットがあるかと言えば賃料を取りやすいこと、そしてほぼ建物の価値がない物件から賃料収入を生み出すことが可能になるのです。特に戸建ての場合は将来、本人死亡により契約が消滅した時点で古家の解体と売却ないし、再開発をすることができます。そもそも古家の買い取り時点で土地の価値しかないのです。つまり上物の価値はゼロ。なのにゼロ価値の上物から毎月しかるべき賃料が入るという泥棒のようなビジネスができるのに誰もやらないのですね。
仮に70歳から20年も生きてくれれば土地代を含め全額回収できる一方、借りている方は死ぬまでにほぼ使い切る計算をしやすいことになります。
もちろん、このシナリオは不動産の立地次第です。ただ、地上げをやって来た私の観点から見るとある程度お金を手にした高齢者はより楽な老人ホームに入るケースが増えるので実際には借主が自ら賃貸借契約を放棄しやすいともいえ、不動産会社は土地を取得しやすいことはあるかもしれません。
今日のポイントは相続税を払うなら自分で使え、です。そして所有者が分からない不動産とか、空き家問題を解決する一つのヒントにはなるかと思います。金を取りたい財務省と長く住みたい高齢者が生み出す空き家問題という願望の相違が問題の根源であるような気がします。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月15日の記事より転載させていただきました。







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