2028年米大統領選までまだ2年以上ある。しかし、最初の予備選州であるニューハンプシャー州で実施された最新の世論調査は、民主党内で起きつつある変化を鮮明に映し出した。
ニューハンプシャー大学調査センター(UNH Survey Center)が公表した調査によれば、民主党予備選の有力候補の支持率では、ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)下院議員が22%で首位に立った。ピート・ブティジェッジ前運輸長官が21%で続き、2024年民主党候補だったカマラ・ハリス前副大統領はわずか5%にとどまっている。AOCは2月調査から7ポイント伸ばし、逆にハリスやギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事は支持を落とした。

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)氏とゾーラン・マムダニNY市長
ニューハンプシャー州は「民主党の登竜門」
この結果を単なる地方世論調査として片付けることはできない。
ニューハンプシャー州はアイオワ州と並び、長年にわたり民主党予備選の最初期州として特別な位置を占めてきた。前回の予備選では民主党全国委員会(DNC)がサウスカロライナ州を初戦に位置付けたものの、ニューハンプシャー州は依然として独自に早期予備選を実施しており、多くの候補者にとって重要な「勢い」を測る州であり続けている。
同州には無党派登録が非常に多いという特徴がある。ニューハンプシャー州では無党派層でも民主党予備選に参加できるため、候補者には党支持者だけでなく穏健派や独立系有権者にも訴求する力が求められる。
また、州全体としてはリベラル一辺倒ではなく、財政規律や小さな政府を重視するニューイングランド的な政治文化を持ちながら、社会問題では比較的リベラルという特徴がある。そのため、全国民主党の左派がそのまま支持される州では決してない。
2020年予備選では「穏健派」が競り勝った
実際、2020年民主党予備選ではバーニー・サンダースが約26%で勝利したものの、ピート・ブティジェッジも約24%と僅差で続き、エイミー・クロブシャーが約20%、エリザベス・ウォーレンが約9%、ジョー・バイデンは8%台と苦戦した。進歩派だけでなく穏健派候補も十分戦える州であることが、この結果からも分かる。
こうした州でAOCが首位に立った意味は小さくない。
AOC躍進の背景
今回の調査で最も目立つのは、「世代交代」への期待である。
AOCは1989年生まれで、民主党全国でも若い世代を代表する政治家として知られる。一方、ハリスは2024年大統領選敗北以降、党内で存在感を大きく低下させている。
民主党支持者の間では、
- トランプ時代への対抗軸
- 若い世代への訴求力
- SNS時代に適応した発信能力
を重視する傾向が強まっており、その受け皿としてAOCが支持を集めていると考えられる。
ただし22%という数字は「圧勝」ではない。
ブティジェッジとの差はわずか1ポイントであり、約3割の有権者が依然として態度を決めていない。2028年候補者レースは依然流動的である。
穏健派不在という民主党の課題
興味深いのは、現在の民主党で穏健派候補が決定打を欠いていることである。
2020年にはブティジェッジやバイデンが中道路線の代表格として存在した。しかし現在、
- ハリスの支持低迷
- ニューサムの失速
- ブティジェッジの伸び悩み
という状況が続いている。
その結果、進歩派を代表するAOCが相対的に恩恵を受けている構図が浮かび上がる。
もっとも、ニューハンプシャー州はあくまで一州にすぎず、サウスカロライナ州やネバダ州、スーパーチューズデーの州とは有権者構成が大きく異なる。黒人票やヒスパニック票が大きな影響力を持つ州では、今回と異なる結果になる可能性も十分ある。
「反トランプ」から「ポスト・トランプ」へ
今回の世論調査は、民主党支持者が単に「トランプに勝てる候補」を探している段階から、「次世代の民主党を担う人物」を模索する段階へ移り始めていることを示唆している。
ニューハンプシャー州は歴史的に「候補者を育てる州」と言われてきた。その州でAOCが初めて首位に立ったことは、民主党内の世代交代が現実味を帯び始めた象徴的な出来事と言えるだろう。
もっとも、2028年民主党候補指名争いはまだ始まったばかりである。今回の調査は最終的な勝者を占うものではなく、「民主党支持者が何を求め始めているのか」を映し出す一枚のスナップショットとして読むべきだろう。







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