「副首都法案」で自民からも孤立した高市・維新グループ

日本維新の会が執念を燃やした「副首都」創設法案をめぐり、国会は会期末まで大混乱した。野党が抵抗しただけではない。自民党内からも、維新への不満と、それを優遇する高市早苗首相への反発が噴き出し始めている。

もはやこれは、自民党と維新の連立政権ではない。高市首相と維新執行部が、自民党本体から離れて暴走する「高市・維新グループ」と呼ぶべき状態である。

国策を装った大阪救済法案

副首都法案は、表向きは首都直下地震などに備える危機管理政策である。東京一極集中を是正し、首都機能を補完する都市をつくるという説明だけを聞けば、もっともらしいが、国会審議で目立ったのは国家の危機管理ではなく、大阪都構想の住民投票をいつ実施するかという維新の党利党略だった。

維新は、来春の統一地方選挙と大阪都構想の住民投票を同時に行うことを検討している。都構想は過去2回、住民投票で否決された。それでも3度目に挑戦し、選挙と一緒に実施すれば「盛り上がる」というのだから、住民自治というよりイベント興行に近い。

立憲民主党が「大阪の大阪による大阪のための法案」と批判したのは、珍しく的を射ている。東京一極集中を是正するための法案が、いつの間にか大阪の選挙対策法案に化けた。副首都をつくるはずが、維新の副選挙本部をつくっていたのである。

維新を止めるために野党が団結

国民民主党と公明党は、地方選挙と住民投票の同時実施を禁じる法案を提出した。立憲民主党や参政党も反対に回り、普段は政策も利害もばらばらな野党が、維新への反発だけで結束した。野党をまとめる政治力が維新にあるとは知らなかった。

自民党は、住民投票と選挙が重ならないよう「最大限調整する」という付帯決議案まで示し、野党との折衝に追われた。維新が持ち込んだ大阪都構想の後始末を、自民党が国会でさせられた格好である。

会期末を目前にしても法案成立の見通しが立たず、国会の大幅延長まで取り沙汰された。国民生活に直結する重要法案ではなく、維新の看板政策を通すために国会を延長するというのだから、優先順位が逆転している。

自民党議員は維新の下請けではない

自民党内で不満が高まるのは当然である。維新は連立与党として自民党を支えるより、自党の政策を自民党に実現させることを優先している。法案が通れば維新の手柄となり、混乱すれば自民党が野党との調整を引き受ける。これほど便利な連立相手はない。

自民党の若手議員が「維新との連立を解消しろとみんな言っている」と明かし、「この熱量はいずれ首相への不満になっていく」と語っている。自民党議員は、維新の大阪政策を実現するために選挙を戦ったわけではない。まして大阪都構想の3度目の住民投票を盛り上げるために、国会議員になったわけでもない。

それでも高市首相は維新を重視し、その要求に応え続けている。維新との関係を守るためなら、自民党内の不満は後回しということなのだろう。

高市首相は自民党内の支持基盤を崩している

高市首相にとって本当に危険なのは、野党から批判されることではない。自民党議員から「維新と一緒にやっていられない」と思われることだ。首相は維新を味方につけたつもりかもしれないが、維新との距離を縮めるほど自民党との距離が広がっている。

高市首相と維新執行部は、政策実現に熱心な改革勢力を演じている。だが、周囲から見れば、自分たちだけで決めた政策を国会と自民党に押し付ける小集団にすぎない。自民党と維新の連立ではなく、高市・維新グループによる自民党の乗っ取りである。

乗っ取ったつもりでいたら、自民党から捨てられる可能性もある。副首都法案で維新は大阪の地位を高めたかったのだろうが、実際に進んだのは永田町の中の高市・維新の孤立だった。副首都はできても、高市・維新グループの居場所はなくなりつつある。

 

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