女優の川口春奈さん(31)と、サッカー日本代表の板倉滉選手(29)が8月2日、結婚と第1子の妊娠を発表しました。
2人は連名の文書で結婚を報告し、川口さんが妊娠していることも公表しました。「無事に生まれてきてくれることを願いながら、日々穏やかに過ごしていけたら」とつづり、支え合いながら笑顔の絶えない家庭を築いていきたいと抱負を語っています。
欧州の名門アヤックスでプレーする日本代表主将と、映画やドラマ、CMで活躍する人気俳優。スポーツ界と芸能界をつなぐ華やかな結婚として、多くの祝福が寄せられています。
しかし、2人の年齢に目を向けると、この結婚は現代日本の晩婚化と少子化を考えるうえで、極めて象徴的でもあります。

川口春奈さん
31歳と29歳は、もはや「晩婚」ではない
厚生労働省によると、2025年の平均初婚年齢は夫が31.0歳、妻が29.7歳でした。第1子を出産した母親の平均年齢も31.0歳です。川口さんと板倉選手の年齢は、現在の日本における結婚と第1子出産の平均像に、ほぼ重なっています。
30年前の1995年には、平均初婚年齢は夫28.5歳、妻26.3歳でした。それが2025年には夫31.0歳、妻29.7歳となりました。夫は2.5歳、妻は3.4歳上昇したことになります。
したがって、川口さんの31歳での結婚・妊娠は、かつての感覚では「遅い」と受け止められたかもしれませんが、現在では特別なことではありません。むしろ「30歳前後で結婚し、その後に第1子を迎える」という現代日本の標準的なライフコースを映しています。
晩婚化は「結婚したくない」からとは限らない
晩婚化というと、若者の価値観が変化し、結婚への関心が薄れたためだと説明されることがあります。しかし、実際にはそれほど単純ではありません。
進学期間の長期化、就職後のキャリア形成、住宅費や教育費への不安、仕事と子育てを両立できるかという懸念など、結婚や出産を決断するまでに乗り越えなければならない条件が増えています。
国立社会保障・人口問題研究所の調査でも、理想の数の子どもを持たない理由として「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が最も多く挙げられています。また、晩婚化を背景に、夫婦が最終的に持つ子どもの数も減少しています。
川口さんと板倉選手の場合も、俳優と海外サッカー選手という多忙な仕事を続けながら、離れて暮らす時間を乗り越えてきました。2人ほどの知名度や経済力があっても、仕事と家庭のタイミングを合わせることは簡単ではなかったはずです。
まして、雇用や所得の先行きが不透明な一般の若者が、「もう少し生活が安定してから」と考えるのは自然なことです。その「もう少し」が積み重なり、結婚や出産が30代へと後ろ倒しになっています。
結婚は増えても、出生数は減り続ける
2025年の婚姻件数は48万9119組で、前年より4027組増えました。2年連続の増加であり、明るい兆候には違いありません。
しかし、同じ年の出生数は67万1236人と過去最少を更新し、前年より1万4937人減少しました。合計特殊出生率も1.14まで低下しました。婚姻数がわずかに回復しても、出生数の減少にはまだ歯止めがかかっていません。
そもそも、婚姻件数は1972年の109万9984組をピークに長期的な減少傾向にあります。2025年の約49万組は、ピーク時の半分にも満たない水準です。
結婚する世代そのものの人口が減っているうえ、結婚年齢が上昇すれば、第2子、第3子を持つために残された時間も短くなりやすくなります。結婚件数が多少増えただけでは、少子化の流れをすぐに反転させることは難しいでしょう。
必要なのは「早く結婚しろ」ではない
もちろん、川口さんと板倉選手の結婚や妊娠を、少子化対策の成功例として利用するべきではありません。結婚するかどうか、子どもを持つかどうかは、あくまで個人の選択です。
必要なのは、若者に「早く結婚しろ」「子どもを産め」と呼びかけることではありません。結婚や出産を希望する人が、仕事、所得、住居、子育てへの不安によって断念したり、先送りしたりしなくてもよい環境を整えることです。
若い時期の所得を増やし、長時間労働を減らし、出産後も男女ともにキャリアを継続できるようにする必要があります。子育て世帯の社会保険料や教育費、住宅費の負担を軽くすることも重要です。
少子化対策とは、単に出産後に給付金を配ることではありません。若い世代が家族を持つ将来を描ける経済と雇用をつくることです。
川口さんと板倉選手の発表は、何よりも祝福されるべき個人的な慶事です。同時に、31歳と29歳での結婚が「平均的」となった日本社会の現在地も示しています。
2人のように笑顔の絶えない家庭を築きたいと願う若者は、決して少なくありません。その願いを一部の成功者だけが実現できるものにしないことこそ、本当の少子化対策ではないでしょうか。







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