【京大病院】「腫瘍ではない」と確認も脳手術を続行し患者が重篤な状態に

京都大学医学部附属病院で、脳腫瘍の手術を受けた50代女性が重篤な状態となる重大な医療ミスが起きました。

京都大学医学部附属病院 Wikipediaより

100件以上の経験を持つベテラン医師

女性は小脳橋角部にできた髄膜腫の摘出手術を受けました。執刀したのは40代の脳神経外科医で、同種の手術を100件以上経験した医師だったといいます。

問題は手術中の判断です。医師が腫瘍と思われる組織を採取して迅速病理診断を行ったところ、1回目の検査で「腫瘍は明らかではない」との結果が出ました。

「腫瘍ではない」という検査結果を無視

ところが医師は、自身の経験や肉眼で見た印象から、「腫瘍の端の組織を採取したためだろう」と判断し、摘出を続けました。

さらに2回目の迅速病理診断でも、同様に「腫瘍は明らかではない」との結果が出ました。それでも手術は中止されず、医師は腫瘍を取り切ったと判断。約10時間に及ぶ手術を終えました。

しかし、結果はまったく逆でした。

腫瘍は残り、脳幹を大きく損傷

手術後も女性の意識と自発呼吸は回復しませんでした。MRI検査の結果、摘出すべき腫瘍は残っていた一方、右小脳扁桃や、呼吸中枢がある脳幹の側面から背側にかけて、大きな損傷が確認されました。

つまり、手術によって取り除くべきだった腫瘍は残り、正常な脳組織、とりわけ生命維持に重要な脳幹が損傷したことになります。

問題は「経験」を検査結果より優先したこと

今回の問題は、単純な「見間違い」ではありません。手術中に行われた病理検査が2度にわたって腫瘍を否定する結果を示していたにもかかわらず、執刀医が自らの経験や肉眼所見を優先し、手術を継続したことが重大なポイントです。

もちろん、迅速病理診断にも限界があり、その結果だけで手術の中止を決められるとは限りません。しかし、想定と異なる検査結果が繰り返し出たのであれば、別の部位から再検査する、画像を再確認する、別の医師に判断を求めるなど、いったん立ち止まる対応が必要ではなかったのかという疑問が残ります。

「ベテランだから大丈夫」ではない

高度な医療では、経験は大きな力になります。しかし同時に、経験があるからこそ、自分の判断を過信してしまう危険性もあります。

今回の事故では、なぜ2度の病理診断が手術方針の変更につながらなかったのか。手術中に別の医師が判断を止める仕組みは機能していたのか。そして、なぜ正常な脳組織を大きく損傷するまで手術が続けられたのか。

京都大病院には、単に「医療ミスがあった」と説明するだけではなく、こうした判断の過程を徹底的に検証することが求められます。

患者は現在も人工呼吸器による管理が必要な重篤な状態です。取り返しのつかない結果を招いた今回の事故について、病院には事実関係を明らかにするとともに、同じ悲劇を二度と繰り返さないための具体的な再発防止策を示す責任があります。

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