60代、仕事しながら乗り切れるのか?:雇用延長に潜む落とし穴

日本は人口減に伴い、労働人口が減少していることもあり、人材不足が顕著であるとされます。またベテラン層の技術を若手に習得してもらうためにその引継ぎ期間を延ばす企業も多いと理解しています。

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平均余命が伸び、かつての60歳代と今の60歳代では健康具合が大きく改善し、はつらつとされている方が多い中、60代前半でリタイアすれば先が長く、家計の負担が多くなる人もいるでしょう。更に晩婚が増え、子供が遅くできた方にとっては60歳代になってもまだ子供が自立しないご家庭もあるかと思います。つまり60歳代はのんびりリタイア人生を考えている暇はないのです。

その中で生まれた「雇用延長による人生活躍の時代の長期化」のシナリオは改善策として優れていますが、私には絵に描いたような餅になりやしないかと危惧もあります。今は日本は概ね景気が良いので不況の時の苦しみをすっかり忘れているかと思いますが、アメリカやカナダでは弱肉強食経済の上に移民など外国人の流入を阻止する政治的判断が数年前から強化されてしまい、経済の流動性が極めて悪くなっています。

例えば人口流入がない⇒語学学校が倒産し、住宅需要も止まる⇒局所的な不況産業が発生⇒それらの余剰人材の受け皿がない⇒失業 となるのですが、それらの業界に従事する若い人ならまだやり直しが効くものの一定年齢の失業はやり直しすら厳しい状況にあるのです。

多くのベテランには強い自負があります。「俺は〇〇を支えてきたぞ」と。しかしそれは過去の栄光であり、一人でやったわけでもありません。労働市場の需要と供給、更に労働価値観の変化を踏まえて自分の評価を客観的に見定められない人は多いものです。ましてや50代後半から60代になろうする人が会社の早期退職制度を経て第二の人生を歩むとなればコネでもない限り雇ってくれる会社は少ないのが実情だと思います。故に自分の力量に期待してコンサル会社を立ち上げるもすぐに破綻してしまうのもまたコンサル業なのであります。

なぜ雇用側はベテランを敬遠するのか、といえば会社が採用基準で判断するのは個々人が持つ能力だけではないのです。日本の会社には社内の法律と組織があるのです。社内の法律は言うまでもなく、その会社独自で作られたルールや道徳観です。ある会社では肩書はつけずに「さん付け」が慣習化しているところもあるし、ある会社では下の名前(太郎さんとか良子さんなど)で呼び合うことを強制しているところもあります。

組織とはとりもなおさず会社の人のことですが、その人間関係をゼロから構築し、組織に溶け込むには1年では済まないこともあります。警察や役所が2-3年で人事異動を繰り返し、30年も勤務すれば〇〇課の〇〇サンは10年前にあの仕事で一緒だったよな、という人的結びつきを経て業務がスムーズに成り立つ場合もあります。これが50歳代後半で入社すると「あなた、これからこの会社で何年働くの?」という話になるのです。だから若い人が有利なのです。

「65歳定年」とか「70歳まで雇用延長あり」は同じ組織に残った場合であり、他社に動くことが前提ではありません。具体的な話は書けませんが、私はある方(私と同じ年)の再就職の面倒を頼まれ、決まるまで3年近く要しました。最後は私のコネとその方の能力で70歳までの5年間の雇用を確保しましたが、とてもじゃないけれど高齢になった人が今までと同等の条件での再就職はそれぐらい厳しいのです。

そこにやってきたのがAIの時代です。ベテランの知見はAIに置き換えられる、これが急速に広まってきます。「能力には形式知と暗黙知がある」と言ったのは野中郁次郎先生でSECIモデルが有名ですね。この暗黙知、つまり個人の経験や勘によるノウハウがベテラン社員は多く持ち、それを若手に伝承したいのが会社の意向です。ところがその暗黙知さえ今後はAIで代替できる可能性があり、ベテラン社員をどうしても雇用し続ける理由が希薄になってくるとみています。

とすると今日のタイトルの「60代、仕事をしながら乗り切れるか」と言うのは迫りくるリスクとも言えないでしょうか?そのためには私は3つ提言します。

① 第2、第3の使えるスキルを身につけよ
② いくら高額の退職上乗せ金を見せられてもFIREする以外は早期退職は不利
③ 若い時から蓄財せよ。そして60歳でお役御免になっても自活できるだけの備えを持とう

であります。お勤めの方は年金は払っていると思いますが、自営の人には年金すら払っていない人が結構います。その人たちは70歳からの生活設計がゼロだと思ってよいでしょう。こればかりはその時に後悔しても遅いのです。備えは早めに、それが私のメッセージです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年8月11日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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