食べるほど痩せるに耳を閉じた私が、最後まで読んだ理由

「食べるほど痩せる弁当箱があります」

はい解散。詐欺だ。私はそう思った。

というか今でも半分思っている。健康法の話に「魔法」の匂いがした瞬間、私の耳は自動で閉じる。長年この仕事をしていると、そういう防御反応が育つのだ。酵素、腸活、断食、糖質ゼロ。何度見送ったかわからない。

なのに今回は、途中で耳が閉じなかった。

理由は一つ。この方法を考えた人が、自分のことを「ただの小太り主婦」と書いていたからである。

魔法の比率は3:2:1 お弁当箱ダイエット』(齋藤好美著/工藤孝文監修)あさ出版

「太っているのに栄養失調」

著者は延べ1000名以上に食事法を教えている人だが、かつては今の標準体重より15キロ重かった。目の前にパンや饅頭があると平らげてしまう。気づけばウエストがきつい。あるあるだ。あるあるすぎて笑えない。

で、あわてて始めたのが極端な食事制限。体調を崩す。そこで医者に言われた言葉が、これである。

「太っているのに栄養失調」

——ちょっと待ってほしい。この一言、破壊力がありすぎないか。太っているのに、足りていない。矛盾しているようで、まったく矛盾していない。

考えてみれば当たり前の話なのだ。食事の量を半分にすれば、カロリーは半分になる。同時に、たんぱく質もビタミンもミネラルも半分になる。小学生でもわかる。

なのに我々は、なぜかカロリーだけを見る。数字が減れば勝った気になる。体重計が0.4キロ減っただけでその日の機嫌が決まる。バカバカしい。いや、私も昔やっていたので偉そうなことは言えないのだが。

体のほうはもっと現実的で、入ってくるものが減れば「あ、飢饉ですね」と判断して省エネモードに入る。代謝が落ちる。痩せなくなる。減量は止まったのに、生活の質だけがきれいに下がっていく。

勉強するほど、何を食べていいかわからなくなる

正直に告白すると、私は栄養や食事についてそれなりに勉強してきたつもりだった。

そして、勉強すればするほど、何を食べていいかわからなくなった。

これは私だけの話ではないと思う。GI値、PFCバランス、腸内細菌、糖化、抗酸化。それぞれに一理あるどころか、それぞれに膨大な研究がある。ある本が推奨する食材を、別の本が名指しで否定している。真面目に全部読んだ人間から順に、動けなくなっていく。

その点、この本の解は身も蓋もない。詰めるだけ。比率だけ。はかりも使わないしカロリーも数えない。基準は箱の面積である。

そして食物繊維が「3」ということは、食事全体のおよそ半分を野菜やきのこ、海藻で埋めるということだ。ここは正直、こたえた。かなりの量である。自分の普段の食事を思い返して、全然足りていないな、と素直に思った。この一点に気づけただけでも、読んだ価値はあった。

さて、騙されたと思って、とは言わない。私だってまだ半分疑っている。ただ、あの一言だけは忘れないほうがいい。太っているのに、栄養失調。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

日本初のClaude実用書です。発売即重版しました。

3時間で身につくClaude活用術』(WAVE出版

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント