財務省が8月10日に発表した6月の国際収支によると、日本の経常収支は923億円の赤字となった。経常赤字は17カ月ぶりである。

読売新聞
今回の数字から見えてくるのは、単なる原油高や円安だけではない。日本企業の株主が外国人になればなるほど、日本企業が生み出した利益も海外へ配分される。そんな日本株高のもう一つの側面である。
日本の株式市場はグローバル経済の植民地
経常収支を大きく下げたのが、第一次所得収支である。これには日本企業や投資家が海外から受け取る利子や配当と、外国人投資家に支払う利子や配当などが計上される。6月は3801億円の黒字を維持したものの、黒字額は前年同月から1兆円以上縮小した。
背景には、外国人投資家に対する配当などの支払い増加がある。近年、日本企業は株主還元を急速に強めている。東京証券取引所から資本効率改善を求められ、企業は増配や自社株買いを積極化してきた。
同時に、日本株市場で大きな存在感を持っているのが外国人株主である。東証の売買高の7割は外国人であり、時価総額の3割が外国人である。資本市場では、日本はグローバル経済の植民地ともいえるのだ。
円安と原油高でもお金が海外へ
今回の経常赤字には、もう一つの海外への資金流出がある。貿易収支は1352億円の赤字となった。輸出も増えているが、それ以上に輸入額が膨らんだ。原油価格の上昇に円安が重なり、エネルギー輸入に支払う金額が増えているからだ。
つまり現在の日本は、一方では外国人株主に配当を支払い、他方では産油国へエネルギー代金を支払っている。円安だから輸出企業が儲かる、株高だから日本が豊かになる、というほど話は単純ではない。
貿易赤字国の日本は「円安ホクホク」ではない。
もっとも日本から一方的にお金が流出しているわけではない。2026年上半期の経常収支は17兆4292億円の黒字で、上半期として過去最大となった。最大の稼ぎ頭は第一次所得収支である。
日本企業は長年にわたり海外企業を買収し、工場を建て、株式や債券などの資産を積み上げてきた。そこから日本へ流れ込む利子や配当は巨額である。日本はもはや、自動車や家電を輸出して貿易黒字を稼ぐだけの国ではない。海外に保有する資産から配当や利子を受け取る投資国家になっている。
貿易収支だけを見て「円安ホクホク」などというのは40年前の議論であり、経常収支が赤字になった日本では、円安は必ずしも歓迎すべきことではない。それはインフレをまねくだけでなく、日本から富が流出して交易損失を増やす。外国人株主は豊かになるが、日本人の労働者は貧しくなるのだ。







コメント
冒頭に掲げられた図は面白いですね。
これ、1月と6月と12月が全て低くなっております。このようなときは、その裏に、何らかのメカニズムが作用していると考えなくてはいけません。名探偵が良く言うでしょ、「俺は偶然の一致というやつが嫌いなんだ」と。
6月と12月というのは、日本企業の多くが採用している、3月末決算の配当支払い月にあたるのですね。3月決算の場合、6月から7月初頭にかけて期末配当が支払われ、12月から1月にかけて中間配当が支払われます。これは見事に、経常収支が落ち込む月に相当しております。
一方の海外企業はカレンダーに合わせた12月末決算が多く、この場合三月後といたしますと、3月、9月が配当支払い月に相当するわけですね。経常収支のグラフを見ますと、確かに3月と9月が高くなっている。実はその前月の2月と8月も高いのですが、海外企業の決算から配当までの期間が短いということも考えられるのですね。
そう致しますと、経常収支のプラスマイナスを議論するときには、単月の数字をうんぬんしても、月ごとの周期変動の影響が無視できないことになってしまいます。こういう場合は、6か月の移動平均または年間値で議論するのが妥当なのですね。
で、財務省での発表している年間値(下記URL)を見ますと、2025年までは順調に上昇しております。2026年も、提示されております月別データを1-6月まで均しますと、前年に比べてさほど低くはないように読み取れます。
というわけで、この議論は前提に誤りがあるように思われます。
参考:経常収支とその内訳(財務省):https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2025cy.htm