自民党に「反・減税ポピュリズム」グループができる?

自民党内で、高市早苗首相が決めた食料品の消費税減税に反対する動きが目立ってきた。日本経済新聞は12日、これを「反・減税ポピュリズム」と呼び、森山裕前幹事長や河野太郎元デジタル相らの動きが、2027年秋の自民党総裁選に向けて高市首相への対抗軸になる可能性があると報じた。

もちろん「反・減税ポピュリズム」という名前の議員連盟が結成されたわけではない。しかし、高市政権の経済政策をめぐって、自民党の中にかなりはっきりした亀裂が生まれ始めたことは確かである。

森山・河野・小渕氏が相次いで反対

高市政権は8月、食料品にかかる消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%へ引き下げる方針を閣議決定した。さらに中低所得者には1%相当分を給付し、「実質ゼロ」とする。2029年度からは所得に連動した給付制度へ移行し、食料品の税率を8%へ戻す方針である。

これに自民党内から異論が噴き出している。森山裕前幹事長は7日、鹿児島市での党会合で、代替財源の議論が始まっていないと批判した。日経によれば、こうした反対論が「反減税ポピュリズム」として高市首相への対抗軸になるとの見方も出ている。

河野太郎氏も7月30日に「消費税の軽減税率を下げることには反対」と明言した。物価高対策なら、限られた財源を低所得者などに集中できる給付の方がよいという立場だ。

小渕優子元経産相はさらに踏み込んだ。食料品減税への反対を理由に、自民党税制調査会の「インナー」と呼ばれる幹部ポストから退く意向を示し、その後も党内会議で反対を表明した。

石破茂前首相も、安定財源が見つかっていないことを問題視している。8月3日の党内会議では、食料品1%案に賛成65人、反対9人、中立1人となったが、反対派は消滅していない。こうして見ると、高市政権に対する「財政規律派」の輪郭が見え始めている。

日本経済新聞

食料品減税はたしかにポピュリズム的だ

彼らの批判には一理ある。そもそも食料品だけ消費税率を下げる政策は、経済政策として筋がよくない。低所得者を助けることが目的なら、高所得者にも同じ割合で恩恵を与える食料品減税より、所得に応じた給付の方が効率的である。

さらに税率を8%から1%にして2年後に8%へ戻すとなれば、事業者はそのたびにレジや会計システムを変更しなければならない。実際、自民党内でも事業者負担や、2年後の税率引き上げが「実質的な増税」に見えることへの懸念が出ていた。

しかも食料品減税は、自民党が2月の衆院選で掲げた「飲食料品消費税ゼロ」という公約に端を発している。物価高の中で「税金を下げます」と言えば、選挙では受けがいい。したがって「減税ポピュリズム」という批判それ自体は、それほど的外れではない。問題はその次である。

「消費税を守る」だけではもっと人気が出ない

反対派が本当に高市首相への対抗軸になるためには、「減税反対」で終わるわけにはいかない。森山氏は幹事長だった2025年にも、消費減税について「ポピュリズムの政治をしては国がもたない」と批判していた。参院選を前に「消費税を守り抜く」とまで語っている。

主張としては一貫しているが、政治的には極めてむずかしい。国民から見れば、物価が上がり、社会保険料も上がり、実質賃金が伸び悩む中で、「減税は無責任だから税金は維持します」と言われても、それだけでは支持する理由がないからだ。

高市政権の食料品減税を批判するなら、反対派は代わりに何をするのかを示さなければならない。河野氏が「給付の方がよい」と主張しているのは、その意味では一歩進んでいるが、給付も政府がお金を集めて配る政策であり、恒久的な解決策ではない。

日本で現役世代の負担を重くしているのは、消費税だけではない。所得税、住民税に加えて、医療・年金・介護の社会保険料が重くのしかかっている。

本当に「反ポピュリズム」を掲げるのであれば、高齢者医療の自己負担、年金、介護、医療給付まで踏み込み、社会保障の歳出を削減して現役世代の社会保険料を下げるべきだ。そこまで言って初めて、「減税の財源はどうするのか」という問いにも答えられる。

「ポスト高市」の焦点になるか

興味深いのは、今回の対立が従来の自民党の派閥対立とは少し違うことである。一方には、高市首相と「責任ある積極財政を推進する議員連盟」がいる。同議連は積極的な財政支出や消費税減税を求め、高市政権を政策面で支えている。

実際、8月3日の党内会議を前に、同議連側から食料品減税への賛成発言を促す文書が配られていたと報じられている。他方には、森山、河野、小渕、石破氏らの慎重派がいる。

つまり、「積極財政+減税の高市派」「財政規律+反ポピュリズムの慎重派」という政策対立になりつつある。これは自民党にとって健全なことかもしれない。

今のところ反・減税グループが政治集団として動いているわけではないが、高市内閣の支持率が落ちている中で、これは来年の総裁選挙をめぐって「ポスト高市」をにらんだ動きでもある。

河野氏は総裁選挙に出馬したこともあり、このグループに近い林芳正氏も、高市氏の対抗馬として有力だ。この動きが今後の政局の焦点になるかもしれない。

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